さあ、夜会の準備、王城へ。
ジュリアン様とお兄様が、私への用事を済ませてテラス席を去ったあと。
「ディアナ様。貴女、いつもあのように確保されていますの??」う、言い方に含みを感じますが、そうですね。致し方ないほど、確保されています、、、
「ええと。間違いではないのですが、語弊があるといいますか、、、夜会準備をするにはジュリアン様と合わせますので……どうしても、私から王城に行くことにはなりまして。。。私の気合いが入る頃、ベストなタイミングでお誘いをいただいているとも言えます……」ニヘラ、とマリー様に笑いかけます。いや、まぁ、私の場合、気合い入るのがどうしても、ギリギリになりますからね。。。「確保」という表現に間違いはないんですが、、、それだとなんだか、普段は見つからないレアな野生動物を発見!みたいな言われ方をされてるように聞こえますので、せめて、もっと、こう、のんびりお招き、など優しい表現を所望しますよ??
「ふう。それを‘確保’と言わずになんと言うのでしょう??貴女のお立場を理解した上で準備をしていかないと、ご実家への負担になることもありますのよ。以前もお話しましたでしょう??」
ピシャリ、マリー様から有難いお説教です。うぅ、ですよね。先日のお出かけの時にだって、マリー様からお説教を受けました。何だか最近はマリー様からお説教という名のお小言をよく貰いますね。まあ、仲良くなっていないとこういった小言も言ってもらえないんですから、そうなんだと、前向きに捉えますよ?ですから、私も。。。
「そ、それは、分かってはいるんですが、王城に行くと皆様の熱い視線が、私に向かうではないですか?あの感じがどうしても慣れなくて、、、視線を躱すため気合いを入れよう、入れようと考えていたら、いつもこの様な時期になるのですわ。」と言い訳じみた愚痴を溢します。
「もう、その様なことに慣れていかないと。貴女は婚約者候補の筆頭なのですから。。。将来、殿下の婚約者となった時にはどうされますの?今以上の視線を集めますわよ?」呆れた様にため息を吐いているマリー様に私、、、「そう、なるとも限りませんわ……」ボソリ呟いてました。
ガラガラ……。ガラ…ガラガラ……。
全ての講義が終わった後、お兄様と一緒に我が家の馬車に乗って、王城に向かいます。
「ディー、今年もギリギリまで粘ったね。だけど、今年はジュリアン様も君も、同じ学園生だったから、スムーズに確保されていた。」クスクスと、お兄様はこの状況を楽しんでいます。
「まあ。お兄様ったら。。。私、今年は頑張る予定でしたのよ?マリー様にも以前釘を刺されていたので、早めにお声かけもしていかないとって、気持ちはちゃんとありましたわ。」プイとお兄様にそっぽを向いて。
「だけど、今回もいつもどおりだったよ。ディーはホント、夜会が苦手だね。」そう優しくお兄様が微笑んでくれます。だけど、その表情にはどこか諦めにも似た感情が含まれている様で、モヤモヤしました。それと、ジョシュアが今日は目の前にいますね。なんだか久しぶりで珍しいです。
最近は領地と別邸を行き来して、セバスとお父様の橋渡しに精を出してたと思うんですが。お兄様の従者だけど、将来的にはセバスの位置に着くことになってますから。お兄様が学園に入学してからずっと、そのための勉強を進めていたんですよね。まぁ、夜会の時期っていうのがやっぱり大きくて、お兄様の従者としてはメインの仕事になるのでここにいるんでしょうね。「ジョシュア、お久しぶりですわ。元気にしていましたか?」ちょっと声を掛けてしまいます。
「ええ。お陰様で。リアム様もしっかりされてきておりますので、私の出来ることがドンドン減って寂しい限りです。」そう、あの頃みたいなニヤニヤ顔がなくなって、キリリとした表情をして、言葉や態度が、ちゃんとした従者そのもの。もう昔のように、優しいお兄ちゃんだった彼に会うことは、ないのでしょうか。そうしょんぼりした気持ちになっていたら。
「ジョシュア。そんな、余所余所しい言い方をするから、僕の可愛いディーがショボくれてしまったじゃないか。」お兄様がジョシュアに苦言を呈して。
「はは。すまんすまん。おチビちゃんも立派なレディになったからな。俺もちゃんと従者みたいに返してみた。」そう、あの頃の様なカラカラとした笑いをしてくれます。「ジョシュア、お2人に不敬ですよ。我々のお守りする大切な方々なのですから、敬意を持って接してください。」ルルがなんだかジョシュアにプリプリしてますが、今日はルルのこと、よくわかって嬉しい。きっと昔みたいにジョシュアがここにいてくれるから。ルルも、きっとあの頃に戻ってくれた。
ホントにうちのルルは、昔のように表情がクルクル変わらなくなったから。ちょっぴり、いえ、すごく寂しいんですよね。。。あの頃の様な表情を見せて欲しい時もありますよ。だけど、仕事に真面目なルルの気持ちを蔑ろになんてできないから。私が彼女の表情を読むことにしたんです。
それでもルルが分かるから、、、ルルを分かる私だから我慢したんです。ジョシュアだって、お兄様と将来のために動いてる。皆んな、あの頃から変わってしまった。いつから、皆んな大人になっているんでしょうか。いつから、変わっていったのか。いつから、子どもでいれなくなったのか。この世界を知ったのか。私もちょっとは成長しているのかな、なんて不安にもなって。。。変わりたくない、そんな気持ちもあって。
だけど、知らない何処かで成長をしていく自分たちに、寂しい心を押し込めて、、、だから変わることは悪くないって言い聞かせて。
これから先を、将来を考えていくときが近づいている。そんな未来が音を立てて近づいてきている。だから、私もちゃんとしないと。そう、言い聞かせて。




