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ハリガネベイスボウラーズファイブ!  作者: 椎家 友妻
第一話 浮かれる昌也と、怪しき下積
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5 ご褒美は手作りケーキの方向で

「随分楽しそうだけど、何の話をしてるんだい?」

 二年でレフトで、目が隠れるくらい前髪が長くて、

実はなかなかにイケメンで、

密かに女子生徒の人気を集めつつある向井(むかい)富一(とみいち)先輩が、

練習後の汗臭さなど、

微塵(みじん)も感じさせないような爽やかな笑顔で声をかけてきた。

それに対して小暮が、

 「俺達が甲子園に出る事ができたら、

伊予美ちゃんがご褒美にケーキを作ってくれるそうですよ」

 と言うと、二年でピッチャーで、

投げる球にも性格にもクセがあって、

おだてるとすぐに調子に乗る岩佐(いわさ)春秋(はるあき)先輩

(決して悪口ではなく、客観的な事実を述べているだけやで?)

が、調子に乗った様子で声を上げる。

 「何ぃっ⁉小白井さんが()の(・)()に(・)ケーキを作ってくれる⁉

それは絶対に甲子園に出場しねぇとな!」

 いや、あんた一人だけに作る訳やありませんで?

と、心の中でツッコミを入れていると、

二年でキャッチャーでズングリムックリで、

岩佐先輩のクセのある投球と性格をうまい事キャッチする近藤(こんどう)平太(へいた)先輩が、

嬉しそうにこう言った。

 「そんなご褒美があるなら、俺も断然頑張っちゃう!」

 更には二年でサードでお父さんが張金市の市長で、

小太りやけど根性があって頑張り屋の山下(やました)耕太(こうた)先輩が、

両手の拳をグッと握りながら言った。

 「僕も頑張るよ!

女の子の手作りケーキなんて、今まで食べた事がないもん!」

 おぉ、普段は大人しい山下先輩が燃えている。

そしてその背後に立つ、二年でライトで、

色白で病弱で細身で、

とても普段から野球で鍛えているようには見えないほど、

貧弱な体つきの()古山(こやま)修二(しゅうじ)先輩が口を開く。

 「小白井さんの手作りケーキを食べれば、

俺も筋肉ムキムキで屈強な体つきになれる気がする!」

 それは分からんけど、物凄いパワーが湧いて来るのは間違いないやろう。

次に、二年でセンターで、髪型がセンター分けで、

父親が引っ越しセンターに勤め、

母親が老人福祉センターで働き、

自分も将来は何らかのセンターに就職し、

センター的なポジションに就きたいと狙っている扇多阿(せんたあ)太郎(たろう)先輩が、

自慢のセンター分けの髪をかき上げながら言った。

 「ケーキを切り分ける時、最初はキッチリセンターで半分にしてくれよ!

そうせんと均等に切り分けられへんくなるからな!」

 相当どうでもいいです。

そんな中、二年でファーストで、

百九十センチ近くあるドでかい体格に、

ビシッと決まったリーゼントヘアーで、

家は金貸しをやっている千田銅次郎先輩が、

見た目通りのイカツイ声で言った。

 「よっしゃぁあっ!マネージャーがケーキを作ってくれるって言うなら、

俺らも死ぬ気で頑張らんとアカンな!」

 そうですね!

死ぬのはイヤですけどね!

すると、その傍らに(たたず)んでいた、

二年でセカンドで、無口で性格が暗くて、

普段何を考えているのか全く分からんけど、

野球の知識や理論には相当長けている

(しかし実力は劣っている)

赤島(あかしま)常彦(つねひこ)先輩が、飲食以外では滅多に開かない口を開いてこう言った。

 「小白井さんの手作りケーキ、食べたい」

 普段喋らんだけに、たまに喋ると重みがある。

そして一年でピッチャーで、

女と見間違えるほどの美少年やけど、

ガチのホモでしかも俺に惚れている松山(まつやま)(いかり)

(もちろん俺はそれを心の底から嫌がっている。イヤホンマに)

が、背後から俺に抱きつきながら言った。

 「小白井さんの手作りケーキはもちろん嬉しいけど、

僕は昌也君からも何かご褒美が欲しいな♡」

 そんな碇に俺が首投げをお見舞いしていると、

二年でショートでキャプテンで、

この張高野球部を誰よりも愛する東倉(ひがしぐら)山男(やまお)先輩が、

熱い口調で言った。

 「小白井さんがこの部のマネージャーになってくれてホンマによかったわ!

正直、マネージャーは誰がやっても同じやと思ってたけど、

やっぱりこの部の事を深く思ってくれる子にやってもらった方が、

俺達のやる気も断然アップするもんな!これからもよろしく頼むで!」

 すると伊予美は照れくさそうに目を泳がせながらこう返す。

 「は、はい、よろしくお願いします。

でも、この部を思う気持ちなら、

私よりも鹿島先輩の方がずっと深くて強いと思います」

 伊予美がそう言ってチラッと見やった視線の先に、

伊予美と同じ赤ジャージ姿の、二年で元新聞部で、

今は正式にこの部のマネージャーとなった鹿島(かしま)(しおり)さんが立っていて、

いきなり話を振られた鹿島さんは、ワタワタと両手を動かしながら言った。



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