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現代読書の夕部

作者: KWGJ9

「ええ、そうなんですよ、はい。」

何の意味もなく、しかし、言わねば相手にいらぬ邪推の種にされてしまう。そんな、現代に蔓延る呪われた言葉を言いながら、四角い何の面白みもない板切れに話しかけている。

そんな、石斧を振り回している古代や脳にチップを埋め込んだ未来では、気が触れたと思われるであろう姿で、無駄に高度な中身が詰め込まれている機械にぺらぺらと何の内容もない言葉を投げかけているのが僕です。

ぺらぺらは言い過ぎました。ボソボソが関の山でしょうね。


「ええ、では。」

心なしか最後の『では』だけ元気が良かったかも。

手からぽいと、放り出した時には話の内容など覚えていません、覚える内容がないのですから。

何の役にも立たないが、持っていないと社会に殺される。これは、ある意味呪いのアイテムに違いない。

そんな事を思って、ニヤリとしてみたりしますが、反社会的な気持ちを現実世界に出力した結果として持っているものを粉々に砕いたりするほどの感情は持ち合わせていません。

おっと、もう手には持っていませんでしたね。

椅子に座り直して、机の上のボトルを開けて、できるだけ長いものを選んで噛みます。そんなことをしているので、最後は底に残った破片みたいなスルメを食べる事になるのです。分かっています。でも、長いのが食べたいので仕方のない事です。


「あれ?」

何時もあるべきところに物がないのは自分の整理整頓能力の無さを恥じるべきですが、そんなことは知った事ではないので、脳内教師にはサヨナラします。

眉間にしわ寄せたり、下唇を無駄に動かしたりしながら。椅子を鳴らして、体を一周させます。


ない。

こういう時は大体お手洗いです。身を起こす勢いで立ち上がって数歩すすめば、目的地です。猫の額とはこういう事でしょうか。今度、辞書で確認しておきます。

ドアを開けると、予想通り、水洗便器のタンクの上に別の板があります。ふと思いましたが、ここ数十年は板の時代かもしれません。何でもかんでも、ボタンが3つ4つ付いただけの板切れを大金でやり取りして、大半の人類がそれを持っているのですから。

これが、たった数十年さかのぼるだけで四角い鏡を眺め続けるナルシストか何かに見えるだろうことは想像に難くないわけです。もしかすると、カード型のラジオかプレイヤーに見えるかもしれませんが、そうだとしたら買ったばかりの機械を眺めてる変な奴で、大して評価は変わらないでしょう。


さてはて。

まあ、そんなことはどうでもよい事で、こいつは電子書籍専用の電子情報端末なる、時代の最先端アイテム。

世は電子書籍の時代です。電子書籍なら欲しい時に買えて、何百冊と持ち歩けて、何度読んでも痛まず、メモ書きだって容量の許す限りいくらでもできます。いくら紙の本に慣れ親しんでいようとも、パッと目的のページを開けるとしても、重みで床が抜けそうになる紙の本に戻る必要性を感じません。電子書籍万歳。


「本棚が沢山おける頑丈で広い家が欲しい。」

昨日読んでいた本表紙の画像に指で触れて、その画像が画面いっぱいに大きくなります。その間に、移動しつつ背中から寝床に倒れます。

木がきしむ音がしましたが、いつもの事ですぐに音のことなど頭から消えます。背中を寝床に向けた瞬間、チラリと見えた視界から、今日は更に便所の扉を閉め忘れた事に気づいてしまいましたが、どうせ自分以外誰もいないので次用事が出来たら閉める事に決めました。

そんな事を考えている間に、画面から画像が消えて文字列に置き換わる。


自分で図書館開くのはどれくらいお金が掛かるのだろう。

そんな疑問は、続きの行がどこか考え始めた脳味噌から邪魔な情報として消えていくのが定めだ。

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