12 伊予美の好きな男のタイプ
「う、ウチですか?う~ん・・・・・・」
と言いながら、目をつむって唇を尖がらせる伊予美。
伊予美は考え事をする時、こうなるクセがあるので、
今から伊予美が言う言葉は、かなり本音に近いモノなのやろう。
なので俺は、試合中にピンチを迎えた時に、
打者の仕草を観察する時くらい(もしくはそれ以上)の集中力で、
伊予美の次の言葉に耳を傾けた。
ちなみに小暮も伊予美の好きな男のタイプに興味があるようで、
俺と同じくらいに真剣な表情で伊予美の次の言葉を待っている。
そんな、無駄に緊迫した状況の中、
伊予美はいつものホンワカした口調でこう言った。
「ウチはやっぱり、高校野球が大好きやから、甲子園目指して、
一生懸命ボールを追いかけている人達に、憧れるかなぁ。
あ、でもこれは、恋の『好き』とはちょっと違うんかな?
あ、あはは~」
そう言って笑う伊予美に、
小暮はまるで銃を突きつけるような鋭い口調で問いかけた。
「伊予美ちゃんは、好きな相手とかは居ないの?」
こ、こいつ、何ちゅう突っ込んだ質問をしよるんや!
ま、まさかこいつも、女の身でありながら、
密かに伊予美に恋心を抱いているんか⁉
碇と同じで、同性に恋愛感情を持ってしまうタイプの人間なんか⁉
いや、今はそれは置いといて、俺は伊予美の次の言葉に全神経を集中させた!
そんな中、伊予美は顔を赤らめる事もなく、至って軽い口調でこう答えた。
「そんなん居らんよぉ」
居らん、か。そうか。
その言葉を聞いた俺は、ホッとしたような、
ちょっぴり残念なような、何とも複雑な気持ちになった。
まあ、でも、それでええんや。
伊予美は甲子園に出場するような男が好きなのやから、
俺はただひたすらに、甲子園目指して頑張るだけや。
改めてそう心に誓っていると、伊予美は俺に向かってこう言った。




