リリィちゃんともっとしっかりお話したいです。
ルルに先導され着いた場所、開けたそこには東屋が一つあって。そこに彼女は座っていた。ホッとした。ルルを信じていたけれど、本当にここであってるのかしらって心配していたから。だけどそれと同時に、何でこんなところに彼女がいなければならないのかと、ムカムカしてきて。その一端が私の自分勝手な行動だと思うと、もっと自分にイライラして、どうしようもなく、腹が立ってきた。でも、彼女はそれ以上の思いを抱えているはずで。
「リリィさん、少しいいかしら?」そう、声をかけて。
「あれ?ディアナ様?こんなところまでどうされたんですか??」ハッと驚いた顔をするリリィちゃんに、私はまず「ごめんなさい。」と深く、頭を下げ謝罪をして。
「え?何がですか??」突然謝る私に、理解が追いつかないリリィちゃんはアタフタしていたけれど、直ぐに私を気遣ってくれた。「と、とりあえず、ディアナ様もこちらに座りませんか??」そう、ベンチに座るよう声を掛けてくれることが、また申し訳ない気持ちに拍車をかけて、私は動揺してしまった。
「どうして?」「え?何がです??」
「どうしてそんなに、私の行動で酷い目に遭わされていても、私に優しくするの??貴女には、なんのメリットもないのよ??」そう、畳み掛けて聞く私に彼女は、しまった、という表情をした後、「どうして、と言われましても、、、」と困った顔でこちらを見てきて。そんな彼女に、私に教えて、と思いを込めた目で見つめ返すと、彼女は観念した様子で私に「……。初めて声を掛けた時、気づかなかったとは言え、大貴族である貴女様に無礼な態度をとったのは私です。それでも優しくしてくださったのは、ディアナ様の方です。それに、その後も私を気にかけてくださったのも貴女様ですよ。私はただ、その優しさをお返ししているだけですから…」特別なことは何もしていない、そう、彼女は、私に返事して。
「そんなこと、ないわ。だって、聞かれたら答えるのは普通でしょう?それなのに貴女は、私がお話しようと声を掛けると、必ず答えてくれたでしょう?本当は、それが貴女の迷惑になるなんて気づきもしないでしていたのによ…貴女、一度だけなんてことじゃなくて、何度だって私の話、聞いてくれたじゃない。優しくしたお礼なんだとしたら、私が貰いすぎていることになってしまうわ。それは、可笑しいでしょう??」辻褄が合わない、本当はどうして、こんなに優しくしてくれるのか?自分のことを捨て置いてまで。そんなこと、ないじゃない。そう、思ったんだけど、、、
「可笑しいとは、思わないですよ。私、ここに初めて着いた時に本当に困ってて、、、入学式、一度きりしかない特別なものだからって。お父さんたちも、どんなのだったかお話聞かせてって、言われていたから。なのに私、場所がわからなくて。だけどディアナ様が教えてくださって、受付に間に合って、式にも出られたから、ちゃんと手紙でたくさん伝えることが出来たんです。だから、お父さんたちも喜んでくれたから、助けていただけて嬉しかったんです。そんな恩のあるディアナ様が、私に声を掛けてくださるんです。舞い上がった気持ちにだってなって、楽しくて貴女様とお話してしまうんです。何も、可笑しくはないんですよ。」私にとっては、嬉しいことだから。そう、返してくれる彼女は、また温かい微笑みをして。
「……っ!!だけど!それでも、貴女は、私の不注意で、傷ついたのは変わらないじゃない!!なんで、私に言ってくれなかったの?!」そうだ、私がこうも腹が立つのは、何も聞かなかった自分に対してもだけど、何も、言ってもらえない自分に、信頼されてなかったんだ、って悔しくて腹が立ったんだ、って気付いて。自分の無力さ、無関心さに、もっと苛立ってしまう。
「そんなこと、言えないですよ。だって、ディアナ様、お優しい方なんですから。そんなこと言ったら、もうお話出来なくなりますよね??」図星だった。確かに、最初からそうだと聞いていたら、私は彼女に会うのをやめていただろう。それだけじゃなくて、すれ違っても話さないように、避けるだろうことにも気づかれている。
一緒に過ごした時間が短いはずの彼女に、確信を突かれ、私を理解していることにも複雑な気持ちになったけれど、それより今は、伝えたいことが。「それでも、少し考えればわかることだわ。私がしっかりしていれば、貴女に迷惑をかけることもなかったもの。それに、私、、、貴女をちゃんと見ていなかったのよ…貴女を通して、他の人を見ていたの。そんな私が、優しいはずないわ。だから、貴女が傷ついた全てが、私の責任なのよ…」そう、懺悔して。最悪だ。これでもう、本当に、お別れ。2度と彼女とも、話すことが出来なくなる。自身を通して、違う人を思っているなんて、聞いてて気分のいいものではないでしょう。これで、私を見てくれることもなくなってしまうことが、ひどく悲しい。なんて、思っていたのに。。。
「気付いてましたよ?そんなこと、ディアナ様をしっかりみていれば、気付きますから。」そんな、驚くことを彼女はサラッと私に返して。私は目が見開いた。
「え?!……。それなら、余計にどうして、私なんかに構うの??」そう聞いてみると。
「だから、ですよ。私の様な市民を通して誰をみているのかな?って知りたくなって、ディアナ様の大切な人は、私に似ているのかな?って、興味が出てしまいました。だから、失礼にも、貴女様が私に向ける好意を利用して、貴女様を眺めることが、楽しみだったんです。だって、私も貴女様を大切に考えていますからね。」そういう彼女は、優しく、それでいてイタズラっ子のように目を細めて。「それでも、貴女様は私がただ優しいとお思いですか?」そう、諭すように返してきた。
「いいえ、貴女も良い性格なのね。少し、安心したわ。」ホッと胸を撫で下ろしたけれど、問題が解決したわけじゃなくて。「だけど、それでも貴女が受けた仕打ちは酷いものよ。私がリリィさんに掛けた迷惑が、今も続いている。それなら、これからはもう会わない方が、いいのよね。寂しいけれど、今まで、ありがとう。」そう声を掛ければ彼女は、とても怒った顔をした。
「だから、ディアナ様のせいではないんです。それに、私は困ってないですよ。確かに、こんなところまで来ないとご飯も食べるのが大変ですけど、ここだって、綺麗な花が咲いていて、綺麗なんだから、ピクニック気分でいれるので、楽しいですから。」ふんっと言い切るリリィさんは、やっぱり良い子だけど。「それでも、選択授業にも支障が出ているって聞いたわ。魔法なんて、命に危険があるじゃない。。。」「確かに、あの時は危なかったですけど、今は結果オーライですよ。だって私、あの後新しい光魔法も覚えられて、回避能力が上がったんですから!」そう、捲し立てて、力こぶを見せてくる彼女。「いえ、それは良いのかしら??むしろ、その分周りが躍起になって危険も増してないかしら?」「それが、結構この回避魔法、思った以上に高性能でして。魔法の理論から外れる分が黒いモヤで見えるので、大抵問題が起きないんです。なのでそこまで危険なことはまだ起きていないんです。それに、特待生の他のメンバーとは、適度な距離で助け合いができるようになりましたし。。。」距離を置かれ、無視をされてもめげずに話しかけていたら、絆されているみたいで、目を配ってくれるようになったそうです。思ったより、深刻な状況でもないのかしら??
「あ、それにマリー様が時折気にかけてくださったからか、選択授業で酷いことしようとする方も、大きく出られないようでした。」クラスメイトだから、って偶に周りを牽制してくれたようです。ニコニコと言う彼女に、ちょっと嫉妬しました。。。そう、ですか。それで、あんなに詳しかったんですね。そして、言い方がキツめですが、優しい人だったんですね、、、
本当に、今世では、周りが優しい人たちですね。こんな幸せ、私が感じて良いのかわからなくなります。
チャリっとネックレスが、音をたて、最近は慣れっこだった首元の重さが、久しぶりにずしりとした気がする。




