8団長視点―2
騎士団棟を出て王宮に向かう。
案内された部屋には俺以外の人物は揃っていた。陛下をはじめ、第1王子や主要な高位貴族達だ。
王子の話によると、3人は皆白い光が舞うのが見えていると言う。2人は愛し子ではなく加護が与えられているだけかもしれないが、3人のうち1人が確実に(ミキと名乗った女が)愛し子だと言い張る。
この国の事は全く聞いた事もない。魔物などいない世界に住んでいたらしい。
「騎士団にいる娘はどうだ?白い光が見えると言っているか?」
そんな質問をされ、ハッと己の行動を思い返す。
まずい、全く話なんてしていない。話すどころか相手を気にもせず歩いてしまったな。
騎士団棟に着いた時に随分息が上がっていたような…
俺は元々愛想が良いとは言えないが…話をするほど関わる必要もないと思ってしまっていた。
「申し訳ありません。何も聞いていないです」
「そうか…
祝福の泉に異世界から偶然転移してきたのか、ウンディーネにより召喚されたのかはわからないがおそらく誰かが愛し子であろう。誰が愛し子か確定するまで3人は王宮に各自客間を与え丁重におもてなしをしろ。
この国にとって精霊の加護を受けている者は貴重だ。愛し子なら他の国の者もほしがるだろう。
4人の居場所が分からなくなるような事にはならないように。
本来なら王宮に4人一緒にいてもらいたいが、ミキ殿達は絶対に嫌だといっているらしい。そうだなカミーユ?」
「はい。目に見える範囲に居るのも嫌だそうです。出来るなら我が国から出ていってほしいくらいだと言っております」
「愛し子でなくても加護が与えられていれば国の為に役に立つ。まだはっきりしないのだ。
エルネスト卿が保護してくれた娘も王城以外に部屋を与えて最低限生活できるようにはしておいてくれ。
エルネスト卿頼んだぞ!以上、解散!」
おいおい、有無を言わさず解散宣言かよ。あれじゃ意見なんて言えないだろう!
部屋を出て廊下を歩いていると後ろから第1王子がニヤニヤと笑いながら声をかけてきた。
「お前が保護した女はかはりの問題児らしいぞ。ミキが可愛く優秀なのが気に入らないのだろうな。
あの問題児に3人は呼び出されて、殴られそうになった時に突然真っ白い光に包まれたそうだ。あの光のおかげで殴られなくて済んだといっている。せいぜい気を付けることだな」フンと鼻で嗤う。
「そうですか。心に留めておきます。ご忠告ありがとうございました。殿下」
蔑むような瞳で俺を一瞥すると、第1王子は颯爽と去っていった。
……いや、1人で3人を呼び出し殴るって本当か?
余程自分が強いと自信がなければそんな事しないだろう?
愛し子の可能性は低そうだしもし、本当にそんなに強いのなら騎士団に入団させれば良いんじゃないのか?
陛下も俺に丸投げするのは勘弁してくれ。明らかに面倒な事を押し付けたかっただけだろう。まぁ無一文で放り出さなかっただけ良かったのか。
騎士団には寮があるからそこで当分生活してもらうか。
ちなみに自己紹介は食事の前にしたからな。少しは俺だって自分の態度を反省はしてるんだよ!
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