表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 30s   作者: リョウゴ
万物支配の王と邪神教本
6/98

剣と盾、それから弾を



「さて、これから実戦授業と言うものについて説明する」


 担任が真面目な顔でそう言った。


 現在第五屋外訓練場にクラス全員が高校ジャージ姿で集合していた。この高校は屋内外と大量に訓練場があるし、迷子に成りかねないな。


「まずはこれを配っておく」


 そう言って担任はずっと置いてあったダンボール箱を開けてそこからスマホくらいの大きさの機械を──ってあれ、まんまそれだ。


 渡されたそれを見てみても、間違いない。


「それは当日実戦授業の相手と訓練場、その時間を通達する物だ。相手の指定も無論出来る。クラス番号が若い順に指定が生きるが、一度戦った相手とは一週間は戦えない」


 続けて担任は電源を付けて見ろ、と言う。


「今週の相手は既に仕組まれている。そこで確認しろ」


 電源ボタンしか外にいじれるボタンが無い。唯一のボタンを押すと電源は付いた。


「ルール、か。降参か場外で負け、武器の類は持ち込み禁止、制限時間10分で時間切れ。時間切れならば引き分けだ」


 実戦授業───言うなれば、学生同士の能力組み手、と言うことだろうか。敗北条件が緩い気がする。


「当然降参も場外もしなければ負けはない、が、死にかければストップがかかるから安心しろ。それで、単位条件は一学期は4勝。対7組だけは一勝するだけで条件達成だ。まあ、他のクラスの条件はもっと厳しい」


「………そもそも勝つの無理じゃないですか?」


 誰かが聞いた。サングラスを掛けた男だった。日差しは弱いけど、大丈夫なのかそれ。名前は確か田倉(たくら)洋希(ようき)


「そうだな。そのために今日はここに来ている」


 そのためと言うことは何かしてくれるのだ。多分悪い話ではない。


「その年で未覚醒と言うのは殆どいない。たいていこの場にいるのは物好きか、扱いに困る能力を持ってしまった能力者だけだろう? もしくは本当に未覚醒能力者か。物の持ち込みは禁止な以上無手で相手を場外にまで叩き出す必要がある。見て貰えば分かるだろうが、広い」


 周りを見ると円形に線が書いてある。直径五十メートル位か。


「まぁ、基本的に降参させればいい。誰であれ痛みは嫌いだ。だが、まあ。そもそも接近すら出来ない相手の方が多いがな」


 担任は、ポケットから腕輪を取り出した。


「これは異世界から持ち込んだ魔法具を量産したものだ、擬似魔法を使うために必要だ。これは0組だけに配布される、数少ない特権だ」


 配られる。黒ずんだ腕輪は手が通らないほどの大きさのリングだった。


 それを左手に強引に通そうとするとほんの少し伸びた。材質がよくわからないが、手首までは通すことが出来た。


「ガハハッ!!」


「いや通るものだな!! 牧男も俺も通らないものだと思ってたがな!!」


 五月雨(さみだれ)牧男(まきお)相楽(さがら)田楽(でんがく)だ。2人とも巨漢で、たぶん俺の腕の太さの倍近く有るんじゃないか。筋肉で。


 あと牧男はなんかずっと笑っててよくわからん。田楽には話が通じるみたいだが。


 担任は全員が腕輪をはめたことを確認してから口を開く。


「特殊な材質で出来ている。外すことは出来ない」


 クラス全員がざわめく。まあ、わざとはめてから言ったということはしないと困るんだろう。


「……分からなくもないが、外す手段はこちらにはある。外したいというのであれば、もう二度とそれは手に入れられないが。量産したものであれ、貴重だからな」


 ちょっとだけ反感を覚えたし周りはまだ騒がしいが、この腕輪の取り扱いが分かるまではまだ何ともいえない。俺の考えとしてはそんなとこだが。


「静まれ! ……そもそも同調に時間がかかるのだ。外せないようにしないと付ける度に使えなくなるのだ」


「先生、で、この腕輪は何が出来るんですか!?」


「個人によって異なる武器、盾、魔弾が出せるようになる物だ。まぁ、魔弾は体力の消耗が激しいがな」


 ───この日はこの後うだうだと文句言う0組に集団走させて授業は終わった。






「で、これどう思うよ?」


 腕輪を見せるようにして話しかけてきたのはサングラスの、田倉。


「どう、って。何も出来ないよりもマシだろと」


「ガハハ」


「それだけでは危ういかもしれないが、この肉体があれば問題など存在しない。そうだな牧男ッ!!」


 肩を組む巨漢二人。


「……中身によるよなぁ、武器って個人差有るんだろ? 良い武器なら良いんだけど」


「そういや結城って武術習ってたんだろ? そう言う点から見て対能力者ってどんな感じだ?」


 言うとおり武術を習っていた。小さい頃から受験勉強を始めるまでの間にかなり道場でも実力は上の方に成っていたと思う。ちなみに依田の実家の道場で俺は習っていた。ルールが能力使用可能であれば当然依田には勝てなかった。


「7組相手だったら無理だろ。そりゃ俺みたいなのは殴る蹴る投げる極めるってのは相手より出来るけど、接触タイプの攻撃能力には無理。死ぬしかない」


「そう言うものか? 案外あっさり認めるんだな」


「でも運が良ければ月一回位ずつ勝つのは出来るだろ。多分それくらいがちょうど良いと判断されたんだろ」


 週三回実戦がある。まぁ、そんな感じだよね。無能力者がそう簡単にスカウトまでされた能力を持った人間に勝てる訳ないのだ。


 俺としては負ける気などないが圧、倒的な能力差というのはそこに存在する。


 それが理不尽なルールな気がして成らない。


「まぁ、だいたいみんな素人だから、今気にしたところでしょうがないね」


 田倉がそう言った。全く以てその通りだな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ