18 これだけは言っておきたい
俺の心の中で闘志が燃え上がり、居ても立っても居られんくなった。
が、その前にひとつだけ、
これだけは伊予美にどうしても言っておきたい事があったので、
俺は歩きながら、至極真剣な口調になって口を開いた。
「なぁ、伊予美ちゃん」
「は、はい、何でしょうか?」
俺の真剣な口調に気圧されたように、伊予美も改まった口調で聞き返す。
その伊予美の目をまっすぐに見詰めて俺は続けた。
「数日前、もし、張高が大阪大会を勝ち抜いて甲子園に出場する事ができたら、
伊予美ちゃん、俺のお願いをひとつ聞いてくれるって言うたやんか?」
「うん、言うたよ」
「あの時は、小暮がいらん口を挟んできたからウヤムヤになってしもうたけど、
今ここで、甲子園に出場できた時の俺のお願いを、言うといてもええかな?」
「うん、もちろん、ええよ」
伊予美がそう言うてくれたので、俺はその場で立ち止まり、
生まれて初めてというくらいに真剣な眼差しで伊予美を見詰めた。
それに対して伊予美も自然に立ち止まり、澄んだ瞳で俺を見詰め返す。
その伊予美に向かって、俺は、ゆっくりと、口を、開いた。
「もし、俺達が甲子園に出場して、
伊予美ちゃんをマネージャーとして甲子園に連れて行く事ができたら」
「うん」
「その時は・・・・・・」
「その時は?」
「その時、は・・・・・・」
「その時、は?」
『俺と、お付き合いしてください!』と、言おうとして、
緊張のあまりに声が出なくて、ひとつ咳払いをして、
改めてそう言おうとした、その時やった。
「うゎあああっ⁉」
「な、何だお前らは⁉」




