14 女装した男のようなコメント
「そ、そんな訳ねぇだろ!
こんなヒラヒラした格好、俺には全然似合ってねぇよ!
足元はスースーするし、胸元にはやたらレースが付いてるし、
これじゃあまるで俺、女の子みたいじゃねぇか!」
「女の子やろうが!何を女装した男みたいなコメントをしとんねん⁉
お前はそもそももっと女の子らしくなりたかったんやろ⁉
念願叶ってよかったやないか!」
俺は思わずそう言ったが、小暮は顔を更に赤くしてこう返す。
「ち、違う!確かにもっと女の子らしくなりたいとは思ってるけど、こういう服装は、
伊予美ちゃんみたいなちゃんとした女の子が着るから似合うんだよ!
俺みたいな男女が着ても全然似合わねぇんだよ!」
そう言って小暮はカーテンを閉めて試着室の中に隠れようとしたが、
その手を伊予美が優しく、しかしガッシリと掴み、
閉めかけたカーテンを再び開け放って言った。
「そんな事ないよ、双菜ちゃん。ね、もっと自分に自信持って。
双菜ちゃんは男女なんかやないよ。
確かにちょっとお転婆な所はあるけど(ちょっとか?)、
それが双菜ちゃんのええ所やし(そうか?)、
自己嫌悪に陥る事なんか全然ないって。ねぇ宗太君?」
「うん、普通に可愛いと思うぞ?」
伊予美に話を振られた宗太は、サラッとそう返す。
それを聞いた小暮は一層恥ずかしそうに縮こまる。
小暮の奴も普段からこれだけしおらしくしてたら、
伊予美に負けず劣らずの可愛い女の子やのになぁ。
とシミジミ思っていると、そんな俺にも伊予美は話を振って来た。
「ねぇ昌也君、双菜ちゃん可愛いよね?」
なので俺も宗太とほとんど同じ言葉でこう返した。
「うん、普通に可愛いと思うで?」
それを聞いた小暮が起こしたリアクションはこうやった。
「可愛いとか言うな!バカにしてんのか⁉ハッ倒すぞテメェ!」
「何でやねん⁉宗太と同じ事言うたのに何で俺だけハッ倒されなアカンのじゃい⁉」
俺はそう言ってブチ切れたが、小暮は更にブチ切れた様子でこう返す。
「お前に言われると、何か頭に来るんだよ!」
「えぇっ?」
どストレートなその物言いに、俺は一気に怒りの気持ちがしぼんでしもうた。
そう言えば前にもこれと似たような事があったけど、
小暮はそんなに俺の事が嫌いなのやろうか?
やっぱりあの時の事を未だに怒ってるんやろうなぁ。
でも今更取り消す事もでけへんし、一体どうすればええんや?
とか思いながら途方に暮れていると、
伊予美が「まぁまぁ」と柔らかな口調で間に割って入った。
「双菜ちゃんは照れてるんやよ。昌也君がそんなにジロジロ見るから」
「ワタシ、ソンナニ、ジロジロ、ミテナイヨ」
俺は日本に来て日の浅い外国人のような口調で抗議したが、
そんな俺に構わず、伊予美は隣の試着室に居る碇に声をかけた。




