8 再びピカァッ!
とにかくこれで碇は三振に倒れてしもうたけど、チャンスはまだ続いてる。
ツーアウトランナー満塁で左の打席に立ったのは、四番の千田先輩。
千田先輩は初回に難出家念のストレートをセンターへホームランにしたけど、
その後の二打席はあのカーブに翻弄され、いずれも三振に打ち取られている。
それだけにこの打席では、あのカーブに的を絞っているやろう。
身長約百九十センチの巨体でバットを握りしめ、
マウンド上の難出家念を睨みつける千田先輩。
気の弱いピッチャーならそれだけでビビってしまいそうやけど、
その威圧を軽くいなす(・・・)ように難出家念はセットポジションに入り、
カーブに的を絞る千田先輩をあざ笑うかのごとくストレートを二球続け、
あっという間にツーストライクに追い込んだ。
そして次の第三球目。難出家念がボールを投げ込むと同時に帽子がまた宙に舞い上がり、
丸剃りの頭に日光が反射し、その光が俺達の目を襲った!
ピカァッ!
「まぶしっ!」
バシィン!
「ストラィーク!バッタァアウトォオッ!」
そして碇の時と全く同じように、主審のおっちゃんのコールが響き渡った。
これで碇と千田先輩は、狙ってやったのか偶然なのか分からない、
難出家念のピッカリ投法(俺が適当に名前付けただけ)
の前に連続三振に切って取られてしもうた。




