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ハリガネベイスボウラーズファイブ!  作者: 椎家 友妻
第四話 衝撃の事実と、山ごもりの特訓
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6 碇にも火が付いた

「昌也君」

 「あ?何やねん?」

 と言って俺が碇の方に振り返ると、

碇は今までに見た事がない程真剣な表情で口を開いた。

 「僕は、これからも昌也君と一緒にバッテリーを組みたい、

いや、それ以上に、恋人同士で居たいと思ってるんだ」

 「そうか。俺もお前とバッテリーは組みたいと思うわ。

でも、恋人同士は遠慮するわ。しかも今の時点でも恋人同士ではないからな?」

 「だけどこのまま張金高校が廃校になってしまったら、

僕は学区の関係で、恐らく御多福高校に編入する事になると思う。

だからほんの少し、遠距離恋愛になっちゃうよね」

 「お前俺の話聞いてる?

そもそも俺とお前は恋人同士ではないから、

離れ離れになっても遠距離恋愛にはならんからな?」

 「だけど僕にはそんな事耐えられない。

僕はずっと昌也君の傍に居て、二人の愛を育みたいんだ」

 「全然俺の話聞いてないよな。お前も近藤先輩みたく首絞めたろか?」

 「だから僕、今年の大会で甲子園に行けるように必死に頑張るよ!

昌也君も一緒に頑張ろうね!」

 「そこは同意するわ!甲子園に行けるように頑張るという所だけな!」

 俺がそろそろ碇に殺意を抱き始めていると、

背後に居た小暮が、頭をかきながら言った。

 「しゃあなねなぁ、正直今年の大会で甲子園に出場ってのは無謀な気もするけど、

死ぬ気でやってやるよ。俺達に残された道は、それしかねぇんだからな」

 「おぉ、小暮もやる気になってくれたか。

ちなみにお前は万が一このまま張高が無くなったら、どっちの学校へ行くんや?」

 俺の問いかけに、小暮は俺から目をそらしながらポツリと答える。

 「・・・・・・御多福高校、だよ」

 「あちゃあ~、お前も御多福高校かいな。

伊予美ちゃんといい碇といい、このままやと俺だけ仲間外れになってしまうやないか」

 俺が頭を抱えながらうめいていると、小暮は何故か急に怒り狂いながら声を荒げる。

 「こ、これだけは言っとくけどな、俺は別に、

お前と別々の高校に行くのが嫌だからって、

必死に甲子園を目指す訳じゃねぇからな!

俺はこのチームでこれからも野球を続けて行きたいから、

そうするだけなんだからな!

そこの所を勘違いするんじゃねぇぞ⁉」

 「え?お、おぉ、そんなん分かってるがな。何やねんそんなに怖い顔をしてからに」

 小暮の物凄い剣幕に、思わずたじろぐ俺。

まぁ、それだけやる気になってくれているのやからヨシとしよう。

するとそんな中、今まで床に崩れ落ちていた下積先生がやにわに立ち上がり、

小暮を(しの)ぐようなとてつもない剣幕で声を荒げた。

 「皆!絶対に甲子園に行こう!そして何としても張金高校の廃校を阻止するんだ!」

 「おぉーっ!」

 「よっしゃやるでぇっ!」

 「俺達の底力を見せてやる!」

 下積先生の言葉に、意気消沈していた他の先輩方も息を吹き返し、

拳を振り上げて立ち上がる。

このまま張金高校が廃校になってしもうたら、

下積先生も遠川監督と離れ離れになってしまうからな。

それを阻止したいという気持ちは誰にも負けへんやろう。

そしてそんな下積先生の傍らに立つ遠川監督が、ひと際鋭い口調で言った。

 「よし、皆覚悟は決まったようだな。

それじゃあ明日から大会までの約一カ月、甲子園に出場する為の特別強化合宿を行う!」

 「強化合宿って、一体何処でやるんですか?」

 俺が手を挙げて質問すると、遠川監督は不敵な笑みを浮かべて答える。

 「山だ」

 「や、山、ですか」

 「そうだ。男がここ一番の特訓をする時は、

山ごもりをすると相場が決まっているだろう?

そこで約一カ月間、命懸けで鍛えてやる。

もしかすると本当に命を落とす者も出るかもしれないが、

これも甲子園に出場する為、そして張金高校の廃校を阻止する為だ!

だから皆、私について来てくれるな⁉」

 「もちろんです!」

 「俺達、死ぬ気で遠川監督について行きます!」

 「むしろ死んでも構いません!」

 いや、死んでも構わん事は無いと思うのやけど。

とにかく、俺達の気持ちはひとつに固まった。

後は甲子園目指して突き進むのみ!

俺達張高野球部の、最初で最後の挑戦が始まるのやった!



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