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鬼ぼんじゅーる編20

「りっちゃん!」

「なんだよ」

「呼んだだけ!」

「……」


 夜ちょうどお風呂上がりのりっちゃんの足音を聞きつけて、僕は和室から廊下に出てりっちゃんの足元をくるくる回りながらりっちゃんにそう言うと。りっちゃんは無言で自分の部屋へと向かったので僕はりっちゃんに付いて行った。りっちゃんはもう部屋に行くらしい。

 そして二階に上がったところで僕は満を持して話した。


「あっ、そうだ。今日は僕 春門はるかどお兄さんの部屋で寝るね」

「……はあ?どうしていきなり」

「だって毎日りっちゃんのお布団にお邪魔するのはそろそろ卒業しようかと思って、これからは二日に一回……いや、五日に一回は春門はるかどお兄さんの部屋で寝ようかなって。春門はるかどお兄さんから許可ももらったし」


 前、春門はるかどに自由に使って良いって感じのこと言われたから遠慮なく使わせて貰おうと思う。

 一人で寝るの寂しいけど、五日に一回……いや、一週間に一回なら大丈夫だろう。どんどん頻度減ってるって?気のせいだ。

 いつも一緒に寝るのは悪いし。今のところ文句は言われていないけど、たまにはりっちゃんだって一人でいたい時もあるだろう。たまには譲歩してあげないと。

 そう伝えた僕をりっちゃんは思うところがあるように見下ろす。


「りっちゃん、そんなに僕がいないのは寂しいの?」

「そう言うと思ったからすぐに認めてやろうと思ったけど。春門はるかど兄さんに悪いなと思ったから頷けなかっただけだ」

「うん、知ってる」


 僕としては残念だけど、りっちゃんからしたらまあそうだよね。

 りっちゃんは他の兄弟と違って分かりやすいからある程度なら何考えてるか察することができるようになったし。一緒にいる時間も長いしね。


「大丈夫だよ。僕はちゃんと良い子で寝てるし。部屋を漁ってもちゃんと片付けるし」

「そもそも漁るな」

「はいはい」

「はいは一回」


 もう、りっちゃんたら心配症。なんやかんや僕はりっちゃんの部屋でも良い子だったじゃないか。むしろお片付けも手伝ったし、必要な物とか手渡したり有能な狐だったし。

 僕はりっちゃんの足元にすり寄る。


「ちゃんと良い子にするよ。僕も春門はるかどお兄さんに嫌われたくないからね。おやすみりっちゃん。また明日」


 そう言ってから、僕は廊下の奥にある春門はるかどの部屋へ向かった。長く話してもりっちゃんは春門はるかどに遠慮して頷くこともなさそうだからの強行突破だ。

 部屋に入るまでにりっちゃんからおやすみの返事は無かった。


 入った春門はるかどの部屋は色の少ない質素な部屋だった。都会の別宅へ持って行っているのかもだけど余計な物がない。

 棚に並んだ本は漫画も入っているけど、真面目そうな本ばかりだった。歴史物が好きなのかな。それ系が多い。

 ベッドに上ってみる。ベッドは藍色でまとめてあり、いつ帰って来ても良いように布団はたまにお母さんが干しているからふかふかだ。春門はるかどの匂いが薄ら残っていて落ち着く。

 僕は特に何もせずに布団の中に潜り込んだ。


「……ん?」


 布団の奥に何かあった。

 僕はそれを口にくわえて出してみると、それはふわふわな茶色いテディベアのぬいぐるみだった。

 春門はるかどのものだろうか。

 僕の頭にテディベアを抱きしめて眠る春門はるかどが思い浮かんだ。まあしなさそうだけど似合わなくはないけど。

 いや昔から抱きしめて寝ているにしてはこのテディベアは綺麗だからそういう訳でもないだろうけど。というかこのぬいぐるみを抱きしめてじゃないと眠れないとかなら取りに来るか、それともお母さんに送ってと頼むだろうし。

 ……謎だ。

 僕はそのテディベアを前足でツツいてみて、せっかくなので横に置いて一緒に眠ることにした。ぬいぐるみでも何かと一緒なのは落ち着く。

 りっちゃんは一人で寂しくないかな。寂しくないか。今まで一人で寝ていたわけだし。

 りっちゃんの部屋にもクレーンゲームで取ったらしいぬいぐるみがいくつかあったから、もしかしたら今夜は一緒に寝ていたりして。それくらいなら僕が一緒に寝たいけど。そのぬいぐるみ、羨ましい。

 とうつらうつら考えていたらいつの間にか眠っていた。

 明日も楽しいことがあるといいなあ。


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