第2話 卒業試験
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ご了承下さい┏○ペコ
3日後
中央都市【ヘルコン】北門にて
俺は8時55分ぐらいに、北門についていた。
俺が欠伸をしていると、遠くから人影が2つ見えた。
その2人が近づいてくるのを確認してから、俺は声をかけた。
「おはようございます。担当してくれる衛兵さんですか?」
「あぁ、そうだ。君が今回学園から来た生徒かな?」
魔法使いだと思われる男性に俺はそう問われた。
凄い頭が良さそうな人だな。
後ろの人は凄い大きくて強そうだし、なによりも後ろの大剣がカッコいい。
とりあえず合格の為にも、はじめの挨拶はきっちりとしないとな。
「ハイ!そうです。ヴァースと言います」
「ヴァースですね。わかりました。僕らは、Cランクパーティの獣の牙です。僕は魔法使いのシンだよ。こっちは」
「大剣使いのバルだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
因みに、衛兵たちのランクについては、どの程度の魔物までを倒せるかということが水準となっているらしい。
俺みたいに、学園の生徒から衛兵になる人は、はじめに入団試験みたいなものを軽く行われるそうだ。
軽く自己紹介を交わした俺たちは、卒業試験の為に北門から出て、最寄りの村[ネイスト]まだ向かった。
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ネイストにて
「ヴァース、取り敢えず試験についての話をする為に、村長さんの家に行こう」
俺は、シンさんから言われた言葉に軽く頷いた。
その後村長さんが住んでいる家まで3人で向かった。
「ここが、村長さんの家だ」
バルさんに言われて俺たちは村長さんの家の中にお邪魔した。
数分すると、家の奥から高齢の男性が出てきた。
「ようこそネイストにいらっしゃいました。
特に有名なものはありませんがゆっくりして行って下さい。」
「そうさせてもらいます。先自己紹介を済ませますね。
僕がシン。そこに立って居る大剣使いがバル。
そして、そこの白髪の子がヴァース君です。
今回はこのヴァース君の試験の為にこの村に寄らせて貰いました」
「そうでしたか。私は、スラーと言います。ご存知の通り、このネイストの村長をさせて貰っています」
「では試験の為に、何か指定の薬草を採取したいのですが、何かありませんか?」
「そうですね。傷薬作成の為に使用するヒール草を採取して貰いたいです。最近山の中に入った猟師達が怪我をする頻度が高くなっておりましてな。何人かの猟師は魔物に出会ったと言っておったので、ワシらでは中々山の中には入らないんですよ」
「ヒール草ですね。わかりました。山の中に魔物がいるっていう事も心に刻んでおきます」
「よろしくお願いしますぞ」
そう言って、村長さんとの会話を終え、俺達は学校の話や、冒険譚について聞きながら、山へ向かった。
「そういや、先程村長さんとの会話で喋っていたのシンさんだけでしたよね。どうしてバルさん村長さんと一言も会話を交えなかったんですか?」
「実は、バルはこう見えても他人と会話をするのに慣れてなくてね。それに巨体だから、他人から怯えられてしまうんだよ。だから、会話全般は僕が担当してるんだ」
シンさんが答えた。
バルさんも苦労してるんだ。
「シン。ヴァース。気を引き締めろ。もうそろそろ山の中腹だ。採取依頼を達成するためのヒール草があるところだ」
「了解」
バルさんの言葉に俺とシンさんは返事をした。
それから1時間ほど経ち、俺はヒール草の回収を、バルさんとシンさんは、付近の探索と俺の護衛を交代して、時間を過ごしていた。
「バル、不味いかもしれない。近くの木にオーガの爪の跡が有った。オーガが降りていたらあの街が危ない」
魔物はEランクからSランクまである。
魔王や、その直属の配下はSランクを超えている場合もあり、基本的に出会ったら、天災とまで言われるレベルの存在である。
因みに、オーガとはCランクで顔には角が生えていて大きく、力があるため、衛兵をしてる人物の中では、難関の1つとされている魔物だそうだ。
「今回の俺たちの目的は、あくまでもヴァースを守り切る事だ。対処するなら、急いで帰りヴァースを都市においてからだ」
「そうだね。先に一度村に戻って報告して、ヴァース君を安全なところに置いてから討伐しにこよう」
「いえ、俺もオーガ討伐に参加させて下さい」
俺のその言葉に2人ともが反対した。
「君が怪我を負えば、冒険者として君を守れなかった僕達の責任だ。校長先生からも頼まれてる君を危険な場所に連れて行くことは出来ない」
「シンの言う通りだ。ヴァース。俺たちはお前の力量を知らないが、オーガ討伐は俺たち2人でも厳しい。お前を守りながら討伐できるような魔物ではない」
確かに逆の立場なら俺もそういうかもしれないが、学年一位の剣技と、審査官お墨付きの火属性魔法がある。
2人のその言葉は校長先生の言葉を思い出させた。
しかし、俺は食い下がった。
「絶対に足手まといにはならないから。連れて行って下さい」
シンさんとバルさんは俺の強い意志に負け、俺を連れて行くことを許諾した。
「ただしヴァース君。危ないと思ったら君だけでも逃げなさい。これが守れないなら君を連れて行くことは出来ない」
俺は軽く頷いた。
しかし、仮に目の前でこの人たちがボロボロになっていて、俺は理性を保って逃げることができるのか……
また、そんな相手から逃げることなんて出来るのだろうか……
俺はそんなことを考えながら、オーガの爪の跡を追っている2人について行った。
3人は山をどんどん登っていきついには山頂にまで着いた。
少し経ってから下山を始めて居ると、薙ぎ倒されてる木々を発見した。
「近いぞ」
バルさんのその声に俺たちは慎重に、それでも早く、オーガが薙ぎ倒した木々に向かって行った。
一定の距離を進んだところで、俺は少し先に、2足歩行の人間とは異なった生物を発見した。
少し気味が悪かったが、なんとか剣を握りしめた。
「あれが、オーガ」
「そうだ。アイツの攻撃を俺の大剣で抑えてるから、その間にシン、お前が魔法を打ち込め。ヴァースはオーガの視界に入らない場所に移動しながら攻撃してくれ」
バルさんの言葉を聞いて俺たちはそれぞれ別々に移動した。
バルさんはオーガの前に出て大剣で攻撃を受け止め。
シンさんは木々の中を移動しながら風魔法を打ち続けていた。
俺はそんな2人の邪魔にならないように、オーガの後ろに回って剣で切りつけて居た。
俺の剣は、オーガの体に浅い傷しかつけれなかった。
たとえ、浅い傷であろうと、同じところを何回も切り続ければいつかはボロが出るはず……
俺はそう考えて、オーガの左腕を狙って剣を振り続けた。
オーガがこっちを見たのがすごく怖かったが、それでも勝つ為に、生きる為に、オーガの左腕を切り続けた。
数十回、もしかしたら百回に届くのではというところで、オーガの左手は動かなくなっていた。
そこをすかさず、バルさんが前に出てオーガの首を思いっきり飛ばした。
初めて見た、魔物の首をが飛ぶ姿はヴァースには少し衝撃的だった。
血生臭いにおいがあたりに漂って、吐きそうだった。
しかし、勝利したと言う感情の方が強かった。
「良くやった。ヴァース」
「凄かったですよ。ヴァース君」
2人はそう言って俺に近づいて、褒めた。
俺は少し照れ臭かったが、とても嬉しかった。
「少し疲れましたね。休憩してから村に戻りましょうか」
「そうするか」
そうやって俺たち3人は、ゆっくりと時間を過ごして居た。
今から村へ戻ろうとしたとき、バルさんがシンさんに向かって声をかけた
「おい、シン不味いぞ。ハイオーガがお出ましのようだ」
「ハイオーガは不味いですね。流石にこの疲弊しきった体には無茶がある。逃げ切る事も難しいですかね?」
ハイオーガとは、オーガの上位種で全身が青い魔物だ。全体的な身体能力が1段階高く、オーガと違って魔法を使用することができる、C+ランクの魔物だ。
「ヴァース君だけを逃そうにも流石に厳しいかな」
「だな。俺たち2人で時間を稼いでも結局ヴァースを追って村まで降りちまう。そうしたら村がヤベェ」
「ヴァース君。悪いけど力を貸してくれるかな」
その問いに俺はもちろんYESと答えた。
一度戦って勝った相手が少し強化されただけだ。
今までの鍛錬に比べれば、こんぐらいどうってこともない。
「さっきと同じ感覚で戦うが、アイツは魔法を使ってくる。
シン、今回もお前が攻撃の要だ。俺がアイツの攻撃を止めてるから、ヴァースはさっきと同じでアイツの体の一部を切断してくれ」
「了解」
バルさんがハイオーガの近くに出たのを確認してから、俺とシンさんも各々移動を開始した。
ハイオーガの後ろに回って、俺は剣を振り下ろしたが、ハイオーガの体には傷1つつくことが無かった。
それどころか、俺の剣に少しずつヒビが入っていった。
どんだけ振り下ろしてもハイオーガに傷は付かなかった。
「バルさん。ハイオーガの体に傷が一つもつきません……どうすれば」
「チッ、ならお前は今すぐそいつから離れろ。俺が叩く」
バルさんは一度大きく剣を振って、その巨体からは想像できないほど上に飛び、その大剣でハイオーガの片腕を切断した。
それから数秒ハイオーガとバルさんは攻撃し続けていたが、体力と体格差で、バルさんの体にハイオーガの攻撃がささり、バルさんが吹き飛んだ。
バルさんの体から赤い液体が出た。
「ッグ、シン。ヴァースを連れて村に戻れ……」
バルさんの疲弊しきった声ではシンに届か無かった。掠れきった声はハイオーガの雄叫びに掻き消された。
「よくもバルを……絶対に許さない。」
シンさんはそう言って、
中級風魔法『ウィンド・ランス』を乱発した。
シンさんの攻撃は、ハイオーガの体に刺さったが致命傷とまではいかなかった。
ハイオーガは、怒り狂いシンさんに目掛けて一直線で突進した。
それに気づいたシンさんは初級風魔法の『ウィンド・シールド』を使用して防御をしたが、呆気なく敗れ、バルさんと同様に飛ばされた。
「ヴァース君。逃げなさい……ハイオーガは一度狙った獲物は必ず殺す魔物です。ぐっ、ヘイトがこっちに向いてるうちに早く……」
「そんな、シンさんとバルさんを置いてなんか……
そんなことできるわけがない……」
俺はどうにかして、ハイオーガを倒す手段はないかと模索していた。
そのとき、ふと先日の魔術テストのことを思い出した。
自分が主要4属性のうち唯一使える火属性の魔法について。
「今から魔法でアイツを攻撃します。シンさんとバルさんを殺させるわけにはいかない」
俺はおぼろげな記憶だが、火属性魔法の中で1番カッコいいと思っていた魔法を発動した。
その魔法は、一般人には到底使えない魔法と言われていて、一級の魔術師ですら、使えない人物の方が多いとまで言われている、上級魔術だった。
「上級火属性魔法『火炎獅子』」
そう言って、俺が炎の魔法を打ち出そうとした瞬間、周りの木々が灰となった。
そして、俺が炎の魔法を打ち出すと、その炎は獅子の形となり、ハイオーガを目掛けて走り出した。
炎の獅子が叫べば、周りの草木が焼け。
炎の獅子が歩いた道は一瞬にして溶けていった。
徐々に距離を詰めて行くそれを見て、ハイオーガは逃げようとしていたが、炎を纏って走る獅子は躊躇なくハイオーガにぶつかった。
その時、大爆発が起きてハイオーガの体は崩れ去った。
フラフラとした足取りで、俺はシンさんとバルさんの元に向かった。
「やった。シンさん、バルさん。ハイオーガを倒したよ」
「よくやったね。ヴァース君。君は僕たちの命の恩人だよ。その年で上級魔法を使えるなんて、大したものだね。本当に凄いよ、君は」
「少し危なっかしいが、テストは合格だな。ゲホッ。お前には火属性魔法に素質があるみたいだな。その歳で詠唱破棄ができるなんて思いもしなかったぜ。今後とも頑張れよヴァース」
2人のその言葉を聞いて、ヴァースは倒れた。
「やっぱり、無茶してたか。俺らも持ち合わせの回復薬がなかったら今ごろ危なかっただろうな」
その言葉を聞いてヴァースの意識は手放された。
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翌朝
「うっ。ここはどこだ?」
ヴァースがそう問うのにかぶさって声が聞こえた。
「起きましたか?ヴァース君。ここは村長さんのお家ですよ。昨日のこと、覚えてますかね?」
「おはようございます。シンさん」
昨日は……確かハイオーガにあったんだっけ。
2人が殴られて、心から怒りが溢れ出たところまでは覚えているのだが。
それからの記憶があやふやだな。
ヴァースは単純に気になったことを質問した。
「ハイオーガはどうなったんですか?」
「君が倒したんですよ。僕達がハイオーガに殴られて怒った君が、炎の獅子を出してハイオーガを倒したんです。カッコ良かったですよ」
「そうだったんですか!?記憶からすっぽり抜け落ちてます……」
「あの時はお疲れだったからね。朝ご飯を食べてヘルコンに帰りましょう」
「わかりました」
「起きたか。ヴァース」
「おはようございます。バルさん」
「昨日は助かった」
「覚えてないけど良かったです」
「覚えていないのか……それは残念だな」
朝ご飯を食べ終えて、俺はたちはヘルコンに向かった。
「ついたー。お疲れ様ヴァース君。今回のことはまとめて校長先生に報告します。今日1日は休みで、明日学園に向かってくれるかな」
「わかりました」
そう言って、俺と獣の牙の2人は、北門前で分かれた。
因みに寮に帰った後、俺は疲れが溜まって居たので風呂に入ってすぐに寝た。
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翌日
校長室にて
「よく無事で帰ってきてくれたね。ヴァース君。
今回のテスト、武術魔術の攻撃性能、冷静な判断力、村の人々を守ろうという姿勢はとても良いと絶賛されて居たよ」
「有難うございます」
「しかし、他の人を守ろうとする姿勢は大事だと思うけど、今回守られる側の君が、守る側の2人を庇いに行くことは、ダメだと私は思う。
私との約束の自分の身を投げ捨てないという事も出来てないしね」
「わかりました。善処いたします」
いつも通り校長先生のダメ出しは俺の心に刺さる。
「よろしい。これにて君はこの学校を卒業することになる。これからは君は1人の生徒ではなく1人の大人として生きていかなければならない。
そして、君のことは君が決めていかなければならない。
今まで通り精進したまえ。卒業おめでとうヴァース君」
「ありがとうございます。校長先生。
後、数日シエラ達と遊んでから付近の村を回りたいと思います」
校長先生の話はいつでも心に響く。
俺は、これから1人の大人として生きていけるのか。
村を焼いたアイツに復讐することだけに意識を持って行かれないだろうか。
俺はこれらの不安を抱えながら校長室を退出した。
俺が外に出てからも校長先生の声が微かに聞こえた。
しかし、すぐに校長先生と別の人物の声が聞こえてきた。
俺は学園の不思議の1つである、校長先生が虚空と会話をしてるという内容を思い出した。
多分重要な話をしてるんだろなと思ったが、
俺には何を言ってるか聞こえなかったし、関係がないと思いすぐに立ち去った。
「あれでよかったんですか?」
「あぁ。問題無い。何回も無茶振りを聞いてもらってすまないね。校長先生」
「いえいえ、貴方方への協力は惜しみませんとも」