ある令嬢の確信
あの子に初めて会ったのは、彼に会いに行くため。あの子に直接会う必要も、なかった。
ただ、我が家が少し、斜陽が見えてきたから。弟も生まれて、家の跡取りが出来て安心なんてことなくて。これからの私の嫁ぎ先で全てが決まる状況が、理不尽だった。だから、交流をする必要が、出てきた。これからの爵位の維持と、嫁ぎ先の選定。ただそれだけだった。だけど彼は、優しく私を見つめてくれた。
彼の優しさに触れて、温かさに心が軽くなった。だから、私は彼と仲良くしたくて、時間を作って会いに行った。だって、彼は周りが羨む優良物件だから。
盗られたくなんて、なかった。会いに行ける関係性を保ちたかった。
でも、そんな彼はいつも、私と話していても、気にかけている子がいた。彼の妹。いつも、つまらなそうな顔をして、空をみている。どうしてかな。あの子を見る彼が諦念をもってる気がした。だけど諦めたわけでもないみたい。その瞳の奥にある気持ちはまだ熱くて。だから、私もあの子に声をかけた。良い子だった。とても、穏やかな子。何も見てないと思っていた瞳は、キチンと周りを見渡して、皆んなの求める姿を写してた。どうして?自分のことを、もっと大切にしたらいいのに。周りが何を求めるかなんて、本当のことはわからないのに。自分を蔑ろにして、後回しにする必要あるの??私が私を可愛がるように、あの子はそれをしないんだろう?そう、不思議だった。
だけどなんで彼はあの子をそんなに、真綿に包むように大切に、大切に、声をかけるの?あんなに自分を持たない空虚を求めるような子を、掬い出そうと、手を伸ばすんだろう?
興味が湧いてきた。だから、今度は、知ろうとして声をちゃんと掛けてみた。
そしたら、本当に、あったかい。彼よりずっと、暖かくて、強い芯がみえてきた。こんなに、腹黒に計算をしている私を、優しい良い子だって、思ってるみたい。表しか出してないから仕方ない。でも、本質もついてきて。強かな根性があって、かっこよくて聡明だって、褒めてきた。友だちになりたいなんて、言ってきて、ズルイ。私も、彼に優しくして欲しい。なんて、思ってて近づいたはずなのに、いつの間にか、あの子と仲良くしたくて、会いにきてた。だけど、彼を諦めたいわけでもない。彼の優しさに惹かれたのも本当だから、この2人と、もっと仲良くしたい。一緒にいたいって、思って。
そう思っていたら、私だけじゃなかった。あの子を思う人は他にも。
ああ、仲間が増えてしまった。それは、もっと高貴なお方。彼も2人を大切にし出して。私があの方よりも先に、見つけた2人なのにって、恐れ多くも、ちょっと嫉妬。それでも、仲間意識が芽生えてるから、2人を見守る会を結成。
もっと2人に会いたくなって、あの方と時間を合わせるように。2人に癒されに、心地よい時間を過ごしたくて、会いに来てしまう。あの方はあの子にちょっかいばかりかけてるみたいだけど、私だって、彼に好かれたくて頑張ってる。それでも、あの子はすっかりお友だちだから、これから私が、この子の支えになれたらって、フォローもして。もっと仲良くなった。
だけど、あの子の空虚は埋まらない。ずっと、ずっと、どこか遠くをみつめて。
そんなあの子が、目をキラキラさせて、私たちのところにやってきた。新しい、お友だちを連れて。長い、長い間、ずっとずっと、私たちには成し得なかった、瞳を感情いっぱいにして。何があの子を、こうもさせたのか。お友だちに興味が出てきたけれど、成程、今までにいないタイプ。そして貴族にはいない性格。
何事にも一生懸命、真っ直ぐな子。
こんなことに惹かれているの??私たちだって、貴女に真っ直ぐ向き合っていたのに、って嫉妬した。だけれど、きっとそうじゃない。この熱さは、穏やかなんてものではなくて、激しいもの。
これからきっと、あの子の何かが動き出す、そんな予感。きっと彼女も気が気でない、そんな焦りも見え出して、きっと、全てが狂い出す。そんな予感。




