鬼ぼんじゅーる編17
遥香と別れてからりっちゃんに誘われ一緒に薔薇園の入り口の売店へと向かった。
そして着いてからベンチに座り園内で売っていた薔薇のソフトクリームを一緒に食べた。
僕が赤薔薇味でりっちゃんが白薔薇味だ。りっちゃんが奢ってくれた。
僕は別に人のお金を持ってるから自分のお金で買うよと言ったけど、俺が払うと強引めに売店の女性にお金を渡したのだ。なんか店員さんには微笑ましく見られた。
僕の赤薔薇味は薔薇の香りがして酸味がありジェラートに近く、りっちゃんとの白薔薇味は薔薇の香りは同じだけどクリーミーでマイルドな味らしい。
薔薇味って言うからどんな味かと思ったけど、良い匂いでとても美味しい。
「りっちゃん、美味しいよ。ありがとう!」
「別に、それなら良かった」
りっちゃんは自分のものを食べながら恥ずかしいのか少し顔を染め無愛想に言った。
「ねえ、りっちゃんはよくここのソフトクリーム買うの」
「最近は食べてなかったけど。昔はよく食べてたから」
「思い出の味ってこと?」
「そうだな。昔、家が近かったから遥香とも来たんだ」
「遥香と?」
二人で遊んだのか?
小さい遥香とりっちゃんが薔薇園で遊んでるの絶対可愛いね。
いいな幼なじみ。
「もちろん親と兄さんたちもいたけど。それでみんなでこのソフトクリームを買ってもらって食べたんだ。そしたら子供……まあ俺たちも子供だったけどそれより幼い子が遥香にぶつかって遥香のアイスが落ちたことがあった」
僕の頭に小さなりっちゃんと遥香が困ったように驚いたように落ちたアイスを見ているのが浮かんだ。
「子供はすぐに逃げて行ったけど。俺もそれをどうしていいか分からなくて。ソフトクリームはもう口を付けていたし。そしたら春門兄さんがすぐに来て遥香の頭を撫でて自分のソフトクリームをあげたんだ。『同じ味だから』って赤薔薇味を差し出して。それで結局俺たち兄弟三人で二つのソフトクリームを食べたよ」
「なんか良い話だね」
「ああ。あの時は俺も兄さんのようになりたいと思った」
りっちゃんは少し笑って言う。りっちゃんにとっても温かい記憶なのだろう。
いいなあ。と僕は漠然と思った。
「モフフは何かないのか。昔の話とか」
「僕?僕はうーん」
りっちゃんに尋ねられ、僕は辺りを見渡して、入り口のすぐ外にクレープの出店が出ているのを見た。前に祭りでチーと一緒にクレープ食べたの美味しかったな。
そういえば。
「昔師匠のところから出た後にこの世の山の中で妖怪になったばかりの不安定な子供の面倒を見ていたんだけど。すごくその子が反抗的でね、人に危害を加える可能性があったからあまり外には出してあげられなかったんだけど」
僕は昔を思い出しながら話す。その子は雛菊以上に赤毛のあと一歩で骸骨なのではと思うくらい細い男の子だった。
「ある日山の麓で祭りをやっている音がしたんだ。だからせっかくだし、その子を連れ出して祭りに行くことにしたんだよ。何があっても良いように僕は大人の男に変化して、子供の手を繋いで」
僕は最近は姿を見せる能力を失っていたけど、あの時はできたからね。子供はさすがにまだできなかったけど、欲しいものは僕が買えば問題は無かった。
「やっぱり子供だったから興味深々だったよ。そんな大きな祭りのない田舎出身だったし。だから好きなもの買ってあげるって言ったの。も、もちろんちゃんと人間のお金を出してだよ。葉っぱじゃないからね。僕ちゃんとお金持ちだったし」
「そんなに慌てて言うと逆に怪しいだろ。信じてやるけど」
「うん!ありがとう。けど目を輝かせているくせに何も欲しいものを言わなくて、でもお面屋さんで足が止まったんだ」
赤い提灯の下でひょっとこやお多福顔のお面が並ぶお祭りらしいお面屋だった。
「そしたら子供が僕を見上げて、あれが欲しいって狐の面を指差したんだ。僕は子供が喜びそうな別のじゃなくて良いのかなと思ったけど、買って子供に手渡したら受け取りながらはじめて笑ってくれたんだよ。それからはそのお面を大事にしながら僕に懐いてくれて可愛かったなあ」
ずっと警戒していた子が懐いてくれるのは可愛いものだ。
「今はその子はいないのか?」
「うん。妖怪の種族が違う子だったから同種の人に預けてからずっと会ってない。もう消えている可能性もあるけど、どちらにしても元気でやっていると思っているよ」
音沙汰がないのは元気な証だと思う。そう信じている。
「会いにはいかないのか?」
「いずれね」
「いずれ?」
「うん、そのうち会いにいくよ」
僕は突っ込んで聞いてくるりっちゃんに内心驚きながらも、話を少し受け流しながら答える。
こればかりは僕も時間を置きたいのだ。
おそらくりっちゃんは僕が言いづらそうにしていることに気が付いているだろう。
話を終わらせてくれた。
「お前もいろいろな思い出があるんだな」
「当たり前だよ。りっちゃんよりもずっと長く生きているんだから」
「そうだな。モフフは年下みたいだから忘れるけど」
「うん、僕は妹みたいに可愛いから仕方ないね」
僕はりっちゃんの言葉に頷くと、りっちゃんは少し笑って溶けかけたソフトクリームへ口を付けた。
なので僕もかじりついた。酸っぱくて甘くて美味しい。




