表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハリガネベイスボウラーズファイブ!  作者: 椎家 友妻
第三話 ウキウキデートと、黒スーツの男達
36/100

1 明日はお休み

「よぉし!今日の練習はここまでだ!」

 その週の金曜日の放課後、遠川監督のそのひと声で、

今日の練習は終了した。

その声に対して俺達張高野球部員は

「あざぁっつしたぁーっ!」と元気に返事を返したが、

今日も骨の髄までシゴキ上げられるような猛特訓のおかげで、

皆その場にヘタリ込んでゼェゼェと息を切らしている。

そんな俺達に、マネージャーである鹿島さんと伊予美が、

「お疲れ様です」と声をかけながら、

真っ白に洗濯されたタオルと、

キンキンに冷えたスポーツドリンク入りのペットボトルを手渡してくれる。

そのタオルで顔をフキフキ、

スポーツドリンクをゴクゴクあおる俺達に、

遠川監督は淡々とした口調で言った。

 「明日の土曜日は一日休みとする。

各自しっかりと休養し、明後日からの練習に備えるように。以上!」

 そして遠川監督はサッと踵を返し、

そのまま荷物を持ってグランドを去って行った。

その後ろ姿を眺めながら、俺達張高野球部員は一様にキョトンとなった。

何故なら遠川監督がこの張高野球部の監督に就任してからこっち、

休みなんてモンは一日も無く、早朝から夕方まで、

学校の授業時間以外は、常に野球の特訓を続けてきたからや。

それがいきなり何の説明もなく、明日は丸一日休みと言い残して帰って行った。

その突然で初めての出来事に、俺達野球部員はキョトンとなってしもうたのや。

 「一体どうしたってんだろうなぁ?

休むっていう言葉自体を知らなそうな遠川監督が、

いきなり説明も無しに明日丸一日休みにするなんて」と岩佐先輩。

 「もしかして、デートとか?」と近藤先輩。

 「いやいや、あの人に限ってそれは無いやろう」と扇多先輩。

 「で、でも、もしそうなら、ちょっとショックだなぁ・・・・・・」と山下先輩。

 「お前は密かに遠川監督にホの字やもんなぁ」と手古山先輩。

 「えぇっ?そ、そんな事ないよ」

 と山下先輩は両手をワタワタさせながらそう言ったが、千田先輩が

 「そんな事あるやろがい!バレバレやっちゅうに!」

 と言うと、先輩達は一様にドッと笑い、

(ただし、赤島先輩はいつもの通り無表情)

ひとしきり笑った後、キャプテンの東倉先輩が、

ガバッと立ち上がって言った。

 「さぁ!監督はああ言っていたが、

明日は監督抜きで俺達だけで自主練するぞ!

明日は六時にグランドに集合や!」

 「何ぃっ⁉せっかく監督が明日は丸一日休みだって言ってくれたのに、

何が悲しくて自主練しなくちゃなんねぇんだよ?」

 岩佐先輩が不満タラタラにそう言うが、

それを跳ね飛ばすようにキャプテンはこう続ける。

 「何甘い事言うてんねん!

俺達が甲子園を目指せる時間は限られてるんやぞ⁉

しかもウチはまだ府の大会で一回戦も突破できんような超弱小校。

そんな俺らが明日という貴重な一日を、のんびり休んでなんかいられるか!」

 「そやけどこんなドキツイ練習を毎日毎日続けられたら、正直体が持たんで」

 「何やとぉ⁉」

 手古山先輩の訴えに、キャプテンは今にも殴りかかりそうになったが、

間に向井先輩が「まあまあ」と割って入ってこう言った。

 「そう熱くなるなよ東倉。

確かに毎日のたゆまぬ努力も大切だけど、手古山の言うように、

皆相当疲れもたまってるんだよ。

だから明日は一日ゆっくり休んでリフレッシュした方が、

明後日以降の練習が、より実のあるものになるんじゃないかな?」

 「う、ま、まぁ、そりゃあそうやけどなぁ」

 向井先輩にやんわりと筋の通った事を言われ、たじろぐキャプテン。

流石向井先輩はキャプテンの扱いがうまい。

その向井先輩は続けてこう言った。

 「まあでも、筋金入りの野球バカであるお前が、

明日丸一日野球をしないなんて到底不可能だろうから、

ライバル校の偵察にでも行ったらどう?例えば大京山とか。

敵を知り、己を知れば百戦危うからずって言うだろ?」

 「なるほど!確かにそうやな!おい!

明日は大京山の偵察に行くから、お前もついて来い!」

 と、キャプテンが顔を向けて声をかけたその相手は、

少し距離を置いてキャプテンと向井先輩のやり取りを眺めていた鹿島さんやった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ