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01 その彼女。ヤンデレほいほいなり。

*プロローグの前の話。

(00にて瞳の色を変更してあります。1/7)

流血シーン注意。

 北条 莉愛(ほうじょう りあ)の周りには幼い頃から変質者がいた。


 見知らぬ大学生にファーストキスを奪われそうになったり、公園にいるとお金をあげるから裸を撮らせろと言われたり、竹やぶに連れていかれて下半身を見せられたり。


 兄からは、「変態ホイホイ」だ!と不名誉なニの名を頂く。

 兄といっても血のつながった兄妹でもなく、同じ施設に育った5つ上の優男だ。お互いに恋愛感情は1ミクロンもない。



 そして、現在。

 高校生になったばかりの莉愛はピンチだった。


 目の前に立つのは、ブロンドの髪がきらめき、ブラウンの瞳をした20代後半と思われる美丈夫。

 ハーフだろうか。それとも、どこかの国の人だろうか。カラコンなのか。髪を染めているのだろうか。そんな事は些細なことだった。世間ではイケメンと思われる男性が、和かな笑顔で 莉愛を見つめている。


 因みに、初対面である。




 (誰?………)




 事の発端は、彼女が下校中に起こった。

 家の近くまで歩いていると、うずくまっている人が居た。

 顔が青ざめて、苦しそうだったので声をかけたようとした瞬間、スプレーのようなものを吹き付けられて、目が覚めたら身体を高級そう椅子に縛られ、今の状態である。


「ふふふぅ〜 莉愛さん。おかえりなさい。やっと私たちの愛の巣に帰って来てくれたね」


 何度もいうが、初対面である。


(ああ… まただ)



 そう、彼女は「変態ホイホイ」でもあり、「ヤンデレ(サイコ)ホイホイ」でもあった。


 まだ薬でハッキリと動かない頭でも、今の状態はピンチなのはわかる。

 とりあえず、状況を把握するために、周りを見渡す。ホテル?の一室だろうか。生活感のない部屋だが、置いている家具は高級そうだ。


 ふと、視線を感じた。


 振り返って見ると そこには‥……



 沢山の“莉愛”が居た。



 大小様々だが、ビスクドールの様なものと等身大のマネキンのようなもの。

 色々な格好をした 莉愛そっくりの人形たち。

 それが、少なくとも20体は鎮座していた。


(気持ち悪い)


「ふふふふふ。気に入ってくれた? でも、安心して? 彼女たちは、莉愛さんが帰ってくるまでの代わりなんだから」


 マネキンの髪をさらりと撫でながら言うイケメンという名の変態。


「あのー、なんて呼べばいいですか?」


 ここで間違っても、「誰ですか! 帰してください!!この変態!!」なんて叫んだら 変態が逆上してエキサイティングでバイオレンスモードに発展するので落ち着いて対処すべてきである。


「私の事は、ダーリンでいいよ? 私も莉愛さんの事、ハニーって呼ぶね!」


(ちっ、個人情報を出さない手か。 うまく隙をついて、逃げるか通報してやろうと思ったのに)


「ハニー。嗚呼、なんて綺麗な髪なんだろう。 この髪を再現しようしたけど、やはり本物には敵わないね。肌も、こんなにきめ細やかで弾力があってスベスベで、シミどころかホクロさえもなくハニーは芸術だよ……なのに」


 髪に、頬に、顎にきた手が グイッと左手を ひっぱり、手首についていたリストバンドを剥ぎ取った。


 そこには、金と紫の二匹の蛇が絡み合って左手首を一周している 少女には不釣合いの禍々しい痣が浮かんでいた。



 整った顔が歪みながら、莉愛の手首の痣を指で擦り付け、手首は真っ赤になる。


「い、痛い」


 莉愛のこの左手首の痣は、生まれた時からあった。もちろんタトゥーでもない。

 莉愛自身、そんなに気にしていなかったが、 親しい人には心配され、周りは好機の目でみてくるので説明も徐々に面倒になり 普段はリストバンドで隠していたのだ。

 ちなみに、兄からは「わかった、変態好む匂いを発している元凶だ!じっちゃんの名にかけて!真実はいつもひとつ!!」と色々混ざった厨二病らしいことを言ったので、無視をしておいた。



「嗚呼、ハニーごめんなさい。完璧な君なのに、どうしてこんな禍々しいものがあるのか。私の趣味じゃないのです。蛇は、ダメだ。あのウネウネとして、あんなもの美しくない。ハニーだって嫌だよね? でも、手術しても完璧にとれないかもしれないし、傷が残るかもしれない。だから思いついたんだ!」


「はい?」


「この痣から向こうの手首を切り落とすといいんだよ。付け替え用の新しい手首は、私がとても美しいのを作ってあげる。今から楽しみでしょ?」


 何を言っているんだ。このヤンデレは。


 とても良い事をしています。 という様な顔をしている目の前のヤンデレ。彼の後ろには、ナイフと…後ろに斧っぽいのとか 接着剤みたいなのがある。


(うーーーわーーーー。 手首切られたら出血多量で死んじゃうんじゃない? このヤンデレ、私の事人形かなんかと思ってない? 接着剤ではつかないよーー。接着剤をつけて5秒後にはブランコできるCMなんてあったけど、手首を切って、5秒後に新しいのを装着でバーベルとか持てないよ?)


「まずは、小型ナイフで手首まわりに切り込みをいれましょう」


(わー 何、キラキラとナイフをこっちに向けているの?)


「ちょ、ちょっと!! ダーリン! やめて! やめて!!」

「ふふふ、ハニー遠慮しなくてもいいですよ? さっさと済ませてしまいましょう」

「さっさと私の人生が終わっちゃう!!」

「大丈夫ですよ。これから、私との輝かしい新しい人生が待っていますから」


(わーーーー もう、人の話きいてねーーーー。だから、ヤンデレは嫌いなんだよーー。自己完結しやがってーーー!!!)


 逃げ出そうと、ガタガタ揺らす身体を押さえつけられた、右手も足も拘束され左手はテーブルの上に固定された。


 ここで、ヒーローが(この際、兄でもいい)扉から登場!


 …………っという事もなく。


(あのくそ兄貴!! 少しは役に立て!)


 無情にも近づいてくるナイフにギュッと目をつぶる。

 現実はシビアで、 ザクっとナイフが刺さった。




(い、痛っ)





 手首に 痺れと



 …白い光?!




 部屋全体が白い光に覆われる。



「う、うわあああああーーーー!!!!」


 ガタガタガタッツ



(え?)



 目をあけると、ナイフを持ったヤンデレはひっくり返っていた。

 手首をみると、血がどくどくと流れている。


(うわ、結構深く切っている)


 血を止めたいが、手足の自由がきかない。

 すると、目の前に金色の蛇と紫色の蛇がいた。


 !!!


 目が合った瞬間、目の中に蛇が飛び込んできた。


 右目に金の蛇

 左目に紫の蛇



 激しい頭痛、吐気、身体の中に蛇がうごめいているようで


(ああ、取り出したい)



 ………







 …思い出した。

 思い出してしまった。




 気を失いそうになるが、左手首の痛みでかろうじて保つ。



 頭に真っ先に浮かんだのは



(…ヤバイ)


(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!)


 こんな事をしている場合じゃないと、拘束されている縄を必死に解こうとしていると目の前に人影が現れた。



「ヒーローは遅れて登場! ババンバン!!」


 目の前に現れたのは、“兄”。


「遅い!! くそ馬鹿者!」

「いやん。こんな乱暴な言葉遣いする莉愛ちゃんなんて、お兄ちゃんショックだよ! 意地悪言うと、助けてあげないんだからね?」

「……ちっ………………た…すけてください」


 兄は、莉愛の拘束を「勿体ない。“美少女と縄”なんて組み合わせ、男のロマンすぎる!!」と言いながら、フッと息を吐いて、拘束されていた縄を解く。左手をハンカチで止血した後に、リストバンドで固定した。


「封印。解かれちゃったね」

「あーーー!! もう!!」


 気を失っているヤンデレを、一瞥した後に 蹴りを入れて拘束する。


「あんたのせいで!!!!! ああ、もう! こんなところにいる場合じゃない。えっと、何分たった? 時間系列は…多分、向こうの2倍だから、後、1時間はいけるかな」



 辺りを見渡して、自分そっくりのビスクドールを手に取る。



「慰謝料に もらっとくから」



 パチンと 指を鳴らすとそこから二人の姿は消えていた。






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