7 どっちが男でどっちが女なのか分かりづらい二人
と、そんな中、公園の入り口の方から
「昌也くーん!お待たせーっ!」
という、聞きなれた声が聞こえたので、そっちに顔を向けると、
カジュアルな普段着姿の碇と、襟付きシャツにパンツスタイルという、
パッと見た感じ碇よりも男らしい雰囲気の小暮がやって来た。
こいつらとは張金駅で待ち合わせやったのに、何でここに現れたんや?
まぁ、どうせ碇の奴が、
『早く会いたいから来ちゃった♡』とか言うのやろうけど。
と思っていると、碇の奴は案の定こう言った。
「本当は張金駅で待ち合わせだったけど、早く会いたいから来ちゃった♡」
「やかましいわい!お前は付き合って間もない彼女か!」
そう叫びながら俺は思わず碇の頭をシバいてしもうたが、
碇はシバかれた痛みよりも
『付き合って間もない』というワードが気に入ったらしく、
嬉しそうにニコニコしながら言った。
「付き合って間もないだなんて水臭いなぁ。
僕と昌也君は付き合いの長い、心の通い合ったバッテリー(カップル)じゃないか♡」
「どこがやねん⁉心なんか通い合ってないわ!
そしてバッテリーと書いてカップルと読むのをやめろ!」
そんな事を言い合っていると、宗太が俺を、
ウジが湧いたハエを見るような目で眺めている。
やめろ。そんな目で俺を見るな。
そして俺の肩に手を置き、シミジミとした口調でこう言った。
「何がキッカケかは知らんが、お前はそっちの道に目覚めたんだな。
応援するよ」
「応援していらんわ!俺は断じてそっちの道には目覚めてない!」
俺が宗太に声を荒げると、
その宗太に気付いた碇が、目をひんむいて叫んだ。
「あーっ!何でお前がここに居るんだよ⁉
今日は僕と昌也君のカップル水入らずのデートだっていうのに!」
カップルでもないしデートでもありません。
でも何かいきなり疲れたのでツッコみません。
すると宗太は頭をかきながら碇にこう返す。
「伊予美ちゃんが誘ってくれたから、
俺もこのお出かけに参加させてもらう事になったんだよ。
何か文句あるか?」
それに対して碇は、
今にも宗太の胸ぐらに掴みかからんばかりにズイッと詰め寄って声を荒げる。
「文句があるよ!大アリだよ!
そんな事言って、スキを見て僕達を置いてけぼりにして、
昌也君をコッソリ連れ出そうとしてるんだろ!」
やめんか気持ち悪い!
俺は本能的に拒否反応が起こったが、
それは宗太も同じやったらしく、反射的にこう叫ぶ。
「んな訳ねぇだろ!それを企んでるのはお前の方だろうが!」
それに対して碇。
「いかにも!」
いかにもとちゃうわバカタレ!
ああもうアカンわ。
出かける前から頭が痛くなってきた。
せっかく伊予美とお出かけができるっちゅうのに、
これじゃあこいつらのせいで台無しやないか。
一体どうなってしまうんや?




