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ああ、どうしてこうなったのだろう。
私は今、馬の上で騎士さんの前に鞄を持って横向きに座っている。
「寮までは少し遠いから馬車を用意しよう」と言われたのだか、これ以上迷惑をかけたくないと思ってしまい、歩けますと断ってしまったのだ。
すると何がどーしてこーなったのか、あっという間に馬の上に座らされてしまっていた。
こんなことなら馬車にしておけば良かった…距離が近すぎて心臓が破裂してしまう…
イケメン耐性の無い私と騎士さんの機嫌の悪さ?もあり、早くも感謝を言葉で伝えるという誓いは崩れ去った。
……ひたすら無言。気まずい。ただひたすら俯いて沈黙に耐える。
「着いたぞ」
「団長お帰りなさい」門番さんらしき人が声をかける。(団長さんだったのか)本当に何も話していない。名前すら聞いてないと気がつく。
門を潜ると三階建ての大きな建物がある。隣には廊下で繋がっているのだろう、小さい別棟が建っている。
馬から下ろしてもらい、団長さんは馬を別の騎士さんに預け歩きだす。
建物の中に入り、食堂であろう場所に通される。
女性の騎士さんが1人立ち上がり挨拶をする。
「こんにちは。第3騎士団所属のリディよ。女子寮の案内とここでの事を説明をするからついてきてね」にっこりと笑顔を向けてくれる。
「はい。レイ·ハルハラと言います。お世話になります。よろしくお願いしますリディさん」好意を感じるリディさんの笑顔に私もつい声が弾む。
リディさんは少し濃い銀のストレートの長い髪をポニーテールにしている。淡いグリーンの瞳で可愛い顔立ち。こんな可愛い人が騎士なんて信じられないくらい。ドレスの方が確実に似合うだろう。この世界、美形が多い。
「うん、よろしくねレイさん。食堂は男女一緒で、ここで食事をしてもらうわ。女子は人数が少なくてこっちの建物になるの」そう言いながら歩きだす。
団長さんに向かってペコリとお辞儀をしてからリディさんの後を追う。
ここはおそらく外から見えた小さい別棟に繋がっている廊下だろう。
別棟の1階部分は談話室のような場所なのか、ソファーとテーブルが置いてある。
「ここで女子はみんなで集まって良くお茶会のような事をしているわ。男性騎士もここまでは入って来られるの。レイさんも後でお茶しましょ!」
「はい、ありがとうございます。ぜひ誘ってください」
「あと1階には共同のお風呂とトイレ。こっちは女性騎士に必要な備品が置いてある倉庫になっているわ。部屋に荷物を置いた後でまた来ましょう」
「はい」
「部屋に案内するわ、2階へ行きましょう。今は女性騎士の人数が少なくて2人で1部屋を使うところ、1人1部屋使えるの」
ドアを開け中に入ると、二段ベッドが1つと机と椅子が2セット。2人分の収納もきちんとあり、生活するのに特に問題なさそう。考えていたよりずっと贅沢な部屋だ。
「1人で使うなんて勿体ないですね!ありがとうございます」
「それじゃ一旦荷物を置いて備品を取りに行きましょう」
「はい。お願いします」
「レイさんはこのサイズで大丈夫かしら?騎士服になってしまうけど、ごめんなさい」
リディさんは倉庫の中を忙しなく動き、必要な物を集めてくれた。
「これで大丈夫かしら?何か足りない物があったら遠慮しないで言ってね。部屋に戻りましょう」
部屋に戻り、一通りの説明を受け荷物を整える。
「ありがとうございました。あとは大丈夫です。リディさんは仕事に戻ってください」
「私の今日の仕事はこれで終わり。ねぇ、早速だけどもう少し夕食まで時間があるから良かったらお茶しながらお喋りでもしましょ!」
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