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 30s   作者: リョウゴ
万魔剣製と遊園地蹂躙
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強がりと楽天家



「周り人居ないね、ダメじゃない? こういう逃げ方。確かにさ、考えてること分からなくもないけどさ」


 藍逆が幾つかの装備を携えてやってきた。紫野は白衣の前をしっかり締めていて、ゴーグルをくい、と上げた。溶接するときに火花が目に入らないように装着する眼鏡だ。


「巻き込まないように、か? それは殊勝な考えだ。それを押し通す力があればな。しかし、無いだろう? であればそのような考えは捨てろ。ふっ」


 紫野が俺達に向けてそう言ったが、最後に『私良いこと言ってやったぜ』みたいに笑ったのでちょっとムカついた。


「それに素材も居合わせていた能力者のお蔭で腐るほど貰えたからな! 今の私には──」


「紫野ちゃん。そういうの良いから始めるよ? あ、結城君達は隙を見て逃げてね? 私たち、というか紫野ちゃんが結構荒っぽい事するみたいだから気をつけてね」


 心の底から心配するように藍逆が忠告する。


 俺が優先すべきは識杏の安全だ。言われなくても当然、ここから目立たないように逃げる準備をする。


「藍逆、君もやるんだぞ?」


「あー、はいはい。分かりましたよ、っとね」


 そう言って藍逆は背負っていた装備の一つ。大きな箱を地面に落とす。


 箱は16の長い角筒が正方形に纏められた物であり、中身は──


「そのミサイルの制御、他何もかも私がやる。藍逆は出来る最大限であの魔獣共を処理してくれ」


「凄いよね、一つの意識に纏まってるんだっけ?」


「人工精霊一つであの魔獣の意識を乗っ取っているのだと。私の人工精霊よりも高性能というのは気に食わんが」


「はいはい、一つに纏まってるっていう認識で間違ってないならそれで良いよ。呪う対象が一つで良いなんて楽勝すぎる」


 そう言って装備の一つの銃身の長い銃を構えた藍逆は遠巻きに見ていた魔獣に向けて引き金を引いた。


「そろそろ照準をあの鎧に合わせたいのだが」


「待ってよ」


 放たれた銃弾に当たった魔獣は心臓を貫かれて一瞬で絶命した。


 銃をおろさない藍逆。何かあるのかとよく見れば銃の先にワイヤーが伸びている。銃弾の弾道に沿うようにあることから先ほどの銃弾に仕掛けられた機構だろう。勢いよくワイヤーが銃に吸い込まれると先端に刺さる魔獣も宙を舞い藍逆へと飛んでいく。


「すぐ終わるし」


 懐から短剣を取り出した。飛んでくる魔獣の亡骸目掛けてそれを突き刺した。


「──心病め"心鬱の呪詛"」


「終わったな!? 吹き飛べ16×4ミサイルー!!!」


 ガシャ、と機械音が鳴り響き爆炎と煙を撒き散らしながら連続して発射される弾頭。


 おそらくここだろう。逃げるのならば。


「止水君、向こう」


「分かった」


 辺り一帯が煙に包まれる中、俺は識杏の指示通りに駆け出した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「行ったね」


 短剣をポケットにしまう。血に濡れた短剣には既に呪いの触媒としての役割を終えて、もう一度行うのであれば長い仕込みをしなければいけない。


 "心鬱の呪詛"。それは心を落とす呪い。一つの意識で操るのであれば一体に掛けただけで管轄下全ての魔獣の精神を弱らせる毒になるだろう。


 人に掛けたら、小さい理由で鬱病になるような強力な呪いである。こういう呪いがあるから恐れられるんだろうけど、強い呪いは恐ろしく使用条件が厳しいのである。


「役に立ったであろう? 私の能力は」


「そうだね、首を掻き切って自殺した時に使用された短剣、なんてもの早々手には入らないし」


 錬金能力には念が乗らないから、呪いの役には立たない。そう聞いていた藍逆にとってはまるで想定外の事だったのだが、この短剣は紫野が用意した物だ。


『怨念? なるほど、用意するから待ってくれ。恐らくは出来る』


 むむむ、と可愛らしい唸りを上げながら、実際に用意した短剣を藍逆が手にした時にこの短剣はすでに使えると確信できる状態だった。


 紫野のイメージ通りのものを錬金する能力によって。なのだろうが、そんなことが出来てしまうなんて恐ろしいものだと藍逆は思った。


「普通の錬金能力では無理なんだけどなぁ」


「何、これでふつうではない錬金能力だという証明になったな!! ふはははは!!」


「魔獣の動きが鈍ったから効いてる、ありがとね紫野ちゃん」


「……以前から少し気になっていたのだが何故、ちゃん付けなのだ?」


「何でも良いでしょ、黒い鎧、こっち来るよ? 適当に壁になっとかないと多分すぐ結城君のところ行きそうだよね」


「当然、行かせるつもりなどないし、生け捕りにするぞ?」


 ミサイルによって爆炎が所々上がる中、黒鎧が二人へと突進を仕掛ける。


「私気絶すると多分魔獣が元気を取り戻すから私下がってるね?」


「構わん!」


 まずは拘束だと、紫野は持ち前の錬金速度を生かしてコンクリートを棘状に当てようとする。が、黒鎧はそれをすり抜ける。


「って何かすり抜けてくるんだが!?」


「あれ、言い忘れてた。すり抜けるよ?」


「先に教えてくれないか!?」


 紫野の眼前に迫る黒鎧。それを藍逆は渡されていた装備の一つのロケットランチャーで撃ち抜く。それもすり抜けるのは分かっている。


「く……ぬ…っ!」


 紫野は地面ごと動かすことでその場から離れる。慣性によってバランスを崩さないように手摺りまで錬成しつつ藍逆の隣まで引き下がった紫野は、藍逆に文句を言う。


「アレでは生け捕り出来ないではないか!!」


「都合良くすり抜けない素材で雁字搦めにすれば大丈夫じゃない?」


「無茶を言うな!! 私あの鎧と出会うの初めてなんだぞ!? そう易々と分かる素材だと思うなよ!?」


「私だって二回目だよ!!」


 戦闘慣れしていない二人であった。何故か余裕があるように見えるのは、藍逆は単に中身が間抜けだったことを覚えているからなのと、紫野は単に強がりである。


 紫野は内心手元が狂って死ぬ恐怖で戦々恐々している。


 一人だったら間違いなく逃げていた。立ち向かう理由なんて実際の所生け捕りなんて言うものじゃない。いや、確かにあの機構がどうなっているのか気になる。透過能力なんて血が騒ぐようなカッコいい能力、気にならない訳がないが。


 結局のところ。紫野茉美はわざわざあの男を助けに来た、だから逃げるわけにはいかない。ただそれだけだった


「……下らない、な」


「そうだね。くだらない口論なんてしてないであの黒い鎧を何とかしないと……」


 紫野は自嘲するように笑う。そうだ、何とかしなくてはならない。


「取り敢えず攻撃を当て続ければいつか当たるだろう!! よし、藍逆も邪魔だ!! 私もひたすら逃げ惑おうじゃないか!!」


「そんな宣言されても全くかっこよくないよ!?」


 紫野を円形に囲う手摺りに藍逆は掴まり重りになりそうな装備を幾つも投げ捨てる。


『標的変更』


 背中の黒い大剣を引き抜いた黒鎧。投擲する。


「投げっ!?」


「当たるつもりなどないぞ!!」


 阻むようにコンクリートが盛り上がる。剣はすり抜けず、しかし、壁になったコンクリートをものともせず砕いて二人の元に襲いかかる。


「盾っ!!」


「補強するぞ!!」


 藍逆が腕輪から盾を出し、紫野が寄せ集めたコンクリートで補強する。


「なんかすっごい反動くる!!」


「変質……硬化……」


 コンクリートが変質する。何に変わったかは藍逆には分からない。が、脆い盾がまだ砕けていないという点で強化できていることだけは理解している。


 さらにカーブする事で盾の角度の変化も相まって何とか別方向へと剣を受け流す。


「どうするの? 追いかけっこ?」


「馬鹿言うな逃げるだけではどうしようもない。藍逆は一度撃退したんだな?」


「中身にお願いしただけだからね、その時は──」


 悠長に構える藍逆とは別に切羽詰まった様子で、周りをしっかり把握できている紫野は叫ぶ。


「伏せろ!!」


「っあぶなぁ!!」


 体を斜めにしながら曲がる。伏せた後ろを黒鎧が突進する。慌てて藍逆は霧の剣を振るうが、そこはもう通り過ぎた後であった。


「取ったか!?」


「無理!! 完全に隙を突かれた……」


「そうか、逃げるか!?」


「まだ、やってみる!!」


「そうだな! 余裕がある内に撤退したいからなる早で頼むぞ!!」


「分かったよ!!」

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