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ハリガネベイスボウラーズファイブ!  作者: 椎家 友妻
第四話 衝撃の事実と、山ごもりの特訓
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2 それぞれの姿

まず、ライトの手古山先輩は、私服姿で腕には点滴の針を刺し、

傍らには点滴の入った袋がぶら下がった車輪付きのスタンドを携えている。

病弱な手古山先輩は今日は病院で点滴をしていて、

そこをいきなり組員の人に連れて来られたのやろう。

ホンマにこの人は、こんなに病弱でよく野球を続けていられるなぁと不思議に思う。

それだけ野球が好きなのか、

それとも野球を続けなければいけない何かしらの理由があるのか、

よく分からんけども。

次にセンターの扇多先輩は、

今日は上下ネズミ色の作業着に身を包んでいる。

胸には『扇多引越センター』の刺繍。

確か扇多先輩のお父さんは引っ越しセンターで働いているらしいので、

扇多先輩はその手伝いをしていたのやろう。

たまの部活の休みに親の仕事の手伝いとは、何とえらいお人なんや。

ただ、両手に持っているその段ボールは、引越しの荷物なのやろうけど、

それは置いて来た方がよかったんとちゃいますか?

 次にセカンドの赤島先輩は、

家に居た所をそのまま連れて来られたらしく、

ダボッとしたパジャマ姿のままの格好で、

手にはテレビゲームのコントローラーを持っている。

恐らく家でテレビゲームをしていた所を、

いきなりここに連れて来られたのやろけど、

コントローラーは置いて来てもよかったんと違いますかい?

 次に、サードの山下先輩は、ネクタイを締めた紺のスーツ姿で、

手にはチラシの束を抱えている。

そのチラシには『山下耕次郎』という文字と、

山下先輩のお父さんと思われる中年男性の写真がデカデカと映っていた。

山下先輩のお父さんは、この張金市の市長さんで、

確か来月張金市長選挙があるらしいので、

その選挙活動の手伝いをしていたのやろう。

この人もたまの休みに親の手伝いなんてえらいなぁ。

しかもこんな状況でも他の部員や組員の人達に、

チラシを配って父親のPRをするあたり、

山下先輩にも政治家としての素質が備わっているのかもしれない。

 次にファーストの千田先輩は、ド派手な紫色のスーツに金色のサングラスをし、

頭はポマードをつけてコテコテのリーゼントヘアーで決めている。

まるで吉本新喜劇に出てくる借金取りのチンピラみたいやけど、

実際に千田先輩の家は金貸しの仕事をしているらしいので、

今日はその手伝いをしていたのかもしれない。

その迫力はこの遠川組の組員さん達に勝っても劣らず、

俺達と同じ高校生とはとても思われへん。

 次にレフトの向井先輩、ピッチャーの岩佐先輩、キャッチャーの近藤先輩は、

いつものように野球のユニフォームを着ていた。

せっかくの休みやのに、

この人達はどうやらいつものグランドで自主練をしていたらしい。

向井先輩は何でもソツなく器用にこなすイメージがあるけど、

影ではコツコツ努力を積み重ねてるんやなぁ。

それに普段は偉そうでデカイ事を言っている岩佐先輩や近藤先輩も、

見えない所でちゃんと頑張ってるんやな。

バッテリーのライバルとして、俺や碇も負けてられへんぞ。

 最後に、今日はライバル校(向こうは全くそう思ってないやろうけど)

である大京山高校の偵察に行っていたらしいキャプテンと鹿島さんやけど、

二人の服装には、男と女という以上に、大きな違いがあった。

まずキャプテンの服装は、張高の男子の夏の制服で、

半袖のカッターシャツに黒のズボンという格好や。

他校の練習を偵察しに行くのやから、まあ、それにふさわしい服装やな。

対する鹿島さんは一体どんな格好をしているのかと言うと、

花柄のワンピースに、ツバの広い帽子をかぶり、

手にはバスケットケースを持ち、いつもポニーテールにしている栗色の髪を、

今日は自然に下ろしている。

まあ、何と言うか、ライバル校の偵察と言うよりも、

バリバリに気合を入れてデートに臨む女子の格好やった。

恐らく、片想いの相手であるキャプテンと、ライバル校の偵察とはいえ、

初めて二人きりでお出かけできる事になり、物凄く気合が入ったのやろう。

きっとあの服装は、一晩悩んだ末にようやく決まった渾身のコーディネートに違いない。

そしてあのバスケットケースには、

朝早くから用意した鹿島さんの手作りお弁当が入っているのやろう。

ホンマに、キャプテンと幸せになってくださいね、鹿島さん。



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