狐ぼんじゅーる編6
僕はこの世に近い妖怪だから食事はできるけど、生物の食べる食事は食べなくても大丈夫。主食は魂だしね。そっちも特に頻繁に食べる必要もない妖怪はとても省エネなのだ。いや、これも妖怪によるけど。元気に動き回ったり食事が好きな子はよく食べる。
というわけで僕は食事をしないので、お母さんに頼んで先にお風呂を頂かせてもらった。
別にお風呂も入る必要ないけど、僕の美しさを保つためにお風呂か水浴びは基本毎日行っている。気持ち的な問題だ。
妖怪はわざわざ手入れしなくても力と想像力が強ければ強いだけ毛並みのサラサラ感を実現できる。そういうのを求めていないから固い毛の子も多いけど、僕は自分の毛並みに全力を注いでいる。だから、その努力のおかげで僕の毛並みはまるで絹のような触り心地だよ。触りたいでしょ。
触らせてあげるのは残念ですが無理だから、がんばって想像力を働かせてくれ。それかチンチラでも触るといいよ。そんな感じだから。
りっちゃんの家のお風呂は四角い檜風呂だった。二人くらいはゆうに入れる大きなお風呂だ。子狐姿の僕なら五匹は余裕で入れるね。
湯船のお湯に片足を入れてみる。うん、ちょうどいい湯加減。熱いや温い場合は蛇口を捻って水やお湯を入れるみたいだけど、その必要はなさそうだ。
「コココンココ、ンココ♪」
僕は狐の間で流行っていた鼻歌を歌いながら檜のいい匂いのお風呂を満喫した。
そしてお風呂に入りながら、一人になってみて改めて考えた。
予定とだいぶズレたなと。
本当は僕を昔殺したことに対する誠意を見せてよと遥香の家に押し入って、ごろごろと過ごすという完璧な予定だったのに。
まさか同級生が悪霊払いでその家に来ることになるなんて。しかも男の子。
そういえば、まだこたつ入ってない。居間にはなかったけど。三人はテーブルで食事を取っていたからこたつはどこにあるんだろう。
まさか、本当はこたつがないとかじゃないよね。りっちゃんに騙されたわけじゃないよね。そうだったら契約違反だ。訴えてやる。
つらつらと結構どうでもいいことを考えて、しばらくしてから僕はお風呂から上がった。
お風呂場から脱衣場に出ると、物音で気がついていたけどそこにはパンツ一丁、略してパンいちのりっちゃんがいた。細身の体は程よく筋肉が付いていた。やっぱり鍛えているらしい。
りっちゃんは僕がドアを開けると不機嫌そうな顔をして。
そして、すぐにまだお風呂に入っていないのに顔を真っ赤にして、廊下へ出る扉までズザザザッと後ずさった。その間、三秒に満たないだろう。
りっちゃんは顔を横に向けて僕から目を反らしながら口を開く。
「お、おまっ、はあ!?」
「ちょっと。この美しい僕を見てまるでお化けを見たような反応をするなんて酷い。まあ、近いっちゃ近いけどね」
「おま、え、モフフなのか」
「当たり前じゃん」
さっきまでとほとんど変わってないじゃん。
ただ人型になっただけだし。りっちゃんくらいの年齢の。
あっ。察した。
「あっ、そうか。お風呂に入るのに楽だから人間の姿に変化してたんだった。どうこの真珠のように美しい髪、そしてこの曲線美!人型モードの僕も可愛いでしょ」
「おっ、おまっ、おまえ」
「ん?」
「女だったのか!!!!?」
りっちゃんがうるさかったので僕は耳をふさいだ。
確かに今の僕は胸に膨らみがあるし、あれは付いてない。立派な女子だ。
しかも狐の時と変わらず背中まである純白の髪、青色の瞳の美少女のな!
ちなみに美少女なのはそういう風にしたわけじゃなくて僕自身の容姿だよ。一番楽な人間への変化が美少女だなんだよ。
まあ、狐の妖怪は容姿がいいのは珍しくないけどね。
「僕は雌だけど。えっ、何?僕のこと雄だと思ってたの。そんなに僕って格好良かった?これは、新しい僕の改革が必要?クールで格好良くして可愛がられるのもいけるのか。りっちゃんは可愛いのと格好いいのどっちがいい?優しい僕はりっちゃんの好みに合わせてやんよ」
「とにかく服を着ろ!」
りっちゃんは僕の質問に答えてくれずに服を着ろと言う。
別に今だって気を使って大事なところは妖術で湯気がかかったような感じにして視えなくしているのに。解せない。
僕は仕方がないので子狐の姿になり、りっちゃんを見上げた。
「ねえ、りっちゃん」
「…なんだよ」
りっちゃんは子狐に戻ったのに横を向いたままでムスっとした顔をして僕に目を合わせない。もう顔には赤さが…結構残っている。
僕はそんなりっちゃんへと口を開いた。
「お風呂入って毛が濡れたからドライヤーして」
「もう出てけ!」
僕は脱衣所から叩き出された。
ドライヤーは居間にいた優しい優しい雪門にかけてもらいました。