9 昌也が駄菓子の事でゴネている状況
「そうだよ、俺の苦悩が分かったか。
そういう訳だから、明日からも自分の学校での練習が終わった後、
ここで俺のピッチング練習に付き合えよ」
「あ・・・・・・?あぁん⁉何でそういう話になんねん⁉」
「お前は今の俺の話を聞いてなかったのかよ?
要するに俺が今のチームで本来の実力を出せないのは、
お前が大京山に来ないからというのも原因のひとつなんだよ。
それならその責任を取って、夕方俺の練習に付き合うっていうのが筋だろうが?」
「どんな筋やねん⁉そんな筋も責任も俺にはないわ!」
「お前、ちょっとワガママが過ぎるんじゃねぇのか?」
「お前のワガママがな!」
「分かったよ。練習に付き合ってくれたら、チョ○バットおごってやるから」
「だから一個五十円程度のチョコレート菓子とか要らんねん!
どんだけ安く済まそうとするんじゃい⁉」
「昌也お前、俺がこんなに頭を下げて頼んでるってのに、
全然聞き入れてくれねぇんだな?
お前の男気はその程度のモンだったのかよ?」
「お前さっきから一回も頭下げてないからな!
むしろふんぞり返って偉そうにしか言うてないからな!」
「分かった分かった。じゃあチョ○バットに五円チョ○も付けてやるよ」
「だから駄菓子のお礼は要らんのじゃい!
しかもさっきからチョコレート系の駄菓子ばっかりよぉ!
俺が駄菓子の事でゴネてるみたいになっとるやないけ!」
「誰が聞いてもそう思うだろ」
「思わんわい!もうええ分かったわい!
ウチの練習が終わった後、日が出てる間だけ練習に付き合ったるわい!
そうせんとお前は後々ブチブチ文句タレるやろうしな!」
「そんな事するかよ。まあ、伊予美ちゃんには、
『昌也にピッチング練習に付き合ってくれって頼んだけど、
ツバを吐いて無愛想に断られた』って言っておくけどな」
「ヤメろや!
伊予美ちゃんの中での俺の印象がメチャメチャ悪くなってしまうやないか!
それだけはヤメてください!」
「じゃあ俺の練習に付き合うんだな?」
「さっき付き合うって言うたやないか!」
「よし、これで俺もやっと実のあるピッチング練習ができるぜ。
そして更に進化した俺のピッチングで大京山を甲子園に導いて、
伊予美ちゃんに告白するんだ」
「させるかバカタレ。
甲子園に出場するのは俺達張金高校で、伊予美ちゃんに告白するのはこの俺じゃ」
「ああん⁉俺だって言ってんだろうが!」
「俺じゃい!」
「うぬぉおおおおおっ!」
「ぐぬぁあああああっ!」
再びガンを飛ばし合う俺と宗太。
我ながらよく飽きもせずに毎度毎度イガミ合ってるなぁとは思うけど、
コイツの憎たらしい顔を見て、
耳触りな声を聞いてたら腹が立ってくるのやから仕方がない。
しかもコイツは口で言い負かそうが、喧嘩でボコボコにシバいた所で、
伊予美ちゃんを諦めるようなヤツじゃない。
野球で白黒付けん限り、コイツは伊予美ちゃんの事を絶対に諦めへん。
だからこそ俺は野球の試合でコイツを完膚なきまでにボコボコに叩きのめし、
ホンマの意味でコイツをヘコましたらなアカンのや。
覚悟せぇよコイツ!
・・・・・・・と、限界までガンを飛ばし合った所で、
俺は一旦冷静になり、前々から話合わなアカンと思うていた事を、切り出した。




