14 とりあえず明日から練習に付き合う
何か、あんな事を言っていた割に、
随分俺と宗太の扱いが違う事ないですか?
やっぱり大二郎さんも、弱小校に所属する無名な俺よりも、
大阪屈指の強豪チームに所属し、スター性のある宗太の方を、
伊予美の将来の相手にしたがっているのやろうか?
そしてその事は当の宗太も薄々感じているらしく、
今のやり取りで既に勝ち誇ったように、上から目線で俺にこう言った。
「やっぱり、大二郎さんは甲子園出場が、
伊予美ちゃんと交際をする為の絶対条件みたいだな。
それに今の時点で、
俺の方がはるかに伊予美ちゃんの将来の相手に相応しいという事も、
ちゃんと分かってらっしゃる」
「何を言うとんねん⁉
そんなんフタを開けてみんと分からんやろがい!
甲子園出場が伊予美ちゃんと付き合う絶対条件というのなら、
お望み通り甲子園に出場したるわいな!」
「フン、どうだかな。
戦う前からダメだった時の事ばかり考えているヤツに、俺は絶対に負けねぇよ」
「ああん⁉試合に出られるかどうかも危ういヤツが、偉そうな事ヌかすな!」
「何だとぉっ⁉」
「何じゃオラァッ⁉」
「グヌォオオオッ!」
「フヌァアアアッ!」
憎しみに満ちた目で、再びガンを飛ばし合う俺と宗太。
が、単純に疲れたのと腹が減ったのとで、
そのガンの飛ばし合いもすぐにグダグダになり、
宗太は自分のカバンにさっさと荷物を片付け、
「それじゃあ明日から、
ここで日が暮れるまでピッチング練習に付き合ってもらうからな。
サボらずにちゃんと来いよ」
と言い残し、俺の返事も聞かずにスタコラと去って行った。
後に一人ポツネンと残された俺は、
「何やねん、一体・・・・・・」
と呟きながら、何ともモヤモヤした気持ちに苛まれるのやった。
何か、なし崩し的に宗太の自主練に付き合わされる事になってしもうたけど、
まあ、あいつはあいつで思うように練習ができなくて、
色々と苦労しとるみたいやから、それに付き合うのも悪くないやろう。
いずれ甲子園出場の最大の壁になるであろうあいつの球を、
今のうちから研究もできるしな。
とにかく大二郎さんにも納得してもらう為には、
やっぱり甲子園に出場するしかないようや。
明日から、より気合を入れて頑張るでぇっ!




