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いいゾぉ。この小説。

作者: 野獣先輩

 汗が流れ落ちる。瓦礫に囲まれた特訓場の中央に、二人の男が立っていた。


「お前のことが好きだったんだよ!」


 唐突な叫びに、場が静まり返る。夕日が真っ赤に男の横顔を染めていた。


 それを聞いた筋肉隆々の男・コウジは、ゆっくりと振り返った。右手にはプロテインシェイカー、左手にはアイスティー。


「アイスティーしかなかったけどいいかな?」


「いいよ。こいよ」


 フッと笑って男が呟いたそのとき、背後で爆音が響く。


 ――爆発。突然の襲撃だ。何者かが建物を破壊しながら現れる。


「まずいですよ!」


 悲鳴のような叫び。空から降ってきたのは、黒ずくめの謎の集団。


 コウジが一歩踏み出す。


「暴れんなよ、暴れんなよ……興奮しちゃうだろ?」


 彼の目が燃える。腕からは湯気。限界を超えた肉体がうなる。


「いいゾ^〜これ」


「ンアッー!」


 謎の集団の一人が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。


「やりますねぇ、コウジくん」


 褒め言葉か嫌味か、相棒のシゲルがぽつりと呟く。


「ま、多少はね?」


 鼻で笑いながら、コウジが拳を構える。だが敵は多い。


 そのとき、突然シゲルが叫んだ。


「胸にかけて!胸に!」


「え? ど、どういうことだよ!?」


「もうこれわかんねえな……!」


 混乱が広がる中、敵のリーダーらしき男が前に出る。


「頭にきますよ……我が道を邪魔するとは」


「王道を征く、ってやつを見せてやるよ」


 コウジが低く構える。筋肉が唸る。拳が光る。


「……あくしろよ」


 一瞬の静寂。そして――


「いっくぞぉおおおおおお!!」


 空が裂けた。


 それが、世界を救った“茶番の拳”のはじまりだった。



感想やレビュー、いいよ!こいよ!

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