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 30s   作者: リョウゴ
前日譚
1/98

前日譚1


 ───超能力。



 それは元来人に備わっているはずのない異質の力。



 しかし、ある日突然その力は全ての人に、まるで予兆もなくもう一つの異変とともに、この地球に追加されていた。



 ある人は空を飛び、ある人は炎を操り、ある人は稲妻を生んだ。全地球人類一人一人が突如降って湧いた能力を操れるようになっていた。



 中には使えない人も居たようではあるが、そう言う人たちは基本弱すぎる能力だったか、扱いの難しい能力、もしくは能力を操るのがド下手だったかのいずれかであった。



 どんなものであれ、一人1つの能力に突如目覚めたのである。そんな事が起きれば、何らかの問題が起きてしまうのは必然だった。



 そして起きた問題は──地球人類同士の衝突などではなかった。



 先程敢えて"地球人類"といったのはつまり地球外の人類が発見されたからである。もしかして遠き宇宙からUFOでやってきた宇宙人──などではない。



 突如地球に空いた数々の穴から現れ出てきた──────異世界人、である。



 ※世界中に空いた数々の穴、その最初の一つが『原初の陥穽』と呼ばれているが、今回は措いておく。



 彼等とは当然話は通じない。生活の形態も技術も当然差違がある。そして何より彼等、穴の向こうの異世界人類は、魔法を使ったのである。少なくとも地球人類はそう認識する科学的な種も仕掛けもないマジックを。



 そして、当時の人類は超能力という謎の力があった。そして、今でもまだ謎な力であるが、それを振るうに何も呵責が生まれない相手が現れた。



 ──そうして今、大規模な戦争に発展している国はそう言った小競り合いを止められなかった、もしくは止めなかった国である。



 しかし日本はそうはならなかった、何故ならば日本地域に繋がった穴からは人だけでなく、摩訶不思議な獣が現れたからである。人同士大きな衝突はなく、他の国からすれば比較的穏便に─────





「──────って何書いてあるかと思えば、こんなの常識じゃないかよ」


 そう言って、頬杖を突きながら俺は読んでいた分厚い本を閉じる。足の高いテーブルを押すように椅子から立ち上がり、母親にその本を突き返した。この本は母が貸したのだ。なんていうか、中身はつまらないものだった。


「そうねぇ」 


「まあ、穏便だけど散発する小競り合いみたいなのはあるのも知ってるよ」


「向こう側も一枚岩じゃ無いからねぇ。あ、そうそう、何回か向こう側行ったことあるのだけれど、景色、結構綺麗なのよね」


「父さんと一緒に武装組織潰しながらデートした話はもう良いよ……」


 うんざりしながら言うと、母はにこにこしながら台所に向かう。


「あらぁ? そう? まだまだ話し足りないのだけれど」


「さいで」


 にっこにこと、母は笑顔で話す。本当に父のことを好きなのだ、未だ熱々で止めなければ延々と惚気ている。


「……それで、高校は受かったの?」


「受かったよ。まぁ、あれだけ勉強すれば受からない方がおかしいと思いたいよ……」


「そう? 頻繁に(ウチ)に通ってくれた香織ちゃんに感謝しないとね?」


 ドカンと金属化した手で豪快にポテトをマッシュしながら母は言った。


「あー、うん。そうする。明日から神のように崇めるわ」


「香織ちゃんも同じ学校なんでしょ? うふふ、楽しみ?」


「あいつスカウト枠じゃないかよ。俺とクラス違う」


 だいたい俺はクラスゼロ枠だしな、と呟いた。俺が通おうとしている、と言うか受験で受かった高校はかなり特殊な私立高校だ。普通の進学校ではない癖にやたら一般受験枠の偏差値は高い。


 実際、試験問題に積分とか出て来て"中学生に解かせる中身じゃねぇだろ!?"と何度思ったか。


 まあ、実のところわざわざあの高校に入りたがる物好きなど、そういないので余り出来なくても入れるらしいことは後で知った。依田のヤロウ、煽りやがってからに………。


「あら、違うの? てっきり…」


「俺が入ったのは一般受験枠で、依田とかし──夕張さんとかは推薦枠。と言うか八クラスあって一クラスしか一般受験枠無いんだぜあの高校」


「納詫高校、だっけ?」


「そうそう、確かそんな変な名前」


「どっかで聞いたことがあるってずーっと思ってたんだけどぜーんぜん思い出せなーい」


「別にいいんじゃない。大したことじゃないだろ」


「確か軍属だったときに聞いた覚えが、あるような、ないような」


 ほわほわした声音と叩き付ける手の音だけ聞こえる。軍属だったときに聞いた、と言うのならやはりその手の高校として名があるのだろう。異世界に対する武力としての軍に居たときに聞くぐらいならば。


 まあ、このときの俺はそのぼんやりとした母らしい忠告にならない言葉を流していたのだが。


「へー」


 こんな反応するくらいどうでも良いと思ってました。


 大体俺、結城止水は高校の選択をとある同級生が半強制的に決まったのを聞いて追っかけていくように受験したのだから。


 なーんにも、考えてなかったのだ。その高校がどんな環境なのか。その高校の一般受験枠にどんな人間が集まるのか。そして────




 ───能力差が、どんな環境を生み出すのかを。



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