楽しいお出かけが待ってます!
さぁ、とうとうテスト期間が始まります。皆さん今まで学んできたことを教室で復習していますよ。まあ、少し空気が緩いのは、今回のテスト、前期終了に行う所謂‘学期末試験’でなくて、講義に慣れた頃を見計らって行うもので、前世でいうところの復習を兼ねた‘実力テスト’ですから、今の力量を測るためのものなんですよね。だから皆さんとても真剣に点数を取りにいく、ではないんです。だけど私は、このテスト勉強も頑張りますよ。一応、特待生ですから、不可の評価は取りたくないんです。不可?なんて思うでしょうけど、この講義の評価システムも大学と同じなんですよね。テスト内容も教員によって様々で、当日提出のレポートもあるんですけど、前世でも一般的だった筆記試験を行う教員もいます。その中でも評価方法が一律に上から、秀、優、良、可、不可までの5段階評価になっています。ほら、大学みたいですよね。
まあ、実力テストは学期末試験のように重要視されていないので評価に影響が大きいということもないんですがね。私は特待生の意地もあって、頑張ろうと思っているだけなんです。ほんと、実力テストや学期末試験があったり、テスト休暇に長期休暇があるなんて、なんだか乙女ゲームみたいな好感度アップイベントみたいで、ご都合主義の部分がありますね。ただ、どちらかといえばやはり、私みたいな転生者がこの学園の礎を作ったんでしょうかね?そんな感じがヒシヒシと伝わってきます。
ああ、話は逸れましたが、結論的には皆さん、まだまだ本気の試験勉強はしていないということなんですよ。特待生以外は。
…特待生って、基本的に何かしら秀でたところがあるので入学を認められているんですよ。そしてその成績の如何によって、どんなエリート街道に乗れるか決まってくる。なので一つ一つの試験が最後まで、学園で受け入れる必要があるのか、どんなところへ就職できるか、を批評するための指標になってしまうんです。だから、どんな試験であっても上位をキープする必要があるので、特待生である数人の学生は実力テストにも本気です。斯くいう私は、基本的に公爵令嬢の特殊な飛び級ですので、将来の就職先に影響があるものでもないんですが、流石にそんな緩くいられるほどのんびりしているのは他の特待生にも失礼ですから。。。できることは頑張ってお勉強をしますし、出来れば‘良’以上は取りたいと思います、、、
だけど、必須科目の魔法実技については、不可を取らないのなら、許してほしいです、、、
実は私、魔法が苦手なんです。今まで度々話題にも上るこの魔法って、よく異世界モノでみるような、魔力量が低くても精緻な技を磨いて実力を伸ばしたり、魔力を使い切って消耗することでその魔力量を底上げしたり、そんな手法があるわけじゃないんですよ。確かにこの世界、定番の4属性である火・土・風・水と稀有な2属性の光と闇の魔法はあるんですけど、これ、才能でしかないんですよね。よく物語であるような上手く使う努力をしたら上達するものではないんです。魔力量も生涯魔力量と言われるくらい、一人ひとりの総量が生まれた時から決まっていて、それ以上増えることがないんです。逆に減ることもないから、持っている魔力量と属性で出来ることが決まっていて、その総量をどうやって、効率よく利用するか。例えるなら消耗する体力を最低限に抑えるように動くか、これが大事なんです。この理論を理解するために必要なことを最低限、中等部では学びますが、残念ながら魔法自体は元々魔力があって才能がある人にだけできる、天性のものなんです。だから、この世界の魔法実技は持っている魔力量とその効率的な利用方法を学ぶものでしかないんです。その点、私は魔力量が平均以下で、操る力も程々なので、特に基礎しか行えないんですよね。だから私って必須科目の魔法実技以外で魔法の使用がいる講義は取っていないんです。座学は興味があるので取ってますけど、実技系統は取っても全く役に立つことがないですからね。
あ、ちなみにリリィちゃんたち特待生は、二つ以上優れた科目があれば特待生として入学できるんですけど、そのうち今年の特待生で魔法が優れているのは光属性持ちのリリィちゃんともう一人、土と火属性の複合型持ちのピーター・ホワイトさん、このお2人だけなんですよ。他の特待生は座学に優れたところがあるみたいです。文官になれるような力量があるみたいで、数学分野に秀でた方と、建築に特化した方、折衝が得意な方と示し合わせた形で特徴が皆んなバラバラなんですよね。それでも、皆さんこの学園で学ぶことに熱心なので必須科目はどれもハイレベルな理解力を持ち合わせています。あ、私同様、魔法については、特化型の人以外はレベルが低くとも黙認される部分として学園は認めてますよ。流石に魔法の力が低いのに高いレベルを求められても仕方ないですもんね。けれど私以下の魔法能力低い方は特待生にはいないですがね。
まあ、そんなこんなをツラツラと考えながら私は学園の図書館に向かっています。どんな世界でも勉強するなら図書館が持ってこいですよね。
さあ、自習スペースを一つお借りして筆記試験に向けた復習と、レポートの作成を進めます。
「やぁ、ディアナ嬢、君もここで勉強か?」レポートに集中し続けていたところにジュリアン様がやってきました。いや本当にこの方は、自由ですね。え、お兄様もキャシー様も、なんなら従者も連れずに一人でこんなとこまでノコノコとやって来ていますよ、、、
いや、まだ誰かと一緒ならいいんですけど、学園内であっても一人で、お共も誰も付けずにこんな奥まった場所の、隔絶された自習スペースに一人で来るとか、え、危機管理能力どうなってんですか。
王子って自覚はどこに置いてきたんですかね?
「なんだ、ディアナ嬢、そのジト目。何か問題があったか??」少し首を傾げ不思議そうに聞いてきます。いや、こちらの方が不思議ですよ。。。
「…ジュリアン様。お兄様やキャシー様とご一緒ではないんですね、、、」
「ん、いや。中々2人の間に入って試験勉強に励むような神経の図太さはこの僕でも持っていないさ。」なんだか気まず気な顔ですが、2人の距離感が親密すぎて遠慮したようですね。だけど。
「それでは何故従者の1人も連れずにこのような場所にいらっしゃるんですか?貴方様はこの国にとって大切な存在であることをご理解されていますか??」社交界に疎いだの言われる私でもジュリアン様一人で来てはいいスペースでもないことは知っています。ですから、注意を促しますが。
「う。わ、わかっている。だが、ここは学園だ。そうそうなことはまだ起こらんよ。それに、少しのことなら僕も対処ができる。その後は、従者でもなんでも、呼び出すがな。」そうニカッと笑ってますが、いえ、何かあってからでは遅いので苦言を呈したんですが、この方ホント、自分のことわかっていらっしゃるのかしら。といいますか、公爵令嬢でしかない私ですら後ろにルルを控えさせてこの自習スペースに来ているのに、その上位存在がお供すらなく一人でフラフラしてるなんて、私自身の立つ瀬がないじゃないですか。もう、と思いながらルルに目配せをすると、うちの従者は優秀ですからね、隣の空きスペースの椅子を引いてくれます。
「仕方ありませんのでジュリアン様、こちらでご一緒いたしませんか?」妥協しますよ。というか、座らせている間に居場所を彼の従者たちにリークします。ルルがすぐに動いてくれるので助かります。
「いいのか?僕も一緒にこちらで過ごしていても。」少し驚いた様子で私を見てきますが、この方をこのまま一人でほっといたら、どこに行ったか分からなくなって目覚めも悪くなりますよ。それに。
「いえ、一緒に過ごすといいますか、来週から実力テストでございますでしょう?私自習をしにここまで来ておりますの。ですのでジュリアン様もなさってくださいな。」ふぅ、と呆れた気持ちでため息を吐きました。といいますか、本当にこの方は私のどこを気に入って構ってくるのかが不思議ですね。そう思って彼の顔を見てしまっていたんですが、、、
「どうした??僕の顔に何かついているか?それとも、僕がカッコ良すぎて見惚れているのか??」そう、返してきました。ホント、自分の顔がいいことを理解している人って、返すジョークも自信満々です。
けれど私には関係ないことですので。「いえ、ちょっとジュリアン様の今後を心配して感慨深くなっていただけですわ。」そう、プイとそっぽを向きながら、ちょっとチクリと嫌味を呈します。
「なんだ、僕のことを心配してくれるのか。それは僥倖だな。」カラカラと、明かりに照らされて光る銀髪を揺らしながら爽やかに笑ってます。本当に、ずるい人ですね。私もこんなに飄々とした様子が出来ていたら、違った世界が見えていたのかもしれないです。
「いいえ、私の心配は、ジュリアン様がこんなところまで一人で来て、従者の方たちの気苦労がこれからもあるなんて思い知れていることですわ。それに、今の1番の心配事は、私が提出するレポートを仕上げられるかどうかですわ。ジュリアン様の心配なんて、これっぽっちもしていませんもの。」プンプンとしながらジュリアン様のことを心配なんてしてないアピールです。だって、癪ですよね。勝手に私がジュリアン様の心配してるって思われるのって。私が仲のいい令嬢だって、周りに思われる要因の一つがこれなんですから、困ったものです。
私にとってジュリアン様は、年上の仲がいいお友だち、そう思っている程度ってこと、知ってほしいですよ。プリプリとしながら、私はまた机に向かいます。
少しした頃、横から見つめている彼の姿が目に入りました。もう、何なんですかね。フイと顔を向けると真剣な顔をするジュリアン様。
「どうされましたか?私にお話がございますか??」不思議な気持ちで彼に聞いてみます。
「いや、何。真剣に励む君が眩しかったんだ。それに君は、僕を一人の友として見るだろう?王子でもない、人として向き合ってくれる。」「それは、お兄様も同じですわ。」「確かにリアムも友と見ていてくれる。だけどそこには僕への敬意が、王族としての僕への敬意がそこにあるんだ。だけど君のその姿は、僕を人として扱う気持ちがこもっている。だから僕は、君を眩しいと、好ましいと感じているんだよ。」そう、優しい顔で突然私を見る彼に驚いていると。「ああ、ディアナ嬢、君を混乱させる気はなかった。許してくれ。今はまだその時でもなかったな。もう少し、このままの時間を僕にくれないか??」なんて、都合よく言ってくるジュリアン様が、少し寂し気な表情をしているから、私は何も返せなくなって、、、
「仕方がないので、もう少しこのままでご一緒しますわ。」そう、言っていた。
少しして従者の方たちがジュリアン様を迎えに来て、私とルルは彼と分かれて、閉館時間の1時間前まで居座ってました。いや、この場所にこんな時間までいる生徒って他にいるんですかね?仮にも貴族なんでもう帰って家で自由時間過ごしてそうですね。だって、現在時刻、夜7時ですよ?講義最終時間から2時間、ここにいたことになります。レポートも試験勉強も頑張りましたよ。えへん、と頑張った自分をルルに得意気に見せながら帰ることにします。ルルが何だか少し呆れ顔ですね。あ。
あれ?って私たちのいる場所から反対側の斜めの方。よく見ていると、まだ残っている人たちが見えました。リリィちゃんや他の特待生の方たち、まだ学園に残っていますね。この時間だと、帰りが大分遅くなりそうなのに、自習スペースで勉強しているのは、きっと帰る時間も惜しいんでしょうね。その存在に気づけたことに浮かれそうでしたが、他の方もいること、今は実力テストの勉強期間、真剣に取り組む彼女の邪魔などは出来ないですからね。このまま、帰るしかないですね。ちょっと寂しい気持ちはありますが、お出かけの約束が出来ている私は、少し気分は上向きなので、耐えることができました。




