2 新婚初夜
そしてハネムーン先の熱海での楽しい一日を過ごした俺と伊予美は、
地元の旅館で寝床を共にする運びとなった。
つまり、新婚初夜というヤツや。
そこでする事といえばひとつしかない。
二人の愛を深く絡めあい、その結晶を作りだすのや。
そういう事が初めてやった俺は、内心メッチャ緊張しまくっていた。
甲子園でノーアウト満塁のピンチを迎えた時なんかとは、
比べモンにならんくらい緊張していた。
俺はその緊張を伊予美に悟られない為、
一足先に部屋の布団にもぐりこみ、
伊予美が部屋に入って来るのを待っていた。
あまりに緊張し過ぎていたせいか、
俺のバットは枯れた観葉植物のようにシナシナにしおれている。
甲子園では金属バットを振り回し、ホームランを打ちまくったけど、
自分のバットがこの有様で、
伊予美との初夜にホームランを打つ事ができるのやろうか?
そう思うと、不安と緊張で文字通り心臓が破裂しそうやった。
そんな中、部屋の襖が開いた。
伊予美が入って来たのやろう。
お風呂上がりのシャンプーのいい香りが、俺の鼻先をくすぐった。
が、それ以上に不安と緊張で今にも押しつぶされそうな俺は、
思わず布団を頭までかぶってしもうた。
すぐそこに、伊予美が居る。
しかも俺と伊予美は晴れて結婚し、正に今から、
愛の結晶をここで作ろうとしている。
大丈夫か俺?
俺はちゃんと、伊予美を快楽の頂きへと導く事が出来るんやろうか?
甲子園で全打席ホームランを打った俺やけども、
それよりも大事なこの大一番で、
バットも振れずに三振やなんてシャレにならんでホンマ。
俺がそう思いながら不安にさいなまれていると、
ススッと畳を歩く足音がしたかと思うと、
それは俺のもぐる布団の傍で止まった。
今、まさに伊予美がそこに立っている。
アカン!メッチャ緊張してるわ俺!
だけどここまで来て逃げ出す事はでけへん!
ここは腹をくくって、伊予美に男らしい所を見せるんや!
そう思い立った俺は、
ひと思いにかぶっていた布団をガバッと押しのけ、
布団の傍らに座っていた人物の顔を見詰めた!
・・・・・・そして、目を、点にした。