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1:俺が何をしたって言うんだ

気がつけば俺は、どんよりとした空を見つめ寝っ転がっていた。いや、寝っ転がっているなんてほのぼのとした表現をしていいのか、全身が痛い。俺の幼くか細い四肢は、慣れない山道のせいで鉛のように重くピクリとも動いてくれない。つい先程、俺は親に捨てられた。生まれたのはヴァルザレオン帝国という国のアス...何とか公爵家らしい。俺はそこの三男で、将来的には長男である兄貴の補佐的な役割をしながらアス...何とか公爵家の軍事を任される予定だったっぽい。公爵家の名前がうろ覚えなのは大目に見て欲しい。何せ屋敷の侍女がボソボソと扉の前で立ち話しているのを盗み聞きしただけなのであるから。

生まれてすぐ魔力測定をされ、魔力保有量を測る水晶が叩き出した俺の魔力量は0。何度やっても0である。母らしき人物は3回目の測定でとうとう泣き出し、父らしき人物はそのような子供は自分の子ではないと怒り狂っていた。しかしまぁ、残念なことに俺の魔力は何度測定しても、水晶を変えても0だった。それから俺は、一度も親と顔を合わせることはなかった。

そしてちょうど8歳になった一昨日、半分大人になった俺への試練と称し、凶悪な魔物の巣食う森へと放逐された...。


泣きたい。ぶっちゃけものすごく泣きたい。なぜ!?いたいけな年端もいかぬ実子を魔物の巣食う森へと捨て置き良心は痛まんのか!?そもそも、生まれてきた子供に名前すら付けないとはどういう了見だ!!!俺が本当にただの子供なら一日と経たずに死んでいただろう。何とか生き延びられているのは、俺に前世の記憶らしきものがあるからであり、決してよくあるチートスキルや主人公補正なんてものではない。大体、異世界に転生したら普通は変な空間に飛ばされて神的ななにかが俺にスキルくれたりアイテムくれたりするもんなんじゃねえのかよ!?

前世の俺は、日本に住む普通の専門学生だった。なんの専門学生かって?よく聞いてくれた。俺は調理師専門学校の学生だった。俺は某シェフの「調理師は何にでもなれる」という言葉に感動して、世界一の調理師になるべく学校に通っていただけだというのに。下校途中にヒラメを買ったのがいけなかったのかもしれない...。いや、ヒラメに罪は無い。冷静になれ、俺。死因が発泡スチロールの箱から脱走したヒラメを捕まえるため道路に飛び出したはダサすぎる。あれは俺の不注意であってヒラメのせいではない。あいつらだって生きようと必死だったのだ...多分。

「つってもなー、どうすっか...。」

なるべく魔物に見つからないように隠れて生活し続け早くも3日が経った。一応公爵家の書庫にあった植物図鑑的なものを読んでおいたおかげで、食べるものにはそれほど困っていないが栄養の偏りが凄まじい。今のところ、見た目青い桃の中身スイカみたいな植物しか食べられていない。肉なら魔物から調達出来るかもしれないが、俺にそんな度胸は無い。

「てかそもそも俺、前世では肉食えなかったんだよな。こっちでは食えるのか試してみたいが...。」

肉を食わなかったのではない、食えなかったのだ。別に貧乏だったからとか、食わず嫌いだった訳でもない。ただ、咀嚼して飲み込もうとすると、胃の内容物が込み上げてくるのだ。何度かチャレンジして分かったことは、素材が死んでいたら食べられるということ。ミンチとかは食べられるが、ステーキとか焼肉とか、そういうものが食べられないのだ。友人からは、「お前人生の半分は損してるぞ」と言われた。逆に、人生の半分を肉に支配されているお前もそれはそれでどうなんだ、と即座に言い返したのは良い思い出である。

なんとか肉を調達できないか思案していると、妙案が浮かんだ。

「...罠を作ればいいじゃないか!いや、作り方とか知らんから却下だわ。」

俺は前世、ただの学生だったし今世は公爵家の三男"だった"。魔物を引っ掛けるための罠の作り方など知るわけない。ため息をついて、休憩して少しだけ軽くなった身体を起こし再び森を歩き出した。

川の水を飲んでいて思ったが、今世の俺、割とイケメンなのでは?

水面に映った自身の顔とにらめっこしながら、1度しか見たことの無い両親の顔を思い出す。かなりおぼろげだが、まず最初に美男美女だったなぁという感想が出てくる。父親譲りの黒髪に母親譲りの紫の瞳。2人を足してかけたような顔。これで魔力もちだったならさぞ可愛がられただろうな...。

一瞬、感傷に浸りそうになったがそんなことをしている暇は無いと自分に言い聞かせて顔を洗う。そんなことよりも今は、今後の方針を考えなくてはならない。

「よし、まずは森を出て働き口を探そう...。」

なんでもお金がなければ始まらない。ということで、俺はこの森を出ていくことにした。

初めまして!私犬の下僕。と申します。ゆるゆる更新ですが飽きずに頑張ろうと思います。

次回、一応森を出て働き口を探す予定です。

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