回復能力の実情
回復系の能力者っていうとどう言うのを想像しただろうか。
触れた相手を瞬時に回復させる? それとも免疫などを上昇させる? いやそもそも触れずとも人を癒す?
そう、全部居る。強弱の限界も人それぞれで。
「いってぇ……」
「ふふ、何か掴めたかい?」
回復能力者によって回復して貰った後に依田は聞いてきた。
「いや掴めたけどさ……」
「殆ど治ってないね……痛そう」
識杏が言った。制服は冬服で長袖なのだが彼女には分かったのだろう。識杏に視えないものは何もないのだから、体内に残った内出血の類は治して貰えなかったのだ。
「回復能力者の不手際?」
とても不機嫌そうに依田は言った。珍しいくらいだった。まぁ、不手際と言うかなんというか。
「まぁそうかもな。回復能力者ってこの高校かなりの数抱えてるからまあ、当たり外れ有るんじゃないか? 確か 跡見とか言ったかな、あの人触れられる傷以外を治すのには時間が掛かるんだってよ」
どうやらこの時期は回復能力者は暇らしい。そして、怪我も基本は軽微なものらしく保健室には教師と一年生が数人居るだけだった。
興味深いことにサポート方面のクラスである1~3組は実戦が免除される代わりに能力の方向性に合った事をするらしい。放課後を圧迫されることもあるようだ。
全部傷を見てから若干涙目になった、俺を回復してくれた跡見に聞いた話である。ちなみに女性だ。
そして七組にも実戦免除されている生徒は居ることには居る。まあ、殆どは戦えると判断されたのか免除されていないが。
識杏とか。
「いや、でもさ。死ぬかと思ったんだけど」
終盤ほぼ虐めだった。動けないくらいに連打してくるのはおかしいでしょ依田?
骨が折れてないのが奇跡なくらい血塗れになってたから。そのせいで保健室に居た学生全員引いてたから。先生に指定された跡見さんマジ泣き寸前だったから。
「……いや、興が乗って」
「香織、気をつけてよ? 私は人殺しと友達とか、嫌だよ?」
「ぐ……大丈夫だから」
いや、本当にそこんとこ頼みますよ?
因みにぼろぼろになったジャージはなんかそれを復活させられる人がいるらしいので、その人に渡されるらしいです。お金の節約? になるかもしれない。
「と言うかこれ以上は治癒しようもないらしいぞ。俺、一応死にかけだったらしいし、無茶の部類にはいるんだとよ」
「そうかい」
「でも、本当に痛そう」
「平気平気、こう言うのは耐性が付いてるからね。うん」
識杏を安心させるために言ってはみたが、実際痛いものは痛いのである。平然としているのはそれこそ慣れからなのだ。
実際想像してしまうのか、識杏は俺を見なかった。
「ただいまー」
玄関のドアを開けて帰ってきた。俺である。
「あら、お帰り止水。……何だかぼろぼろね」
「あー、痛い。今日依田がさ」
「あら香織ちゃんの愛の鞭ね? 何やらかしたの??」
「………いや、ちょっと能力者と1対1で戦うことになって。識杏に強引に迫ってたからそいつにちょっと」
「あの高校。そう……思い出した! そうね、確かにそう言うことになるわね」
どうやら母はあの高校の内情を知っていたらしい……。まあ、忘れていたのだから、知らなかったも同然だろうが。
覚えていても止めたりはしなかっただろう。その事だけは何となく分かる。
「下手すると殺されるから対策を依田が立てて、その依田が俺をぼっこぼこに」
「愛の鞭ね」
「どう考えても違うだろ!? お陰で体中が痛いのなんのって……」
「止水。あなた、ほんの少しブレーキの効かないところあるから、あの子はそう言うところが心配なのよ」
「……いや、あの高校に在籍できるレベルの能力者相手に手加減できるわけ無いでしょ」
あの高校は一応全国から優秀な戦争に応用できる能力者を選別してかき集めているのだ。そりゃあ、侮ったらこっちが危ない。
しかしそんな事を知っているのか知らないのか、母は笑ったまま金属化した手で芋を潰しながら。
「あなたの実力からすれば手加減できるのよ。しないと、壊れちゃう」
ついでに母はじゃが芋を丸いまま握りつぶした。
「さぁ、今日はポテトサラダよ。あの人喜んでくれるかな」
……今日も、の間違いだ。でも実際ほぼ毎日でも父が本当に喜ぶのだから、どうでも良いか。俺も嫌いじゃないし。




