4:さよなら、一周目世界
リミヤとジェイドがやって来た日の後。
他のパーティの仲間にもこの件を話して……
俺たちは死に戻り決行日を決めた。
「最強パーティ、最後の大仕事だぜ! 死に戻り計画もやるなら最強でいかねえとな!」
「さっすがジェイド! さんせーい!」
「徹底的に作り込みましょう」
パーティの最年長であるジェイドがみんなをまとめてくれて、それからみんなで毎晩集まり作戦会議を重ねていったんだ。
過去に戻れたらどうやってハルノを救い、魔王の生まれない世界をつくるのか……
『最強の死に戻り計画』を目標に考えた。
過去には何も持っていけないから、計画は全て俺の頭に叩き込むしかなかった。
「A-8作戦、ジンがハルノに告白する! とか?」
「展開早くね?」
「ユーリの好みの展開にしようとしてるだけじゃない!」
「あ、ばれたっ?」
A-1作戦は、まず俺がハルノと出会ってからこういう言葉をかける。
U-54作戦は、二十歳になった時にハルノに対してこういう行動をする。
そんな具合に細かく作戦名と内容を決めていった。
「お、おお!? ついにできたんじゃねえの?」
「AU作戦! 完成!」
国から命じられた仕事もこなしながら毎晩、会議を続けてきたのだから。
体力がもう限界ぎりぎりだった。
目の下に隈をべったりはりつけ、テンションのおかしくなったみんながやったーと両手を挙げた。
「これで死に戻れるわね、ジン」
「ああ……本当にありがとうな、みんな」
そして、俺たちはついにその日を迎える。
「なぜ……なぜです!」
パーティの仲間であるミトが顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺たちに剣を向けている。
俺が教えた剣の構え方がすっかり板についた。
防御だけは右に出る者は居ないが、剣術はてんで駄目な騎士だったミト。
ミトは魔王討伐の旅で誰よりも成長した。
俺の自慢の部下だった。
「ごめんな、ミト」
ジェイドがミトを縛り上げている黒い蔦の威力をあげた。
蔦の化け物を召喚する魔法だ。
さすがのミトも、この国最高クラスの魔導士であるジェイドには手も足も及ばない。
「ジン、元気でね。私の願いも託しましたから」
「うちの願いも! 忘れないでね!」
「ああ。ありがとう、ハンナ、ユーリ」
騎士の俺とミト。
魔導士のジェイドとリミヤ。
弓使いのハンナ。
召喚士のユーリ。
この六人が、勇者一行パーティと言われているメンバー。
俺の大切な仲間たち。
今、俺たちは、死に戻り魔法の儀式を行う為の祭壇で五対一で対峙していた。
「なぜ、あなたが平和を取り戻したこの世界を、あなた自身が受け入れないのです!? みんなが願っていた世界じゃないですか!」
俺が死に戻ることに対して一人だけ反対したのは、ミトだった。
パーティで一番年下のミトがみんなにいじられながら、いつもぴーぴー泣き喚いていた光景をこんな時に思い出す。
いや、こんな時だからか。
何気ない幸せだった瞬間ばかりが今、首に剣を突き立て死のうとしているからか思い出されちまう。
「隊長、やめて、やめてください……なんで……っ」
ミトは仲間たちを、この世界を愛していた。
せっかくみんなで手に入れた平和な世界を自ら壊そうとする俺たちを心底、理解できない様子だった。
「今度は魔王を倒すんじゃなく、魔王の生まれない世界を俺はつくる」
「魔王の、生まれない世界……」
ハルノ。
ハルノはなぜ魔王にならなければならなかったのか?
なぜ俺に殺されたのか?
仮初の平和は捨て、俺が次の世界でこそ全ての原因を排除する。
そして今度は必ずお前を守ってやる。
「いくわよ、ジン!」
リミヤの声が聞こえてくる。
みんなの準備は終わったらしい。
「みんな、また絶対に会おうな」
みんなのことも必ずまた俺は見つけ出して、守ってみせる。
「約束ですからね!」
「ジン一行は、永久に不滅!」
「ハルノを絶対にあんたが幸せにするのよ!」
それから眩い白い光に包み込まれ、俺は、意識を手放した。
……これが死に戻り前の、みんなとの最後の会話だ。
この世界は崩壊したのか?
俺が死んだだけで続いていってるのか?
この後のことを俺は知らない。
永遠に知ることもできない。
第一章 終
次回から、死に戻り世界での新生活スタート!
鍵となるパーティ一人目の仲間も一章に登場!
あと、たまーにゆる解説後書き(裏設定話的な)が入る話がありますのでよろしくお願い致します。
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