20 碇がお嬢さんで、小暮は男の扱い
「あなたは、張高野球部のマネージャーさんですね?
あなたにも一緒に来ていただきたいので、あちらの車に乗ってください」
そう言って男が手を示す車道の脇に、
これまた立派な黒のリムジンが停められている。
あの車といいこの三人組の屈強な男達といい、
どう見てもカタギの人間には見えない。
周りには、助けを求められる人は歩いてないし、
下手に抵抗すれば、ますます危ない目にあうかもしらん。
不安げな目で俺を見詰める伊予美に、俺は
『大丈夫、いざとなれば必ず俺が伊予美ちゃんを守る!』
という想いを込めて頷いた。
すると伊予美はまだ不安な表情をしながらも、
男に案内されて黒のリムジンに乗り込んだ。
そして男は碇にも丁寧な口調でこう言った。
「あなたも張高のマネージャさんですか?
お嬢さん(・・・・)に手荒な真似はしたくないので、どうか大人しく車に乗ってください」
お嬢さんって言うたで。
あいつ、碇の事をお嬢さんって言いおったで。
それに対する碇の返事はこうやった。
「わかりました」
いや、わかりましたやあれへんがな。
お前はお嬢さんやなくて男やろがい?
何をお嬢さんの体で車に乗り込んどんねん?
しかし黒スーツの男はそんな碇が男やとは気付かず、
俺と小暮に向かって一転して荒っぽい口調になって言った。
「さあ!お前ら男ども(・・)もさっさと来るんだ!
ジタバタ抵抗するなら引っぱたくぞ!」
男どもって言うたで。
こいつ、小暮も含めて男どもって言いおったで。
ちなみにそれに対する小暮の返事はこうやった。
「言われなくても乗ってやるよ!俺がそんな脅しでビビると思うなよ!」
いや、乗ってやるよやあらへんがな。
お前は男やのうてお嬢さんやろがい?
何を男らしい態度で車に乗り込んどんねん?
ちょっとカッコええやないか。
とか思っていると、そんな小暮が女やとは気づかず、
黒スーツの男は、いきなり、俺の頬に思いっきりビンタをかました。
ぶゎっちこぉおおおん!




