一緒にお買い物、楽しみますよ
やっと、今週の全ての講義が終わり、待ちに待った週末ですよ。リリィちゃんにも、今度の週末にマリー様とお出掛けをするんですって、自慢をしちゃいました。リリィちゃんも驚いてましたけど、私のことのように喜んでくれました。ふふふ。今世で初めての学友とのお出かけですよ。ましてやマリー様とお出かけなんて、ワクワクします。
今回のお出かけにあたっては、事前に行きたいところをマリー様とお話ししてありますので、それに合わせた護衛体制を双方の従者間で話し合ってあります。ですので、当日は計画に沿って行動をする必要があるんです。私1人の時は小説みたいにちょっといいところの商家の娘に変装して、ルルが付き添って、遠くで護衛が付いてくるので、ある程度はその場の気分で行動出来るんですけどね。ですがやはり、公爵家と侯爵家。どちらも高位ですからね。2人も令嬢が揃うと、鴨がネギ背負って歩いてるようなもんですので、周辺の警戒は怠れません。
それにしても、前世ではこんなに行く場所をしっかりと決めて出掛けたことなんてないんですけどね。誰かと出掛けても大体が行き当たりばったりなので、少しソワソワします。まるで、現代日本の皇族の方たちみたいに仰々しいことになっていますよ。
「ご機嫌よう、マリー様。本日はよろしくお願いいたしますわ。」我が家からガラガラと馬車に乗り、待ち合わせの貴族街から商人街に繋がる大門の広場に着きましたよ。もうマリー様の馬車が到着していたので、慌てて降りて挨拶をしました。
「ディアナ様。到着早々、従者が扉を開ける前に自身からお声掛けをしてはなりませんわ。我が家の家紋を真似た暴漢でしたら、危険ですわよ。」会って早々、ジト目とともに、ご尤もなお小言を受けました。いや、でも、私も朝からワクワクしてたので、ちょっと浮かれてたと言いますか、、、ルルも、そこまで強く止めなかったので、恐らく大丈夫だとも踏んでましたし…なんて、心の中で言い訳しつつも、「ふふふ。申し訳ありませんわ。今日はマリー様との初めてのお出かけですから、私楽しみにしていたのですもの。今回は何事もありませんでしたので、大目に見てくださいまし?」なんて、笑って誤魔化します。「ああもう。貴女は本当に公爵令嬢である自覚をお持ちになった方がいいと思いますわよ。」なんて、手を頭に当てながら首を振る姿は、ちょっと悪役令嬢みたいですが、私を心配しているのだろうと、その目線でわかります。
本当に、別の派閥に属しているなんて思えないほどに、マリー様は優しい人ですね。だけどなんでこんなにもお優しいのでしょうね。。。
「見てください、マリー様。こちらのネックレス、2つで一つのもののようですわ。とても手の込んだ細工がされていますわね。」月と太陽をモチーフにしているみたいですが、1つでも光に反射してキラキラと煌めいてます。綺麗ですね。
「あら、本当ですわね。1つでも遜色ないものですのに、モチーフになっている月と太陽が、上手く2つに分かれるような形ですわね。」カチャリ、とマリー様が試しに外してみています。良いんですかね、店員さんに聞く前に外してしまって、、、
すると、商人街の一等地にあるお店ですので、私たち2人が何か仕出かしたと思われたんですかね、店員さんが近づいてきましたよ。「お話中失礼いたします。少々よろしいでしょうか?」やはり勝手に外すのは不味かったですよね??というような目線で語りかけながらもちょっと不遜に「何か問題でも?」と言ってみました。店員さんたら。「こちらの商品、実はお2人でつけられるようになっております。」そういうと、店員さん、マリー様が試しているネックレスのチェーンを手で指して。「こちらのチェーン、二重になっておりますので、留め具を外した上でかみ合う金具を外しますと、2つのチェーンになる仕様でございます。大切なご家族やご友人、思い人へとペアでご利用が可能です。ご歓談中、大変失礼いたしました。」そう、頭を下げまたその場を去って行きました。うん、まあ解説ロボットみたいな方でしたね。マリー様も不思議そうに、、ってあ、違う、チェーンも外してみてますね。おぉ、ほんとに2つになりますね。不思議。こんなアクセサリーもあるんですね。
ちょっと気になりますが、まぁ、私には必要ないものなので気にしないでおきます。。。
「月と太陽で2つに分けられるなんて、高位貴族のパートナーと使用するのはむずかしいですわね。」え?何故に??なんて思っているとルルから(太陽は男性、月は女性を表すモチーフなことが多く、ディアナ様方高位貴族の皆様はそのお考えを大切にされています。そうしますと、分かれるということは、離縁とみられ不吉な可能性があります。)そうボソリと早口に教えてくれました。いやホント、ルルにはいつも感謝してますよ。
「そうなのですね。ですがそれならば、夫が月を、妻が太陽を着用して相手の気持ちを持つという考えは難しいのですかね。」なんて声に出しちゃいましたよ。「まあ、悪くない考えでしょうけど、我々高位貴族はどうしても伝統と格式を大事にしますので、不要なものですわね。」そうですか、それは残念。ちょっと興味があったんですけどね。
「ディアナ様、欲しいようでしたら、渡す相手はキチンと慎重に選ぶことをお勧めしますわ。」そう助言をマリー様からいただきました。なんかちょっと解せないですね。むーっとします、、、
先程から私たちはアクセサリーなど雑貨があるお店や洋服店を冷やかすように色々見ています。まあ本日の本当の目的は、このお店の近くにあるレストランなので、予約時間になるまでの時間潰しに寄るだけの計画だったので、いいんです。色々な小物があるんだな、ってキョロキョロ見るぐらいでいいんですよ。そう、言い聞かせます。
「あら、ディアナ様。あちらのドレス、今度の夜会の参考になりそうですわよ。」「え?夜会ですか??」
「……ディアナ様、お忘れですか?この季節にある王家主催のものですわ。」「あ、そういえば、そんなものもありましたわね。」「貴女、王家主催のものを‘そんなもの’とは不敬になりかねませんわよ。」はあ、とマリー様がため息を1つ吐いています。でも仕方ないと思うんですが、この夜会、ジュリアン様の婚約者候補の1人になっている私は絶対参加なんですよ。そのため準備一つをとっても王家の方から指示が入るので、この時期になるとすることが多くて憂鬱になってしまうんです。ですので、これは忘れたい気持ちが表に出ただけなので許して欲しいです。。。
「いえ、私に他意はございませんわよ?ちょっと、いえ、すごく覚えていたくない記憶だったものですから。」そう口元を隠しながらホホホと笑ってやり過ごそうとしますが、マリー様ったらやはり目敏いですね。
「…本当に、仕方ありませんわね。少しでもいいのでディアナ様は、ジュリアン様の婚約者候補になっていることをきちんと胸に留めて自身のご身分をご理解なさいませ。」ふぅと、何やら耳の痛い言葉とともに諦めのため息をついていますが、その表情が何だか複雑そうですね。なんででしょうかね??
それに私は、‘候補’でしかないし、なるつもりも、ないんですけどね。あれ?私が‘候補’なら他の候補もいそうですけど、そういった話、聞かないですね。何だかおかしい気がします。
だけど、今はそれよりも楽しみたいですから。
「ああそれよりも、マリー様はドレスはやはりお抱えの商人にお願いするのですね?こちらを参考になるとおっしゃるくらいですから。」
「ええ、例年我が家で懇意にしている商人がおりますので、そちらに依頼をかけていますの。私の好みもしっかり把握していますので、出来がいいんですのよ。」えへん、と胸を張るマリー様。可愛いですね。
「ディアナ様、今余計なことをお考えになっていますわね。」またまたジト目のマリー様に、何故に私はこんなに分かりやすいのかと嘆きたくなりましたが、友人と他愛ない会話ができることが、私は幸せに感じます。




