3 集められた理由
さて。
そんな張高野球部のメンバー達と一通り挨拶を交わして話を聞いてみると、
やはり俺達と同じく、サングラスに黒スーツの男達に、
いきなりここへ連れて来られたとの事。
と、いう事は、この屋敷に住む遠川監督が、
何らかの理由で俺達をここに集めたのやろう。
一体何の話やろうか?
と、皆でザワザワしていると、広間の襖のひとつがガラッと開き、
そこから私服姿の遠川監督と、顧問の下積先生が現れた。
おやおや、もしかして二人は部活が休みの日にデートをしてたんですかい?
もうそんな仲になったんかいな?
と一瞬思うたけどどうやらそうではないらしく、
二人して至極深刻そうな顔をしている。
そして立ち上がって挨拶をした俺達に対し、遠川監督が先に口を開いた。
「せっかくの休みに、いきなりこんな方法で呼び出してすまない。
実は今日、張金高校で緊急の職員会議が開かれ、
そこで重大な決定が下されたので、それを今日の内に皆に知らせておこうと思ったんだ」
「重大な決定、ですか。一体、何が決まったんです?」
キャプテンが眉を潜めて尋ねると、遠川監督は
「それは下積先生の口から発表してもらう」と言い、
隣に立つ下積先生が、一歩前に出た。
そう言えば下積先生は最近全然練習に姿を見せず、
前に学校で会った時も、やたら挙動不審やった。
それは今日も同じで、下積先生は顔を真っ青にし、
視線があちこちに泳ぎまくっている。
が、下積先生は、大きく息を吸い、覚悟を決めたように口を開いた。
「皆、よく聞いて欲しい。実は、我が張金高校は、
入学する生徒の著しい減少の為、今年度限りで廃校となり、
隣町の海泉高校に、統合される事となった。
つまり、この張高野球部も、このメンバーで甲子園を目指せるのは、
今年限り(・・)という事なんだ」
・・・・・・・。
下積先生の言葉に、野球部員一同、誰一人として口を開かなかった。
広間の中は、不気味な程の静けさに包まれ、
それが、まるで終わる事のない程に長い時間に感じた。
そんな重い沈黙の中、下積先生が、再び重々しく口を開いた。
「ちなみに、これは今言う事じゃないかもしれないけど、
統合後の学校名は、張金高校の『ハリ』と、海泉高校の『セン』を合わせて、
『張泉高校』
ハリセン高校になる事が決まった。
いかにも、大阪の高校という感じだね」
ホンマに、今言う事やないですね。
うん、ホンマに、今言う事やないです。
とりあえず、このまま下積先生に喋らしとくとロクな事にならん気がしたので、
俺は手を挙げて先生に尋ねた。
「じゃあ俺達は全員、来年はそのハリセン高校の生徒になるんですか?」
それに対して下積先生は、首を横に振ってこう返す。
「いや、今の海泉高校は、張金高校と学区が少し変わるから、
ハリセン高校とは違う学校に振り分けられる生徒も多く居ると思う。
恐らく、このチームのメンバーも、半分くらいは違う学校に行く事になるんじゃないかな」
「そ、そんな、昌也君と別々の学校に行くなんて、絶対に嫌だ!」
碇が悲痛な叫び声を上げるが、それをなだめるように下積先生はこう返す。
「気持ちは分かるけど、これはもう決まった事で、どうする事もできないんだ。
受け入れるしかないんだよ」
その言葉に、傍らの遠川監督も続けて言った。
「そうだ。だから私がこのチームで監督ができるのも、
今年限りという事だ。来年はまた別の高校に行く事になるだろうからな」
「そうなんだ。そういう事なんだよぉおおおっ!」




