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 30s   作者: リョウゴ
万魔剣製と遊園地蹂躙
37/98

俗に言うアレ



 ……よし。


「あら止水? どこ行くの?」


「友達遊びに行ってくる、って言ってなかったっけ?」


「友達、っていうと香織ちゃんか?」


「違うよ……つか俺に依田以外の友達が居ないと思ってない?」


「「思ってないよ?」」


 父と母も身支度を済ませているようだが、流石に同時に家を出ると行き先が同じであることがバレてしまう。いや、どうせバレるような気はしているが、最低限の抵抗として俺は予定の時間よりも早く家を出るのだ。


「行ってきます」


「「いってらっしゃーい」」


 さてと。緊張してきた……。




 文明は発達した──なんて言ってもそれを実感するのはほんの一部の公共機関だけ。例えば今乗っているバスだとかは昔から変わらない。


 変わったことと言えば資源の問題は錬金能力で粗方何とかなった、と言う事だけであろう。もっとも自然環境に干渉し続ける力が強い能力と言われるだけある。


 ………暇だ。朝早くと言うのにそこそこ人の乗っているバスに俺は嘆息した。そりゃあ、このバスは直接遊園地前までいけるバスで、今日は祝日だ。混むのも分からなくはない。


 俺はバスの一番後ろに乗った特権を生かして、暇潰しに他の客を見る。


 鏡を見ながら猛烈に髪を手直ししている女性が居た。折角手持ち無沙汰だし、観察でもしてようか。


 押さえつけても髪が跳ねるのを止められないようであり、かなり必死さが見て取れた。やっぱり失礼だ、見るのは止めよう。


 バスの外は、そこそこ見たことのある風景が流れていく。ただ、たまにしか来ない方面だから、新しい発見もある。


 あんな所にスーパー出来てたんだ、とか。あそこの靴屋潰れてるや、とか。そんな小さいようなそうでないような発見だ。


 まあ、なんか機会が有れば行ってみようかな。みたいな事を流れる風景を見ながら考えて暇な時間を凌いだ。


 因みに髪の毛と格闘する女性は、未だに激闘を繰り広げていた。




「あ、やべ。早く来すぎた」


 バスを降りて少し歩く。見れば待ち合わせ一時間前。開園直後には既に遊園地に着いていた。早め早めの行動だったが、早すぎたのではないか? と少し考えてしまい


「あ、止水君! おはよー!!」


 ──遊園地の入り口から手を振る天使が目に入り、心臓が止まった。


 天使が、いや識杏が手を振って笑顔で駆け寄ってくる。あ、ダメです可愛すぎてしぬ。


「さいこう」


「な、なにが?」


 っとあぶねぇ口に出すところだった。いや出てたな。


 というか、落ち着け。さっきまで俺は平然としてたじゃないか。そう、冷静に。冷静に。識杏が不振がってるじゃないか。


「えっと、服装。似合ってる」


 顔は見れない。と言うかもう直視も出来ない。と言うかどういう服着ていても識杏には似合うと思う。


 白のワンピースだった。うん。


「ありがと、香織ちゃんが選んでくれたの」


「そうなのか?」


「うん。止水は無駄に凝っても分からんから適当で良いーって小一時間相談した後だったからちょっと意味分からなかったけど」


 ふー………ん? 俺はそう言う風に見られているのかね。まあ、今はそれはおいといて。


「ちょっと早いけど行くか?」


「うん!」


 こうして二人きりで遊園地に足を踏み入れた。と言うかこれ、もしかして俗に言うデートというやつなのでは?


 デートと言うやつなのでは???




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「やっぱ居たよ。バレるかと思って冷や冷やした……」


 依田香織は遊園地園内のベンチに寄りかかって溜め息を吐いた。君等二人揃いも揃って一時間前行動かよ、と吐き捨てながら。


 言いつつ自分もしっかり来ていることは完全に無視していた。


 とは言え、依田はその事を予測はしていた。伊達に二人を見てきたわけではない。だからこちらの集合も早めにしたのだが。


「まぁ、識杏は目立つし、どうとでもなるか」


 流石に、一時間前は早いかと思っていた依田の想定により、まだ集まっていなかった。30分前行動とか出来ないのだろうか。


 暇な依田は未だゆっくり歩いているからか見える範囲にいる結城と夕張を見ていた。そこそこ遠いが目が良いので見えるのだ。


「……まぁ。想定通りだ」


 どっちも緊張してまともに動けないようだ。いや、表面上は平然に見えるかも知れないが、多分二人とも頭が真っ白だろう。


 ……あの様子では動きは当分無いか。一時間も前に来ているのだから、今から依田がサポートするのは『見ているぞ』とアピールする事に他ならない。


 呟いたとおり思ってたのと同じなのだが、お互いに好き合っているのだ。見ている方としてはムカついてしょうがない。


「───あの……すいません?」


「…………む?」


 意識が二人に集中しているところでそれを遮る控えめな声が聞こえた。依田に対する声掛けだった。


 依田は聞き覚えのある声を聞いて、声の主を見る。


「えっと、お一人様?」


 女性だった。依田よりも年上らしいが、同世代と聞いても納得してしまうような。


「そう、ではなくて待ち合わせなのです。ええ、ごめんなさい」


「そっ………かぁ。やっぱり一人で来てないか……独りで回るのって目立つよね」


「ええ、まぁ。見てのとおり、家族での来客が多いですし、一人で来るような施設では無いですからね」


 依田は仮面を必死に付けて応対した。なぜ、ここに一人で来ているんだ……と思いながら。


「下調べに来たは良いけど……あ、ゴメンナサイ、変でしたよね? 土壇場で一人で回るのが怖くなっちゃって」


「そうですか、せっかく来たのですから楽しまないと損ですよ?」


「はい、分かってるんですけど……分かってください」


 ──そのとき、素知らぬ顔を貫き通せた自分を手放しに誉めたい、と後から依田は思った。


 何故なら、今依田の目の前にいる女性は──


「ははは……」


 独身新人教師の綾田 深凪(みなぎ)だからだ。そう、一組担任の綾田先生だ。


 独身女性が下調べと言った。依田は、その意味を勘繰りながらとぼとぼと歩いていく様を見ていた。


 少なくとも遊園地に一人で来ていることは知られたくないだろうな、と思いつつ。


「はぁ」


 他人の弱みを握るのは嫌いでは無いがこれほど要らない弱みはなかった、と依田はため息を吐いた。


 今回ノリノリだったのだが、一気に乗り気が消滅した。

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