お買い物は、楽しかったです
ジト目のマリー様と一緒にお出かけ。小物や洋服等、色々なものを見ながら吟味して、お話して、欲しいものを言い合って、意見をして聞いて、買いたい物を買える。まるで、前世での気のおけない友の様な、そんな関係みたいで。とても、有意義で楽しいお出かけ。
こんな時間、前世でも今世でも、過ごせていたかしら。とても、思い出せない。けれど、お兄様やキャシー様、私が欲しいといえば、買ってきてくれるし、行きたい場所に連れて行ってくれる。それだって、とても幸せで優しい時間だけれど、学友と過ごす様な時間はなかったから。私が見たいものを、聞きたいものを、欲しいと言ったものだけを、与えてもらった。本当に両親やキャシー様、ついでに、と言っては大変失礼ですが、ジュリアン様にも感謝しています。
だけどそれが何だか、供物を捧げられるかの様で、向けられる視線に座りが悪い感覚があって。きっと、私がキチンと、皆んなに目を向けていなかったから。それに気づいていた優しい彼ら全員に、遠慮されていたんだなって、思います。
今回のことで、お兄様たちったら、私を今まで以上に過保護にしてきますが、それ以上に、ダメなことはダメだと、伝えてくれる様になりました。本当、マリー様様ですね。彼女はお小言も多いですが、その実、秩序と規律が信条なんでしょうね。曲がったことが許せない、真面目な方。それでいて細やかな配慮が出来るから、皆様にも好かれている。優しいお姉さんですね。最初に典型的な悪役令嬢みたいだと思ったことは、本人には内緒です。
そんなこんなを考えて、買い物を楽しんでいたら、本日のメイン、お昼ご飯をご一緒に。を敢行する時間です!とても楽しみですね。いつものランチとは訳が違う。学園の外での外食。なんだか一気に仲良くなれたみたいで、ワクワクします。ふふふん。なんて気分でさぁ入店です。
ガヤガヤガヤ……カチャカチャ…
色んな音が楽しそうに鳴っています。私たちもこのBGMに入るのかと思うと嬉しいですね。さあ、席に案内してもらいますよ。
と思ったら、何だか不穏な空気があちらの方からありますね。。。
「ですので、ご予約がない方はご利用できません。それが、この店のルールです。」
「だからそのルールは聞き飽きた。そんなものは関係ないと言っているだろう?私は彼のローズベルク家に連なるものだぞ。その私がこの店で食事をしたいと言っているのだ。これは光栄なことであろう?店は私を通すだけだ。何故それが出来ないのだ??」
うわー、典型的なクレーマー。しかも、なんかよくわからない威張り方をしてますよ。なんであんなに周りを気にせずに騒げるんでしょうね。特にローズベルク家の家名に傷をつける行為だと思うんですがね。といいますか、ローズベルク家って、保守派の伯爵じゃないです??しかも、マリー様のアスター家が親戚筋ではなかったでしょうか??そう、彼女の方を見ると、右手で頭を押さえてますね。うん、何だかご苦労されているようで。。。
ふう、とこれ見よがしに2人してため息を吐いていたら、クレーマーさんに気づかれてしまいました。
「なんだ?お前たち。私に何か意見があるのか?」
うわ、不遜な態度ですし、【私に】なんて自分がどれだけ偉い人のつもりなんですかね。嫌になります。
「いえ、失礼しましたわ。特に貴方へお話しすることもありませんので、お気になさらず話を続けてくださいな。」私も関わりたいわけではないので、ちょっとツンケンと返します。マリー様に至ってはこの方、自分の派閥に連なるなんて言っている人ですからね。もっと関わりたくないのか一言も発しませんでしたよ。と言いますか、ローズベルク家に連なるって、どんな言い回しですか??え?実は血筋は継いでないとか??よくわかりませんね。
「ふん。なんだ、お前たちのような小娘が予約をしてこの店に来るならば、私はもっと簡単に利用できておかしくないではないか。どうだウェイター、私を先に通せ。」
「何度も申し上げているとおり、こちらの店はご予約のない方のご利用はできません。今お越しいただいたお嬢様方お2人は事前にご予約いただいておりますのでご利用できるのです。」
うわー、何度も同じ説明しても納得しないクレーマー、前世でもよくいました。こんなタイプ、現代だけだと思ってましたが、今世の中世風の世界でもいるんですね。やはりこういうのは、豊かな人たちの中でも暇を持て余した人がクレーマーと化すんですかね??不思議なものですね。私もこの手の人がのさばる様子をよく見てましたから、特に怖くも何ともないんですよね。ただ仕事が滞るので迷惑なだけで。
「少しいいかしら。」ピクピクと眉間に皺を寄せていたマリー様。我慢の限界が来たんですかね。まぁ、自身の関係者と自称する変な方、面倒を起こしているし一度物申したくもなりますよね。
「なんだ小娘。私が誰かわかっているのか。」
「いいえ、わかりませんわ。ですのでどなたかをお教え願えないかしら。」そう、ちょっと下から持ち上げて、マリー様が返しています。
「なんだと、私を知らないと言うのか?!小娘、お前は何と世間知らずなんだ!」えー、、、貴方の方がひどくないですか??そのローズベルク家の本家筋にあるアスター侯爵家のご令嬢ですよ??なんて、心の中でドン引いてます。うわー。。。
「私、不勉強なもので申し訳ありませんわ。貴方はどちら様でしょうか?」にっこり、怒りを堪えたような声でマリー様が返します。
「ふん!私はローズベルク家の現当主の妻、マリアンヌ様の妹の夫の弟、カール・ベッカーだ。」え、なんか地味に遠い身内?ですね。。。
「なるほど、それでは血筋にも満たない小物ということですわね。」うわ、マリー様もなんて毒舌にお怒りを示してるのでしょう。
「なんだと?!貴様!私はかのローズベルク家から長く贔屓を受けている名家だぞ!!」
「それは貴方の功績でなくて、先人の努力によるものでしょう?貴方は今この場でその努力を地に落としましたのよ。」
「貴様、何を言っている?私がそんな馬鹿げたことをするはずがないだろう。」いやいや、ところがどっこい、マリー様のお怒りにかかれば、もう御用商人からは外れるんですがね。しかも、本家の顔も知らないなら、この人、ちゃんと仕事に携わってないんじゃないですか??聞いている感じから、マリアンヌ様の妹の旦那さんがしっかり働いてそうですよね、、、するとマリー様、従者に目配せをしましたよ。あ、皆さん彼に近づいて行きますね。
「何だ?お前たち!私に近づくな!!私はベッカー家のカールだぞ!貴様らのような輩が近づいていい相手ではないぞ!」
「不本意ですけれど、貴方のようなものも身内に含まれてしまうようですからね。私、身内の粗相は、自分で片付けたいところですの。」
そういうと、彼の両脇を従者の方が固めて引き連れて行きます。
「な!貴様ら、私にこんな仕打ちをして許されると思っているのか?!」なんて、まだ相手がどんな人物かも気づいていないまま、小物の発言とともに強制的に去って行きますね。
「ふぅ。面倒ですが、この後マリアンヌ様のところへは、私の方から遣いを出さなければなりませんわね……」やれやれ、という仕草と共にマリー様が大岡裁きみたいなことやってます、、、
かっ、かっこいい!
「マリー様。。。とても、堂々とされていて清々しい気持ちですわ。」キラキラとした目を向けてしまうのも無理はないと思うんですよ。久方ぶりに見る、まるでテンプレートみたいなスカッとシーンを目にして、しかもその主役が仲良くなった友人だなんて、嬉しいですね。
「何を仰っていますの。。。それよりも、お見苦しいものをお見せして大変申し訳ありませんでしたわ。」そう言いながらマリー様、ちょっと疲れた反応をしながら、お店の方に話を通すように戻ってきた従者さんにお話ししてます。本当、シゴデキですよね、マリー様って。
「本当に、今だにあのような典型的な勘違いをする方が闊歩しているなんて信じられません。」あんな勘違い野郎に、勝手に自分の家の名前を使われて傲慢な態度をされているとか、堪ったもんじゃないですよ。
「何を言いますの、ディアナ様。この国にはあのような者はそこらじゅうにいますわよ。ですから、王家を含めた先人たちは初等部教育を全ての国民に課すことにしたのではないですか。」ヤレヤレ、という仕草と共にマリー様から講釈をもらいます。
「えぇ、そんなことまで考えて市民への教育を始めたのですか??」それは、ちゃんと知らなかったですね。私、単純に生活水準を上げてあげようという優しさだと思ってましたよ。。。
「本当に、ディアナ様は世情には疎い方ですわね。」何だかマリー様からのジト目が定番化しそうですね……
「ですが、初等部教育は各領地の生産性の向上を目的に行われたのではないですか??それで勘違いを直せるとは思いませんが??」
「いいですか?ああ言った態度は、虎の威を借る狐と変わりませんが、それは周りが勘違いをしないと成立しませんわ。けれど、しっかりとした教養がある者がみれば不自然なことに気付けますが、それがないのなら気付かずに搾取を受けるだけになります。昔は教養者が少なく騙せたかもしれませんが、今だとそういった者も増えてますから、騙されません。それは教養があれば自分で考えられ、正しい選択ができるということになるのですから。これによって知性のある者を増やし貧富の差を減らせると踏んだのですわ。おかげで、近年は大分差は埋まっていますが、ああいった者は変わらず一定数はいますもの。ただ、周りが気付けるようになっただけですわ。ほら、こちらの店でもあんな傲慢な態度を取られてもキチンとした対応をしていたでしょう?」おお、、、しっかりと考えられた理由があったとは、、、単に勉強が出来たら賢くなるからできる仕事が増える、じゃなくて、賢くなるから、正しく行動できる、っていう将来を見据えた施策だったんですね、、、
「そうなのですか。マリー様って本当に世情にも詳しくてしっかり学んでいらっしゃいますね。」尊敬の目を向けてしまう。
「ディアナ様も、理解をするのは早いのですから、周りの情報と環境に興味を持ってくださいませ。」ちょっと呆れた顔で見られちゃいましたよ。いえ、でもだって、一応、必要なことは学んでますよ?この国のこととか、この学園のこととか?だけど、まあ、真剣に将来を見据えた学び方、してないですもんね。私、ただ穏やかに過ごせるだけでいいやって、思ってるだけだったから、ちゃんと知らないこと多いんですよね。今世の庶民の暮らしとか、商人街より先にある市民街とか、その環境とか。一般的な暮らしや考え方、ちゃんと知らなくてリリィちゃんにも迷惑かけたから、ちゃんと学んでいかなきゃならないですね、、、
そう、しょんぼりした顔をしてたからですかね。マリー様ったら。「まぁ、私がフォロー出来ることは限られますけれど、ディアナ様お一人の面倒は見られますから?困った時は協力して差し上げますわ?」そう、慰めてくれました。
本当に、この世界で関わっている皆さんが優しくて、幸せに胸が締め付けられます、、、
「さぁ、こんな暗い話は終わりにしましょう。今日は外出を楽しむために来たのですから、一緒に楽しく過ごしますわよ。」
そう、明るく声を掛けてくれるマリー様が張り切って声を掛けてくれたから、この後も楽しめたんです。
思った以上に楽しめた今回。最後にあんなこともあったけれど、マリー様は特に堂々としていて、少しかっこよかったです。これから、とても不吉な感覚がしてるんですけど、マリー様や皆さんと一緒であれば、問題にならない気がします。不思議です。彼女の強さはどこからきているのでしょうか。少し、いえもっと、今世の優しいこの方たちを知りたくなりました。
これからも、皆んなと仲良く出来ると嬉しいですね。




