21 一番雑に扱われる主人公と、ほくそ笑む宗太
「いったぁあああっ⁉えぇっ⁉痛い!いたぁっ!何で⁉」
俺がビンタされた頬をさすりながら抗議の声を上げると、
ビンタした男は目を血走らせながら叫んだ。
「ジタバタ抵抗したら引っぱたくと言ったろうが!」
「いやいや抵抗してませんやんか⁉俺メッチャ大人しくしてましたやんか⁉」
「つべこべ言うな!大人しく『はい』と返事をしてついてくればいいんだ!」
「はい!」
「『はい』は一回だ!」
「だから一回しか言うてませんやん⁉」
アカン、何かホッペタだけやなくて頭も痛くなってきた。
そして宗太の方をチラッと見やると、
宗太はそんな俺を見てうすら笑いを浮かべていた。
アイツどついたろか⁉
俺が理不尽な言いがかりでひどい目にあわされてんのに、
何をヘラヘラと笑っとんねん⁉
もうええわ、何か色々と疲れた。
俺はそれ以上何も言わず、大人しく車に乗り込む事にした。
すると背後から宗太が、一転して真剣な口調で声をかけて来た。
「おい昌也、この後何があろうと、
伊予美ちゃんだけは危ない目にあわせるなよ?分かってるな?」
それに対して俺は宗太の方に振り返り、
槍を突き刺すように言い返す。
「そんなもん、言われんでもわかっとるわい」
そして俺は黒スーツの男にうながされ、黒のリムジンに乗り込んだ。
その後ドアが乱暴に閉められ、外に宗太一人を残し、
リムジンはゆっくりと走り出す。
一体俺達は、これからどこへ連れて行かれるのやろう?
それは大いに気になる所ではあったけど、
今はそれよりも、さっきビンタされたホッペタがやたらと痛かった。
 




