さあ、楽しいお出かけが始まりました!!
さあさあ、やっと試験が終わった!!
待ちに待った、リリィちゃんとのお出かけですよ!私、このお出かけが楽しみすぎて、夜も眠れない程でした。ルルには「お嬢様、夜ふかししてもお身体に触るだけで、外出を楽しめませんよ。休息をちゃんと取ってくださいね。」って諭されました。解せぬ。何度も言うようですが、精神年齢、私の方が上のはずなんですが、何故にこんなに皆さんに諭されるのか。。。
私の自由はどこにあるのか、、、なんて、嘆きながら明日の準備をしていきます。
そして、ルルには申し訳ないけど、私の護衛、その準備までさせています。
「ルル、いつもありがとう。私の我が儘を最良の方法をとって、いつも叶えてくれて。」少し驚いた顔を私に見せるルル。最近では従者として一人前と認められている彼女は昔みたいに私に表情を読ませようとしなくなっていました。クルクルと変わる彼女の表情、いつも元気に接する彼女に、癒しをもらっていた私は、久しぶりに嬉しくなりました。「ふふ。久しぶりに貴女の表情、しっかり読み取れたわね。」本人に言っちゃいます。
「本当に、どうされました?お嬢様。私は貴女様の従者です。いつも貴女様のお願いを叶えることが私の務めでございます。貴女様がそのようにお気にせずともいいことでございますよ??」驚くルルに、私は。「以前からずっと思っていたのですわ。貴女が私に仕えて、私の願いを誰よりも正確に叶えて。。。私の思うままに実行する貴女に、深い感謝と恭敬を、と。」そう返します。「……。とても、、、とても、勿体ないお言葉でございますよ。私には、貴女様からそのような言葉、いただけるような立派なことをしているとは到底思っておりませんから、、、」
なんて謙遜するルルが、哀愁を漂わせるので、これ以上は、彼女に何も言ってはいけないと私に理解させていました、、、
リリィちゃんとのお出かけ当日。今日は以前マリー様と一緒にお出かけをした時のように、貴族街と商人街の境目にある広場での待ち合わせはしていないんですよ。
貴族街に近いとそこにある店も基本的には貴族御用達のような、高級店舗になってしまいますし、リリィちゃんのあるお家からも少し離れてしまうことになるので、商人街の中央にある、噴水広場で待ち合わせをすることにしています。このため馬車も我が家の家紋付きのもので行ってしまうと目立つことになるため、ちょっと上級商人が使用するレベルで、無地の馬車を使用しています。ついでに私も、ちょっと裕福な商人が着ているような、生地はいいけどシンプルな上下にしてまして、無地でパステルカラーのイエローシャツに、下は淡めのベージュカラーのスカートで、春から夏に変わるこの季節を表現し、首元にはいつものネックレスをしてコーデなんかを決め込んでます。なんて、ちょっとファッションショーを自宅の一室でルルに見てもらいながら行って、今日の準備を万端にしています。
そんなこんなを思っていると、いました。広場の中央に、愛らしい格好をしたリリィちゃんが見えてきましたよ。私と同じようなシンプルさが窺える白シャツ。それと、スカートは膝丈のものですが、濃いグリーンカラーが元気な彼女を引き立てます。
ガラガラガラ………ガラ…
馬車が止まって、ルルにドアを開けてもらって、降りてきた私に気づいたリリィちゃん、満面の笑顔で私を迎え入れてくれます。
「おはようございます!!ディアナ様!本日はよろしくお願いしますね!」そう、ニッコリ微笑んでくれました。揺れる髪がそよそよと流れて、愛らしさに拍車がかかっていますね。
「えぇ、おはようございます。こちらこそ、本日はよろしくお願い致しますわ。」そう、私も上品に微笑み返しました。「では、リリィさん、馬車に乗って目的のお店までいきましょうか?」「え、いいんですか??私なんかが乗ってしまっていても」リリィちゃんが驚いてますが、私、一応公爵令嬢ということもあって護衛の配置などもあるものですから、出来れば周りの手間が省ける馬車移動だと助かるのですが、彼女が遠慮するというなら、歩きに変えることにしますかね。そう思ってルルに目を向けると。
「いけません。お嬢様は、公爵令嬢でございます。貴女様の御身が何より優先されますので、安全に配慮された移動以外はみとめられません。」そう、大きく返してきました。「ごめんなさい、リリィさん。どうしても移動手段が馬車となるので、このまま私に付き合って目的地までご一緒していただけないかしら?」リリィちゃんには申し訳ないけど、私がこの辺りを出歩くなら、譲れない妥協点なんでしょう。
「そんな、私の方こそ、配慮ができてなくてごめんなさい。」そう言ってシュンと頭を下げるリリィちゃんに心苦しさが募りますが、この後を楽しむために、気にしないよう心掛けます。
ガラガラ……と馬車の音をさせながら、目的のお店に到着です。昔からある老舗の文具店。貴族街に近い商人街にも支店がある、大きなところ。貴族向けと庶民向けの場所にも構えて、モノの質を変えることで、どちらの客層も取り込んでいます。商売上手の文具店ですね。ここなら、リリィちゃんとも遠慮なく、楽しめると踏んで二人で決めた買い物の目的です。
「わわ!ディアナ様見てください!このペン、とても軽やか!使いやすいですね!!」ニコニコとリリィちゃんが私に教えてくれます。
「ええ、本当。これなら講義の時も詰まることなくスムーズに書けるわ。」か、可愛い。。。使いやすいっていうだけで、こんなに嬉しそうにして反応があるなんて、リリィちゃん、天使か何かかな??
確かに使いやすいのは事実だったので、この価格でこの使いやすさなら、私も感心して買おうか悩んじゃいますね。だけど私何個かペンを持っているのでこれ以上増やす意味ないですかね、、、うーん、高いモノでもないので、一つ使いやすいモノを買ってもいいかな、なんて思っちゃいます。
「んー、どうしましょう。これ、私講義に使いたいな、って思ってるんですが、ちょっといいお値段ですよね。今あるのも壊れてるわけじゃないし、買う必要もないけど、使いやすいのは助かるし、まだまだたくさん学ぶこともあるし、買おうか悩みますね。。。」ああ、こんなところでも、感覚の違い。私にとって高くなくとも、リリィちゃんにとってはお値段が張るモノ。自分がいいと思っても、買えない、買わない選択になるモノ。持ち物から、ここまで変わってしまうなんて、この世界には本当に、どうしようもない格差が存在する。
けれど。「それならば、私も買うか悩んでいたところでしたので、一緒に買いませんか?私、今回ご一緒出来て凄く嬉しかったので、その感謝を伝えたいのです。」そう、リリィちゃんに提案をします。私にとって、彼女とお出かけ出来たことが奇跡だと思っているから、この喜びを形にして彼女に伝えたくて、提案をしてみます。だけど彼女は。
「うーん、、、えっと…私だって、ディアナ様とお出かけ出来たこと、嬉しいな、って思っているんです。だから、このようなお礼、していただきたいとは考えてないんです。一緒に、この時間を過ごせること、それだけで幸せを感じられるんですから、私にお礼なんて、遠慮をなさらないでください。」そう、リリィちゃんはフワリと優しく微笑んでくれました。
危ない。また私は間違えるところでした。一緒に楽しむなら、モノがなくとも平気で、この時間を楽しむことが大切だから、貴女と共にするこの空気を堪能することが、必要だったんです。だから、諌める彼女が私をちゃんと見ていてくれて、応えてくれて、嬉しいと思っています。なので。「ごめんなさい。また私間違えてしまうところでしたわ。私も、リリィさん、貴女と過ごす時間を楽しみたいのです。この後も懲りずに、私と過ごしてくださいますか??」そう返します。「もちろんですよ!私もディアナ様とこの時間を共有できていることが楽しいのですから、遠慮なさらず、一緒に楽しみましょう?」返す彼女の笑顔がとても綺麗でした。
それから、色んな文具を物色して、この後使うモノを買い揃えていきます。それで、リリィちゃんから嬉しいことを言ってもらいましたよ。
「ディアナ様、もしよろしければなんですが、この赤ペン、ご一緒にしませんか??」コテンと首を傾げながら、私に対話するリリィちゃん。か、可愛いが過ぎる……!!し、心臓が跳ね上がって破裂しますよ?!
「え、えぇ。私は問題ないけれど、そのペン余程使いやすかったんですか?」そう聞いてしまいます。「えと。確かに使いやすかったんですけど、どちらかといえば、ディアナ様とお出かけ出来た今日の記念に、お揃いにしたいな、という下心です。」えへへ、って、か、可愛い!可愛い笑い方をするリリィちゃん!!ヒロイン力、今日もカンスト突き抜けてますよ!!!なんなんです、この可愛い生き物ー。。。
「え、ええ。私も、リリィさんが良ければ今日の記念が欲しいと思っていたところなの。嬉しいですわ。お揃いを提案いただけて。」笑って返します。あ、ルルがちょっとプクッとしてますね。可愛いがあちらでも溢れてます。なんですか、ここは可愛いの天国ですか??
「それでは、ご一緒に会計まで行きましょう?」ふふふ。幸せって、こういうことですかね。とっても、嬉しいですね…しばらくニヤニヤが止まりませんよ??
文具店の後は、お昼にする前に、ちょっと雑貨屋さんに入っていきます。色とりどりのアクセサリー。ちょっと小洒落た色合いのものから派手なネックレスまで。安物のようなものから、高そうに見えるものまで、色々揃ってますね。そしてケースに入ったあちらのコーナーは、ここよりもちゃんとしたお値段。恐らく、自分へのご褒美や、恋人に贈るための、ちゃんとしたものなんでしょうね。
あ、ここでも月と太陽をモチーフにした、アクセサリーが。今度はピアスで揃えていますね。このデザイン、あのお店で見たものと似ていますね。恐らく、デザイナーが同じ人だったりするんですかね?まぁ、だからと言って、私にそれは関係ないですか。。。
「どうされました??ディアナ様?そのピアス、気になりましたか??」リリィちゃんに気づかれちゃいましたね。「いえ、ここで見たものと似たネックレスを、この間見かけたものだから、ちょっと気になったのですわ。」リリィちゃんを心配させないよう、そう微笑みながら返しておきます。「そうですか??それなら、良いのですが。どこかディアナ様が寂しそうでしたので、もし何かあれば教えてくださいね??」心配そうに見上げるリリィちゃんが優しくて胸が詰まりましたが、この感情は自分でどうにかしないとダメなものだとわかっています。だから、笑って誤魔化すことにします。ルルにも、心配な顔をさせてしまいました。。。
さて、ここからが本番。お昼ご飯。ランチです。リリィちゃんと話し合って決めた、ランチ。どちらも遠慮せず食べられるもの。屋台!!
これなら、滅多なことで危険が伴わないんじゃないかと、本格的な刺客とか差し向けられているわけでないので、目の前で作られるものに異物が入ることもないでしょうし、お値段もソコソコ。どちらの安全も確保できる産物です!けれど、ルルはちょっとイヤそうな顔をしています。まぁ、仕方ないですよね。要は、食べ歩きを今からしようというんですから。公爵令嬢なら行わない所業を今から行いますよ!楽しみです。
ガヤガヤ…ガヤ…
「お嬢さん方、可愛いね!一本おまけするよ!!串焼きはどうだい?!」
「いやいや、可愛いお嬢さまたち、こっちのホットサンドがおすすめだよ!!手だって汚れず、お腹も満たしてくれる、優れものだよ!!」
「美味しい食べ物には美味しいジュース!ここのフルーツジュースは搾りたて!目の前で仕上げるから、出来立てだよ!!」
色んな声が溢れていますね。どれを食べるか、二人で悩みます。「ディアナ様、食べたいものとか、何かありますか??」「そうですわね。これといって、惹かれるというものが見当たらないのが本音ですが、リリィさんが食べたいものがあるならば、同じもので構いませんが。。。」ちょっとずるい回答ですが、実際、今世では久しぶりの屋台なので、何が美味しいのかわからないのが現状です。ですので、リリィちゃんに決めてもらえれば嬉しいな、なんて考えています。
「そうですか?それなら、私、あの串焼きが甘辛くて好きなのですが、それでもよろしいですか??」そういって指で示すのは、焼き鳥ですね。前世でいう焼き鳥。こ、これは……お酒の肴に食べたくなる味では?!え?!私、今世でまだお酒が飲めないのに、焼き鳥を先にもう食べなくてはならないんですか?なんて苦行です?!
なんて、心がザワつきましたが、いえ、そうですね。焼き鳥なら、ハズレはそうそうないですし、美味しいには違いない、、、私も、一緒に食べますか。。。
「ええ、折角ですから、リリィさんのオススメ、私も楽しみですわ。」そう返して行きます。
ハグっと一口、串に刺されたモモ肉を口にいれます。「ムグッ。あら、美味しい。お肉に味がしっかり染みていて、食べた後の余韻も雑味が少ないですわね。」と、批評なんかしてしまっています。「よかった。ディアナ様、日頃からあのカフェを利用されていらっしゃいますし、お口に合わなかったらどうしようかと思っていたんですが、美味しかったら良かった。」ニコリと笑顔を見せてくれるリリィちゃん、可愛い。だけどこれは。「レモンサワーが飲みたくなる味です。」「え?ディアナ様、どうされました??」「あ、いえ、何でもございません。私、喉が渇いてきたので、何かサッパリしたものが飲みたいと思ってしまって声に出てしまったようですわ。」危ない、危ない。レモンサワー飲みたいって、何だか呑兵衛みたいで恥ずかしい。とりあえず、誤魔化しますよ。
「ああ、そうですね。ここまで馬車から降りて歩いてますから、喉も渇く頃ですよね。それなら、あちらのジューススタンドは如何ですか??サッパリしたものから、甘い飲み物まで、幾つか揃っていますよ。」リリィちゃん、ジュースも何処が美味しいって、把握しているの凄いですね。きっとこちらでよく食事をしているんでしょうね。やっぱり屋台は皆んなの味方ですかね。
「そうですか?それなら、ご一緒に、見に行きませんか??」そういってリリィちゃんを誘います。「もちろんです。私も、喉が渇いてきたので、スッキリしたものを頼みますね。」二人で笑い合いながら飲み物を選ぶこの姿、もはやデートでは?!なんてちょっぴりはしゃぎたくなる気持ちを抑えて、一緒にジュースを見ていきますよ。すると、レモンジュース、炭酸入りが、、、こ、これは、レモネードソーダ?!これは、焼き鳥に、合いそうな。甘み少なめにすればいけるのでは??なんて、考えて見ていきます。リリィちゃん、可愛いが過ぎません??イチゴのジュースとか、乙女ですね…そしてやはり、私はレモネードですね。絶対、残りの焼き鳥食べるなら、これが合うと踏んでいますよ!ふふん!!あ、ルルが可哀想なモノを見る目をしてきました。また、私の雑念を読んでますね。あの子本当に、読心術得意ですよね。
「ディアナ様、レモンジュースの炭酸入りでよろしいのですか??多分そんなに甘くなくて酸っぱいかもしれませんよ??」そう、リリィちゃんが心配そうに見てくれますが、やはり焼き鳥にはレモンサワーですかね。なんて、言えないので。「えぇ、これで大丈夫ですわ。だって、まだまだ買った串焼きが残っていますもの。一緒に食べられるサッパリした飲み物が良かったのですわ。」ふふふ。これで、焼き鳥が楽しめますね。。。
「ふぅ、美味しかったです。ディアナ様はいかがでしたか??まだ食べ足りないとか、ありますか??」
「いえ、そんなことはございませんわ。私も大変満たされておりますわ。」だって、久しぶりにジャンキーに焼き鳥とレモン、この組み合わせが堪能出来たんです、我が公爵家のシェフには頼めない一品です。幸せな時間でしたよ。。。
ふと、顔をこの屋台村を見渡すように眺めていたら、ちょっと路地に向かって目をやると、あれ?って。なりました。なんだかあの場所、ちょっぴり暗い感じがしますが、気のせいですかね??
「どうされました?ディアナ様。」リリィちゃんが私の反応が鈍かったために気にしてくれました。
「いえ、なんだかこんなに天気も良く明るいというのに、あちらの東にある道沿いから、薄暗く感じまして。。。」「あ、と。。。あちら、ですね、、、」
あれ?何だかリリィちゃんの歯切れが悪い気がしますね?何でしょうか??(お嬢様、あちらは、市民街と商人街の間にある、職にあぶれた者たちの溜まり場です。市民街にあるスラムとも異なって、やや物騒な思想を持っておりますので、近づいてはなりません。)ルルが私に耳打ちをしてくれます。そうか、商人街でもこんな区画があるんですね。それは、きっと夢を見て商人街に来た方たちが、叶わないことを知って、市民街にも戻れずにこちらに残ったということなのでしょうか?それは、とても悲しいですね。
だけど、スラムとは違うんですか??私が首を傾げていると。
「…ディアナ様。あの方たちも元々は何処かの貴族領にいた領民なんです。純粋な王都出身者の方ではありません。スラムにいる方たちは、市民街から、王都の秩序から外れてしまった方々たちではありますが、王都出身であることは間違いありません。ですが、あちらにいる方たちは、貴族が統治する領土から夢を見て、大成を夢見て、商人街に足を踏み入れた方なんです。だけど、そのような夢だけでは成功は成し得ないのが王都です。それに、領民の中には逃げるように、貴族の厳しい統治から抜け出すため、逃げ出した方もいます。それでも、王都なら成功する可能性に賭けて、こちらまで来たというのに失敗をしてしまった。全てを恨んでいる方たちです。ですので、ディアナ様、安易にあの場所に踏み込んではなりません。」いつに増して真剣な顔をしたリリィちゃんが、まるで幼な子を諭すように、私に教えてくれます。
そうか、この世界にも、スラムよりも、危ない場所があったのか。
わかっていました。前世だって、近づいてはいけない場所があるって、言われることがあったように、今世にだって、世界が動いているのだから、そのような場所があると。だけど、それがこんな身近にあることに私がそんなものがあるなんて、知らないままいたことが、とても申し訳なく、それでいて複雑な気持ちになってしまいました。だって、知っていたはずです。貴族が、全て綺麗なものでもないこと。搾取が生き甲斐の貴族がいること。だけど、私が知らないように、大切に、皆んなに愛されて生きていたこと。だから、知識で分かったつもりであっても、それを目の前にすると、とても複雑な気持ちが、恐怖が、強い後悔が、何も出来ない遣る瀬なさが、募ります、、、
なぜ、私は知ろうとしなかったんでしょうか、、、




