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ショートショート集ですの。[東京多摩]

言葉がわかるなら

作者: 東京多摩

 ある日突然、宇宙からそれはそれは大きな円盤が地球のある草原に降りてきた。

 世界中の人々は驚愕し、ある者はエイリアンとの戦だと弾薬を買い込み、ある者は異文化交流だと歌を作り、またある者はただ成り行きを見つめるだけだった。

 円盤が草原に降り立って3日、それまで沈黙を保っていた円盤だったが、その日の昼の十二時に円盤の下部音をギリギリと立てて開き、中から緑色の歯祖長い手足を持つ宇宙人が現れた。

 その手には、筒状に丸めてあり蜜蝋で閉じられた封書が握られていた。

 出てきた宇宙人は3歩ゆっくりと歩くと、肩を一度回し振りかぶって封書をはるか遠くの空へ向かってへ投げた。

 そして、何事も無かったかのようにまた円盤の中に吸い込まれていった。

 円盤の周りにいた多くの報道者、およびその映像を見ていた多くの視聴者は、ただ茫然と起きたことを見ているだけだった。


 

 

 2日後、その封書を手にしたのはまだ幼い女の子だった。

 ベランダの隅に落ちていたのをたまたまの拾ったのであった。

 先日の騒ぎを露とも知らず、ただそこに有ったおかしなものを拾っただけだった。

 閉じられていた蝋を道具箱の鋏で切り落とし中を広げると、そこには恐ろしく下手な字で

「あなたの願い叶えます」

 とだけ書いてあった。

 女の子は少しだけ悩み、ふと最近読んだ絵本の事が頭に浮かんだ。

 その絵本では人と動物が仲良くおしゃべりをし、仲良く遊び、お互いを褒めあっていた。

 女の子の願いは決まった。

 開かれた封書を手に取り、深呼吸をして空に向かって大きな声で叫んだ。


「人間と動物がお話しできるようにしてください!」


 少女の声は、はるかはるか遠くまで、世界中に響き渡った。

 


 

 女の子の願いが叶った次の日、地球から飛び立った円盤の中で、緑の宇宙人たちは大いに満足していていた。

 彼らは、訪れた星で最初に封書を手に取った住人の願いを叶えることで幸福感を得ていたのだった。

 そう、それが例え、動物の声が聞こえるようになった為、多くの人間が肉を食えなくなったとしても、だ。

 彼らの円盤からは、地球はもうとうに見えな無くなっていた。

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