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ハリガネベイスボウラーズファイブ!  作者: 椎家 友妻
第二話 宗太の苦悩と、親父の壁
27/100

6 一応ツーシーム

「よし、そろそろ本気でいくぞ」

 そして宗太は右手でストレートのジェスチャーをして、投球動作に入った。

俺も気合を入れてミットを構える。

よく考えたら、こいつの本気の球を受けるのって、中学以来やな。

さて、高校に入ってまだ数カ月やけど、

どれくらい成長したのか見たろうやないかい。

宗太の投げ方は、上から投げ下ろすオーバースローと、

横手から投げ込むサイドスローのちょうど中間あたりから腕を繰り出す、

スリークォーターというものや。

小学生の頃はオーバースローで投げていて、

中学に入って間もなくサイドスローに変え、

中学三年の時にスリークォーターに変更して、

それがしっくりきたみたいや。

その投げ方は今でも変わらずで、そこから放たれたストレートが、

俺のミットに鋭く突き刺さった!

 バァン!

 抜群にスピンの利いた、伸びのあるストレート。

スピード自体は碇の方があるけど、打者の手元での伸びは、

碇のそれにも決してヒケを取らない。

しかも生意気にも、中学の時よりもスピードもキレも増している。

伊達に大阪屈指の強豪校で鍛えている訳ではないようや。

 「まぁまぁの球を投げるようになったやないか。

ま、ウチの碇のストレートと比べたら、特に大した事もないけどな」

 ライバル校のピッチャーを素直に誉めて調子に乗らす訳にもいかんので、

俺はそう言いながらボールを投げ返す。

対する宗太はそんな言葉を全く気にする様子もなく、

素っ気なくボールを受けると、再び投球の構えに入った。

次に出したジェスチャーはツーシーム。

右ピッチャーから見て、右側に小さく変化しながら沈むような変化球や。

右打者にとっては、(ふところ)に食い込んで詰まらされるようなボールで、

左打者からすれば、わずかに外に球がズレて、

バットの芯を外されるようなボールや。

中学の頃、カッコつけて習得しようとしとったけど、

全く変化のしないただの棒球で、しかもコントロールも不安定で、

ど真ん中に来た自称ツーシームを、よく打たれた記憶がある。

それでもこいつは性懲(しょうこ)りもなくまだ練習しとったんやな。

そう思いながら構えた俺のミットに、宗太は自称ツーシームを投げ込んだ!

そのボールは途中まではストレートと同じ軌道やったけど、

わずかにシュートしながら沈み、俺のミットに飛び込んだ。

 スパン!

 おお、ちゃんと変化するようになっとる。

しかもこれをいいコースに投げ込まれたら、なかなか厄介そうやな。

 「どうだ?ちゃんと変化するようになっただろう?」

 「そうやな、『自称(・・)ツーシーム』が、『一応(・・)ツーシーム』程度にはなったな」

 宗太の問いかけに、俺はボールと一緒にそう返す。

こいつは中学時代、ストレートとチェンジアップ、

そしてスライダーが武器のピッチャーやったけど、

スライダーとは逆に変化するこのボールを完全にモノにすれば、

投球の幅が更に広がり、相当厄介な相手になるやろう。

まあ、そんな事を言うてもこいつをつけ上がらせるだけなので、

死んでも言わんけど。

すると宗太は俺のイヤミを全く気にする様子もなく、

 「それじゃあ決め球、行くぞ」

 と言い、再び投球の構えに入った。



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