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1:倒した魔王は、初恋の幼馴染でした

チート勇者が、元の世界と死に戻り世界、二つのパーティの仲間と協力しながら

幼馴染や、元の世界では悲惨な運命だった仲間の幸せを取り戻していく話です。


真のラスボスを探しつつ、元の世界では裁かれなかった悪人たちを倒したり更生させたり……


目指すは全伏線回収…!





「お前たちは気づいていない。自分たちが、何と戦っているのかと」


 これが魔王の最後の言葉だった。

 この言葉の意味を、俺は今もまだ探し続けてる。







「やったな、ジン!」

「ついに……倒したぞー!!」

「国に帰れるーっ!」


 仲間たちの喜ぶ声が遠くなっていく。

 『とある可能性』に気づいてしまった。

 それは俺にとって最も残酷で、永久に明けない夜の始まりのような。

 そんな可能性だ。

 こんなことがあって良い訳がない。

 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 俺の意識は、みるみる黒く塗り潰されていく。


「ジン?」


 俺の肩に手を置いた仲間の声に、意識を掬い取られる。

 込み上げてくる吐き気を抑えようと口元を覆った。

 どんな敵を前にしてもこんなことなかったのに……。

 震えが止まらないんだ。


「な、なんだお前? ついに魔王を殺ったからって、感動泣きしてんのかぁ!?」


 違う。

 そうじゃない。


 魔王……魔王じゃ、ないんだ。


「こいつの首をとって国に帰ろうぜ。ほら、どんな面してんだ?」


 立ち尽くす俺の横を通り抜けると、仲間たちもその姿を見て息を呑んだ。


「!! 嘘でしょ……こんなのって」


 それから口元を抑え、震える声でその名を呼んだのだった。


「ハルノ?」


 魔王の、漆黒の鋼の鎧と仮面の下。

 そこから出てきたのは、かつて死んだはずの幼馴染だった。

 彼女の冷たくなった白い頬に、ぽたりと涙が落ちた。


「あ、あぁぁああ……あああああああ!」


 彼女の肩を抱きかかえながら、俺は天を見上げて泣き叫んだ。








 この世界には、『災厄』と呼ばれる、SSS級クラスのモンスターが数年に一度は現れる。

 『災厄』を討伐した者は『勇者』の称号を国から与えられる。

 一方、天上界から『災厄』を地上に産み落としているとされる諸悪の根源。

 それを人々は『魔王』と呼んだ。


 長く謎に包まれていた魔王の存在や居場所について解き明かされ、討伐隊の召集が進んだのはここ数年の話。

 俺の率いるパーティは中でも最強と名高く、国の本命部隊の一つだった。






〝う、ううう……〟

〝また泣いてんのかハルノ? って好きだなその本〟

〝ジン……! 何度読んでもめちゃくちゃ感動するよこれ! やっぱり私が勇者になって、ジンを将来守ってあげる!〟

〝やっぱりってなんだよ。勇者好きの女なんて本当、珍しい奴だな。ほら、ハンカチ〟

〝……ずびっ〟







 ハルノが好きだった物語のめでたしめでたしの優しい世界。

 そんな世界は、どこにもなかった。


 これは勇者になりたがっていた彼女が魔王となり、そんな彼女を殺した俺が勇者になった物語。


 魔王が世界を包んでいた闇が晴れ、眩しいぐらいの白い朝焼けが広がっていく。

 世界の夜は明け魔王との戦争は終わり、俺の終わることのない夜が始まった。


 誰もが求めていた平穏な世界の幕開けの下。

 俺は大切な子をまた失った。










 ……でも、これで終わりじゃない。

 これは、魔王を倒して終わる物語ではない。

 魔王を倒してから始まる物語なのだから。


「ハルノ、俺と結婚してくれないか」

「……ん、んん? だ、誰と、誰が?」

「俺とお前がだよ」

「え、え、えええええええ!?」


 ハルノは青い空を切り取ったような瞳を揺らがせ、顔を真っ赤にして俺を見た。

 いつも強気なくせに、ちょっとしたことで大きく動揺したり照れたりする。


 今もその場に居ることが恥ずかしいように、ハルノは手を握ってくる俺から視線を逸らそうする。

 だから俺はまた少し震えてるその手を、さらに強く握った。


 今度は、絶対に死なせない。

 そんでもって。









「ひ、ひいいい! お、お許しください!」

「悪魔だ……! 悪魔が居る!」


 お前が魔王化する原因に関わった全ての奴を、俺が制裁する。

 ハルノを絶対にもう修羅の道に進ませはしない。


「あ、とりあえず歯食いしばっといてください。少しでも楽になると思うんで」

「ぎゃ……ぎゃああぁぁぁああ!」


 二度と悪さしたいと思わねえようにな!!





 これは俺と、最強で最高の仲間たちの贈る、死に戻り物語である。






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