第4話
ここに来て1週間が過ぎた。
その間拠点を変えることなく、鍛練に重きを置いていた。
ガッガッガッ
木に斧を振り当てる。
周りには同じような木が生い茂っているが、敵の姿は見なかった。
毎日最低一本の木を切り倒すことをノルマにしていた。
そのおかげで斧スキルもLv.10と少しずつ上がってきている。
スキルレベルが上がるにつれ、段々と疲労が少なくなってきた感じがする。
初めて木を伐った時は一本伐るのに、休憩を何度も挟み半日ぐらいかけてようやくといったところだった。
しかし、今はずっと続けても疲労感はあるが休憩するほどでもなくなった。
ドン!
そんな音と共に木が倒れる。
俺はその木をアイテムに入れ次の木に移る。
また斧を頭上にまであげ野球のスイングのように降り下ろす。
また頭上まで戻して降り下ろす。
それを木が倒れるまで繰り返していく。
無心にではなく、木の芯に当てるように、体重を乗せるように、早く振るようになど度々変えながら一番いい振りを探していく。
ガッガッガッ
と斧の刃が木を削る音が森に響いていく。
一時間ほど続けると……
ドン
木が倒れる。
またアイテムに仕舞う。
うん、今日はこのぐらいでいいか。
俺はそう思い拠点としている岩場への道を帰っていった。
◇
拠点に帰った俺は木を斧で割り、薪を作る。
これも結構な重労働だが、慣れは偉大だな!
木を伐り倒すよりは簡単だが、それでも疲れることに変わりはない。
薪割りが終わった。
次は鍛練に入ろう。
まずゆっくりと柔軟し体を柔らかく怪我をしない体を作っていく。
ぐ~、と筋肉を伸ばしながらゆっくりやっていく。
そのあと拠点の回りを適度に走り、本格的な鍛練に入っていく。
二日前に成人男性ぐらいの大きさの藁人形を作った。
この頃は、その藁人形を使って鍛練している。
藁はその辺りの長く延びた草を鎌を使い、切り、干したものだ。
その藁人形を相手に剣や槍、刀等を振り込んでいく。
一撃を鋭く、速くを意識して素早く打ち込んでいく。
たまにフェイントやステップを混ぜ、ただ相手に傷を与えられるよう、斬撃、突き、打突を叩き込んでいく。
そんなことをしていると、藁人形には耐えられなくて、破壊してしまう。
藁人形が壊れたら素振りをゆっくりとし、ブレがないか確認したり、筋トレに励むようにしている。
始めは筋肉痛が酷く歩くのも大変だったが、今はそこまでではなく普通に動けるぐらいまでは回復していた。
◆
「レインズ様。この度【神代の森】に異常現象があったとは本当のことでしょうか」
金髪を長く伸ばし、首裏で纏めた女性が机に座る男に声を掛けた。
一目見て女性と間違えそうになる外見をした男は、くいと眼鏡を上げ軽く頷く。
「えぇ、一週間ほど前に彼の森がある方向で観測しました。
空から光が差し、森の中に降りていったそうです。真に信じられませんが、あの森を調べなければなりません……」
困った顔をする男を見て、女も同意する。
「そうですね。あの森は推定Sランクの秘境ですからね。この国の騎士団にも入れるものはいません。いるとしたら冒険者ギルドぐらいですが、Sランク以上と成りますと変わり者が多いですからね……」
「そうですが、冒険者に頼る他ありません。では、ギルドの方には私から要請を出しておきます」
「よろしくお願いします。失礼しました」
そう言って女性は男の部屋から出ていった。
女性が部屋から出ていったのを確認して男は頭を抱えた。
これからの自分の苦労を推測して……。
◆
「ふぁああ~!」
う~ん、と背伸びをして体を起こしたあたしは昨日の事を思い出していた。
ギルドの帰りに長から
「あぁ、そういやSランク以上の冒険者宛に国から依頼があったぞ。なんでもあの『死の森』に調査に入って欲しいそうだ」
あたしはそれを聞いて即答した。
「ぜっっっっったい、嫌だからね!!」
『死の森』、正式には【神代の森】と呼ばれる、神様がいた時代からあると云われる森がある。
あの森は入って来たものを拒まないけど、入ってきたら最後出られるものなどいないと言われてる。
昔は力試しや森の奥にあると云われる遺跡に宝を探しに行く者たちがいたが、この森に入り、消息不明になったものは数知れず。
とうとう一人も帰っては来なかった。
そんなこともあり、【神代の森】は『死の森』と呼ばれるようになった。
そんなあたしの返事を聞き、
ガッハッハと豪快に笑い飛ばす長。
「やっぱそう言うか。まぁ、お前が行く必要もないんだがな……。んじゃ、他の奴に回しとくわ」
そう言ってまた笑う長。
あたしはまだあの森に入ることは出来ない。
自分の力は自分自身が一番理解してる。
あたしはまだまだ未熟だ。
もっともっと腕を磨かなければ。
この時のあたしは、後に唯一の生還者(?)が現れる事など知らなかった。
◇
次の日。
俺はいつも通りに飯を食べ、斧を手に森へと入っていった。
それは、さぁ斧を振ろうと腕を上げた時だった。
スキル《気配察知》の警報が脳内に響き渡る。
場所は俺の来た方とは逆から。
数は1つだけだった。
俺は気配を押し殺し、敵が出てくるのを近くの茂みの中に隠れて待った。
すると敵は姿を現した。
そいつは一言で表すならアリクイと言えば分かるだろうか。
細い顔、ノロノロと歩く足と手には鋭利そうな爪がある。
口からは長く細い舌がチロチロと出たり入ったりを繰り返していた。
俺はそいつの後ろを取り、ゆっくりと近づく。
手に持つのは、斧ではなく槍。
剣や刀、斧なども試したのだが槍が一番手に馴染んだ。
次点では刀が使えてはいた。
射程範囲内に敵を納めると、鋭く突きを放つ。
狙いは頭。
シュッ
風切り音がし、敵の頭に刃先が吸い込まれていく。
もう少しで届くと思われたところで、敵は頭を横に傾け回避した。
内心焦りながら槍を戻しもう一度突きを放つ。
今度は体、敵がゆっくりと振り向いているが、気にせず突き刺す。
今度は当り、傷口から中の肉が見え、赤い血が滲む。
敵が舌を伸ばして来たので槍を素早く戻すとピチャと地面に血が飛んだ。
伸びてきた舌を槍に巻き取ってきた。
俺は慌てずに腰に携えていた短剣を鞘から抜き出し舌の左から右にサッと引いた。
ブシャ
さっきとは比べ物にならないくらいの赤が地面を染めるが躊躇しない。
そのまま腕を撥ね頭を串刺しにする。
『レベルが30に上がりました。』
どうやら倒したようだ。
そのあとは何時も通りに解体し、アイテムに入れた。
アリクイは鋭利な爪ぐらいしか使えそうに無かったが、丸ごとアイテムに入れれたので入れてしまった。
川に行って血を洗い落としたけど、下流から敵上がって来ないよね?
少し不安になりつつも拠点に戻り、初日に倒した豹の肉を焼いて食べた。
調味料が無いので、味は殆どなかったが柔らかくて美味しかった。
投稿遅くなって申し訳ありません。
9月からも忙しくなりそうですが、月一更新はするつもりですので、これからもよろしくお願いします。