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 30s   作者: リョウゴ
帰国子女と異界騎士
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レベルアップ



「……騒ぐな……頭に響く……」


 担任が頭を抑えて椅子に座る。


 湯沢ミアスは騒がしくなった教室に微塵も動じた様子もない。


「先生、私の席はどこですか?」


「あー。あそこの空いた席に」


 窓際一番後ろの角の机を指した。結構辛そうにしているが、本当に何かあったんだろうか。


「それと、今週の実戦は。喜べ特別授業だぞ」


 一応顔だけ上げて担任はそう言った。そして寝た。


 本当に大丈夫か??




「特別授業って結局何だろうな」


「さあ? 多分転校生絡みだろうけど」


 そう言って俺は視線を教室の角に向ける。湯沢の席は女子に囲まれていた。俺も名字が日本語だとか、どのくらい強いのかが気になったが、さすがにあの中を通って聞きに行くほど気になっているわけでもなかった。


「そもそもこの時期に転校生って言うのは妙だよね」


「そりゃあ妙だけどさ」


 事情の説明を一切しなかった担任。もしかしたらわざわざしなかったのかもしれない、と俺は何も知らない体で話す。全く関係ない同時期の転校生って可能性も無いとは言えないし。あ、でも留学生って言い掛けてたような。


 そう思ってレインを……依田に送る。識杏に送るのもありではあるが、この話は依田が俺に知らせたものだし、何より今朝の依田には違和感があった気がする。


『本当に転校生が来た』


『どんな人?』


「それと何で刀持ってるんだろ」


「さあ?」


 田倉の疑問に答える言葉は俺は持たない。本人に聞けって感じだ。


「……聞いてみる?」


「止めた方がいいんじゃない? たぶん……」


 まともな理由じゃない。会話を区切ろうとしたところで、丁度良く鼓膜を破らん限りの大きな声が響く。


「──ガハハハハハ!!」


「──確かにこれは気分が良い!!」


「うるっさい!! 鼓膜破れるって!!」


 相楽と五月雨は言葉通り気分上々と言った様子で、腕輪を俺達二人に翳してきた。


「レベルが上がった!」


 へぇ。


「ガハハハ!!」


 そうか。


「それは良かった、じゃあ俺くらいかな、レベルが1なのは……レベル3すら出たらしいのにな……」


「そうなのか?」


「ああ。どうも居るらしいよ? レベル3」


 ……それってもしかしてそこの席でいつも通り机に突っ伏してる秦野じゃないよな? よく分からない武器の使い方をしていたし、そうだとしたら説明が付くような。


「すごいな。どうなるんだろ。と言うか二人はどうなったんだ?」


 視線を筋肉コンビに戻す。二人は笑顔だ。レベル上昇して、きっと何か良いことがあったんだろう。


 俺の時は葉刃を飛ばせるようになったし、何かしらの強化が有るのだろう。


「俺のは武器の本数が増えた!」


「ガハハ!!」


「牧男の武器は重くなったな!!」


 相楽の言う武器の本数が増えたと言うのは、どうやら腕輪からあのどでかい金棒を二本取り出せるようになったということらしい。壊してしまったり投げ飛ばしてしまったりしたときのリスクの軽減だろう。


 五月雨のは、単純に重くなったらしい。本人からすれば変わらないという事らしいので、本人だけ重さを感じない特殊な武器なのかもしれない。そうは言ってもかなり重いらしいが。


 強くはなったが、やはりそれは多少と言うことだろうか。レベル3になったら段違いとかそう言うことはないだろうか。あったらいいな。


「そっか。試し斬りとかした?」


「いいや、まだだ」


 五月雨も相楽と一緒に首を横に振る。


「だとすると実戦が特別授業なのがなんか惜しいな」


「だな」


 田倉はそう言ってレベル上昇用の機械に歩いていく。


 そして沈んだ面持ちで帰ってきた。


 俺はもう一度レインを確認する。ある程度の容姿を依田に送っていたので、それに対しての返信が返されてきていた。


『フラグたてるなよ??』


 フラグ??




「特別授業って言ったな。内容を説明する」


 第11屋外訓練場。ステージはなにもない、シンプルだった。担任は俺達を整列させて話し始めた。その傍らには湯沢がやはり帯刀したまま立っていた。


「こいつと試合しろ。以上」


 とても簡潔な特別授業だった。当然よく分からないから騒ぎ始める。


 試合形式は? ルールは? 1対1?


 試合をしないという発想がないあたり1ヶ月でこの高校に染まったんだなあと思うところだ。


「あの。私もみんなの実力が分からないからどうすればいいのか分からない」


 湯沢は刀を引き抜いて正眼に構える。それを見て担任は軽々と場外の観客席に飛び移った。


「湯沢ミアス。職業(クラス)サムライ───」


 目を閉じた湯沢の気配が一変する。練気のような何かを彼女に感じ、背筋が凍る。


 やばいのが、来る!!


 盾が堅そうな奴は誰だった? 相楽か?


「相楽!! デカい盾でみんなを庇ってくれ!!」


「……!! 応よ、ォォ!!」


 たっぷり三秒の集中だった。俺の様子に何か伝わったのか皆が相楽の後ろに駆け寄る。相楽の左手に装着されるように生み出された大きな盾の後ろに俺も行く。


「───《クサナギレンザン》」


 ──そして盾の先で、サムライの刃が煌めいた。

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