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鬼ぼんじゅーる編21

 春門はるかどの部屋で寝た朝。

 僕は小鳥の歌うような鳴き声で目が覚めた。いつもより遅い朝だ。

 思った以上に熟睡していた。

 まありっちゃんが朝早いからいつもは一緒に目が覚めるからね。遅かったのはりっちゃんがいないせいだ。ぷんぷん。

 隣にいるテディベアをそのままに僕はベッドから飛び降りて毛並みを整えた後、部屋から出た。

 気配によるとりっちゃんはもう走りに行っていて雪門ゆきかどは自分の部屋で朝の準備をしているようだ。

 だから僕は階段で下に降りてキッチンにいるお母さんの手伝いをするべく、リビングへ向かった。


 今朝はタイのお吸い物に、ほうれん草とゴマの和え物、人参のオレンジの彩りが入っただし巻き卵、里芋の煮っ転がしだった。美味しそうな匂いが肺を満たす。

 僕はテーブルを拭いたり里芋の煮っ転がしをレンジでチンしたりと自分のできる範囲で手伝っていると、お母さんに卵焼きを焼いてみないかと誘われた。

 僕は面白そうだからすぐに尻尾を振って頷いて、お母さんのアドバイス通りに妖力でフライパンと箸を操り、初めてだし巻き卵を焼いてみた。


「見てても思ったけど、難しいですね」

「ふふっ、大丈夫よ。初めてなのに上手だわ」


 うーん、そうなのだろうか。形も悪く結構不格好だけど。

 でもお母さんが手解きしてくれたおかげで、焦げとかは無事防がれた。味つけはお母さんだから相当な化学変化がない限り味は悪くないだろう。

 こうして僕が焼いた卵焼きが食卓に上がった。



「おはよう、モフフくん」

「おはよう、雪門ゆきかどお兄さん」


 リビングにやってきた雪門ゆきかどと挨拶をして雪門ゆきかどはさっそく食卓に着いた。

 そして料理を見てから僕へ笑顔を向けた。


「今日はモフフくんが卵焼き作ったの?」


 なぜ、バレた。

 いやそりゃお母さんみたいに完璧な卵焼きには程遠かったからバレるよね。


「うん。焼いただけだけど」

「上手に焼けてるね。いただきます」


 雪門ゆきかどは早速卵焼きを一切れ食べた。

 それにちょっとそわそわする。そういえば料理を誰かに食べさせたのは初めてだ。

 昔面倒を見ていた子にも出来合いのものとか妖怪そのままとかしかあげたことなかったし。なんていっても僕は野生児だからね。

 師匠のところで食事をするときは普通に下僕が作った食事を貰っていたけど。

 卵焼きを食べた雪門ゆきかどは微笑んだ。


「焼き加減もよくて美味しいよ。作ってくれてありがとうね、モフフくん」

「なら良かったけど。僕はお母さんが用意してくれたの焼いただけだから特に何もしてないし」

「家族が料理を作ってくれるのはそれだけで嬉しいことだよ」


 と本当に嬉しそうに雪門ゆきかどは言うから照れてしまう。

 少し、料理できるようにしてみようかな。

 ここで暮らすなら食べてくれる人もいるし。お母さんの役に立てるかもだし。


雪門ゆきかどお兄さんが喜んでくれて良かった」


 僕がそういうと雪門ゆきかどは照れたように目を細めた。


 雪門ゆきかどが食事を終え出て行ったタイミングでりっちゃんはリビングに現れた。

 昨日の夜ぶりだ。元気そうで何より。


「モフフ、おはよう。昨日は何もしなかったか?」

「おはよう、りっちゃん。当たり前さ。僕はあの後ぐっすりと寝たもの」


 りっちゃんに答えると、りっちゃんは怪しむように視ながらもテーブルの席に着いた。

 そして「いただきます」と礼儀正しく言ってご飯を食べていると、ふと箸が止まった。


「今日は卵焼き、お前が作ったのか?」

「おうよ。焼いただけだから毒は入っていないから安心してね」


 やはりりっちゃんにもバレた。まあ分かりやすいものね。

 りっちゃんは少し箸を止めたけど、動かすと卵焼きを一つ取って口に入れた。


「モフフは料理するのか?」

「ううん。料理らしい料理は今日が初めてだったよ」

「初めて……」

「こんなに可愛いけど僕は狐だからね。美味しくなかった?」

「いや、初めてなら上手いんじゃないのか。器用だな」


 これは、りっちゃんに誉められた。嬉しいな。

 雪門ゆきかども誉めてくれたし。思わず尻尾が振れる。

 余ったらチーにも持って行こうかな。

 と思っていたらりっちゃんは半分残っていた卵焼きを完食してくれた。

 そしてご馳走様と僕にまで言ってくれると洗い物をして、二階に行くので僕も追いかけた。


「りっちゃん、昨日僕がいなくて寂しくなかった?」

「別に。ただ何かしでかさないか不安だったけど」

「心配症だな、りっちゃんは。昨日も言ったけど春門はるかどお兄さんに迷惑かけるようなこと僕しないし」


 僕は少し寂しかったのに、りっちゃんはそんなことを心配していたのか。そろそろそれくらい信用してくれても良いと思う。


「心配になるからモフフ、なるべくは俺の部屋にいろ」

「え?」

「お前がいないと不安で仕方ない」


 りっちゃんは無愛想に言いながらも頬が赤い。

 ただの無愛想だけだったら少し寂しかっただろうけど、照れているから少しはりっちゃんも寂しく思ってくれたのかなと期待してしまう。


「うん、じゃあ一週間に一度くらいにするよ。僕もりっちゃんがいなくて寂しかったし。だからクマのぬいぐるみと寝たよ」

「クマ?」

「うん。春門はるかどお兄さんの部屋にあったけど。茶色いテディベア」

「昔兄さんがクレーンゲームで取ったテディベアかな」

「クレーンゲームで?」

「俺が小学生の時、兄弟三人でゲームセンターに行って春門はるかど兄さんが取ってたと思う。それかもな」


 兄弟でゲームセンターか。仲良いな。いいなあ。

 けど、それがなんで布団の中にあったのかな。さすがに空気読んで布団の中にあったと伝えるのはよしておく。


「りっちゃんもクレーンゲームのぬいぐるみ持ってるものね」


 僕は話を切り替えて、りっちゃんが部屋の扉を開け入るのを追った。

 やっぱりりっちゃんの部屋の方が落ち着く感じ。


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