19 いきなり黒スーツの男
と、前の方から碇と小暮の叫び声が聞こえた。
その声の方に咄嗟に顔を向けると、碇と小暮と宗太の前に、
黒スーツにサングラスをかけた、
いかにも怪しくて悪そうな三人の男達が立ちはだかっていた。
そして真ん中に立つ、一番屈強で顔つきも怖そうな男が、
ドスの利いた声で口を開いた。
「お前達は、張金高校の野球部員だな?」
何やあの男達は?
俺らの事を知ってるんか?
と眉をひそめる俺をよそに、小暮がひるむ事なくズイッと前に出てこう返す。
「いかにもそうだけど、あんたらは何者なんだよ?」
それに対して黒スーツの男は、特に気を悪くした様子もなく言葉を続けた。
「そんな事を説明している暇はない。今は一刻も早く俺達と一緒に来てもらおう」
すると宗太も小暮の隣に進み出て、トゲのある口調で言い返す。
「やぶから棒に現れて随分な言い草じゃねぇか。
あんたらが何者か分からねぇ以上、素直について行く義理はねぇよ」
「お前は、張金高校の野球部員ではないな?部外者に用はない。おい」
宗太の顔を覗き込んでそう言った黒スーツの男が、
傍らの黒スーツの男に目配せすると、
その男は頷いて宗太の背後の回り込み、そのまま羽交い絞めにした。
「何すんだよ⁉放せ!」
宗太はそう言って暴れるが、黒スーツの男の腕力は相当なものらしく、
宗太がいくらジタバタしてもビクともしない。
「宗太君!ど、どうしよう昌也君・・・・・・」
伊予美が俺のシャツの袖を掴みながらオロオロするが、
正直、目の前の男達をスパーン!
とやっつけられるほど、俺はマンガの主人公みたいに強い訳ではない。
それに伊予美が危険な目にあっているのなら、
命に代えても守ろうと思うけど、今襲われているのは宗太なので、
まあ、別に、最悪ボコボコにされてもええかなと思わん事もない。
と、我ながら腹黒い事を考えていると、
いつの間にか俺達の背後に現れた三人目の黒スーツの男が、
紳士的で優しい口調で伊予美に声をかけた。




