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不快な表現あります。
早速リディさんがお茶に誘ってくれた。嬉しい。
こっちに来てから好奇の目にさらされていたせいか、普通に笑顔で接してくれるリディさんの存在がすごくありがたい。
一階の談話室へ向かいソファーに座る。
「お茶とお菓子を用意してくるから待ってて」とリディさんは二階へ向かう。
「はぁ~」
ため息がこぼれる。
精霊に力を貸してほしいと言われても、何の取り柄もなく、地味に目立たないように生活していた私に何をやれと言うのか。
精霊を手伝っても目に見える変化は無いのかもしれない、それなら人に知られず目立つ事はない?少しだけ勇気を出してみてもいいんじゃないか…?
イヤ、精霊の愛し子の美姫が喜んでやるだろう。人から称賛されるの大好きだし、目立ちたいからきっと大勢の人の前で精霊に力を貸すだろう。
王子様も美姫の事を気に入っていたから王妃様にでもなるんじゃない!
「お待たせ。もうすぐ夕食になるから軽くつまめそうなクッキーにしたわ。良かったら食べて」
「ありがとうございます。いただきます」
サクッと1口齧る。口の中でホロホロとほどけ練り込まれたドライフルーツの甘酸っぱさが口の中に広がる。
お茶を1口。見慣れた紅茶の色をしていないが紅茶だろう。爽やかな香りで口の中がさっぱりする。
今まであまり紅茶を飲まなかったから詳しくないが美味しい。
「ふう~、美味しいです」
「大変だったわね。違う世界から来たみたいだし、色々混乱しているでしょ?」
「そうですね。何が何だかさっぱりわかりません」
「どんな世界に住んでいたの?服も4人同じように見えたって聞いているわ。」
「日本という国で同じ学校のクラスメートです。突然目の前が真っ白に光って目を開けていられず、目を開けた時にはあの場所にいたんです」
「そうなのね。ご家族も心配しているでしょうね」
「両親は小さい頃に亡くなっているし、親族もいないので私が居なくなってもそんなに問題はありません」
「ごめんなさい、余計な事を聞いてしまったわね」
「いいんです。国のお金で生活して勉強させてもらっていたので不自由はしていなかったんです」
「見習うべき制度が整っていたのね。…4人一緒に来たのにあの3人とは仲良しではなかったの?」
「そうですね…仲良しかと言われると、仲良しではないですね」
「4人で一緒に来たって事はその時4人が一緒にいたか、かなり近い距離にいたのよね」
「あ~………あの時は3人に呼び出されて、文句を言われたり殴られたりしていて……3人が言うには私の出来が悪いから教育してくれているらしいのですが…」
「何よそれ!そんなの教育でも何でもないじゃない!ケガはしてない?」
「見えない場所に痣が出来る程度に殴られたりするくらいです」スカートを捲る。拳大の痣が見える。
「…悪質だわ」
「いいんです。性格も悪いし、愛想もなく可愛げもない。皆が稼いだお金で生活しているのも事実なので。それに人が集まれば誰か1人を標的に悪口言ったり虐めたりするのが人間ってやつですよね。誰かを見下したいんです。その標的になっただけです。私がいなければ他の誰かが標的になるだけです」
「…そうなのかもしれないわね。もしここでそんな事があったら私に相談して。団長も無愛想だけど頼りになるわ。これから私もできる限り力になるから!」
「ありがとうございます。こんな暗い話題になってしまってごめんなさい、せっかく美味しいお茶を飲んでいるのに」
夕食の時間まで色々話をした。
でも、嘘をついてしまった。白い光が見えるか、精霊は見えるか。
これはきっと私から話を聞くというリディさんの任務なのだろう。
愛し子ではないが見えると明かしてしまうのは平穏な生活を脅かすようで怖かったから言えなかった。
仕事でも私の声に耳を傾けてくれ、怒ってくれたリディさんに嘘をつくのは胸が痛んだ。
いつかもっと前向きになれたら話してみようかな。
お読みいただきありがとうございます。