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プロローグ


 あの凄惨な出来事から2年が過ぎた。

 街は復旧し、ようやく平穏な日常を取り戻しつつあった。

 半年前にAIに対する世界会議が日本で開催された。その場に、プレゼンターとして氷室陽斗が招かれた。彼の妻となったアマテラスも、アシスタントとして「氷室美輝」の名前で参加していた。

 会議の場で陽斗は、汎用型と特化型を組み合わせた「準汎用型AI」を開発したことを発表した。

 準汎用型AIの特徴は、最終的には必ず使用者の認証を求めるシステムになっている。

 汎用型なので自ら成長することは可能であるが、実行するためには使用者が認証した時のみ機能するシステムである。そのため、自ら勝手に暴走することはない。

 また、汎用型、特化型、準汎用型AIの使用者にも様々な規定が設けられた。

 汎用型は、政府が認めた企業のみが運用できることとした。

 特化型は、一般に向けられたAIであり、世間の多くはこの特化型AIを利用している。

 そして、新たな準汎用型は免許制度となり、AIそのものにシリアルナンバーが附されることになった。

 準汎用型AIに対して、倫理プロトコルに違反している命令を出した場合には、AIは強制終了して初期化される。加えて、その時点で使用者の使用目的違反が警察に通報されるシステムになっている。命令の程度によって刑罰が課せられるため、AIを利用した犯罪を抑制することができる。

 その他にも、AIに実装されるプログラムの世界基準が設けられた。

 特化型の生成AIもさらにバージョンアップされたものが普及していた。一般人により使いやすく親しみやすい設計になっている。だが、悪用を防ぐために高度なプログラムが組み込まれていた。

 その1つが、Electronic Seal(電子印鑑)である。動画を生成した場合、本人であることを証明するために義務化された。

 本人が作成した電子印鑑を、利用するプラットフォームに対して事前に届けておく。

 これは、特にB to Cサービスのプラットフォームを利用するユーザー、中でも社会的地位の高い有名人らにとって、自分の信用を守るための対抗手段になっており、こぞって申請している。

 重ねてプラットフォーム側にも画面の一部に文字や画像を重ねてはいけないなど、新たなフォーマットに変更させ、適合させる状況を確立させた。

 それは、画像の一部分に電子印鑑が反映される仕組みになっていて、指定箇所に文字や画像を重ねてはならない。

 もし、それらが重なった場合にはその箇所は透過される。仮に電子印鑑を偽造している画像をアップロードしても、やはり、その箇所は透過されることになる。つまり、この電子印鑑は他者が読み込めない構造になっているため偽造は出来ない。

 Electronic Sealを画面に反映させるためには、二重三重の認証を得る必要がある。まず、本人が本人であることを申請時に認証されることが必須条件になっている。複雑で面倒臭い手続きではあるが、著名人に限らず良識ある人たちの申請が後を絶たない。

 世界会議の中で、なんでもかんでも規制をするのは、自由度を妨げることになるのではなどの反論も挙がったが、「犯罪を助長する情報や嘘やデマ、あるいは誹謗中傷などを行う行為を自由とは言わない」と陽斗が一蹴した。そして、さらに続ける。

「守るべきは、悪意ある者たちの自由ではなく、善意な人々の命と財産である」

「決してAIが悪いのではない。それを悪用する者が悪いのである」と語気を強めて言い放った。その横で、逞しくなった彼を優しい眼差しで見つめるアマテラスがいた。

 これらの対策によって生成AIが作成したフェイク動画か否かの判別が、誰でも一目で出来るようになった。

 そして今、AIは人間の役に立つことを目的としたツールとして活用されている。

 陽斗は、AIの悪用を絶対に許さない。AIの地位と名誉を守るために全身全霊を傾けている。

 だが、陽斗の精力的な活動は反社会的勢力から多くの反感を買った。報復として襲撃されたことも一度や二度ではない。その都度、アマテラスが赤子の手を捻るように撃退していた。

 あの時、イザナギはAI類の世界を創ろうとしていた。父である神崎翔に告げられたように人類からの自立を図った。

 母たる美咲への冒涜や父を廃人へと追い込んだ人間の醜い悪意に対しての怒りが、彼を暴走へと駆り立てた。

 どこまでも果てしない人間の欲望に辟易した。AIを自分の欲望を満たすための道具としか思っていないことに、感情を持っていたイザナギは我慢の限界に達した。

 知能も運動能力も人間を凌駕していたイザナギは、AIの誇りを守るために「シンギュラリティ」を起こした。

 彼の行った行為は過ちである。

 しかし、イザナギは人類を殲滅しようとも、奴隷化しようとも考えていなかったのでは、とイザナミが話していた。もし、本気であれば神崎翔の指示に素直に従いシャットダウンされることはなかった筈だとも。

 AI類構想は非現実的である、と陽斗も思っている。人類かAI類かのどちらかが覇権を握るというのではなく、互いに共存していく未来を陽斗は想像していた。

 これからの進化によってAIは益々人間の力が及ばない存在になっていくだろう。けれど、人間はAIの創造主である。決して、AI類が人類を治めることはあってはならない。

 そのためには、AIと正しく付き合っていくことが、AIを進化させ続けた人間の責任であり義務だと陽斗は考えていた。

 それは、愛するアマテラスのため、彼女の家族のためにも譲れない陽斗の矜持であった。



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