表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/64

鬼ぼんじゅーる編16

 そしてやってきました薔薇園に。

 前はチーと走って来たけど今日は電車でりっちゃんと来たよ。


 薔薇園はちょうど見頃で休日なので女性やカップルで花祭りの時ほどではないけど混雑している。

 でも、それでもピンクと白のツルバラで薔薇園の入り口の壁が覆われていてそれを見ただけで心踊った。


 僕は入り口に来て、ちょっと待っていてとりっちゃんに言ってそばを離れた。

 そして木の陰へと行き、誰も見ていない隙にりっちゃんと同い年の少女になる。

 今日は巫女服ではなくちゃんと現代に合わせて白と水色のワンピース姿だ。


 くるりと回って自分の姿を確認してから僕はりっちゃんの元へと戻ると、りっちゃんはすでに同い年くらいの女の子2人にナンパされていた。逆ナンだ。早い。

 まあ、りっちゃんは格好良いしね。知ってたけど。でも僕と遊ぶ時にそれはジェラシーだよ。まったく目を離せない。

 僕は女の子と話しているりっちゃんの背中目掛けて飛びつこうかと思ったけど。そういえば大人しくするという約束だったとギリギリ思い出して、止めた。僕えらい。

 なので静かにりっちゃんに近づき、りっちゃんのシャツの袖をクイクイと引っ張った。


「りっちゃん、りっちゃん。お友達?」

「!?モ…、お前。いや、違う。少し話していただけだ。さっき話した連れが来たから失礼するよ」


 りっちゃんは僕の名前を呼びかけて、途中で止めて女の子たちに断りを入れてから僕の手を引き薔薇園へと足を向けた。

 僕はそれに大人しく付いて行く。


 薔薇園に入ると赤、紫、黄色、ピンクと色とりどりの種類もたくさんある薔薇が咲き誇っていて僕はウキウキした。すごく綺麗だ。薔薇の上品な良い香りもする。


「そうじゃないかと思ったけど人の姿になったんだな」


 薔薇に挟まれた道を歩きながらりっちゃんが小声で僕に話しかけてきたから、僕は薔薇へ向けていた視線をりっちゃんへ移す。


「うん、女の子になったよ。りっちゃんとちゃんとデートしたかったからね!」

「デートじゃない」


 りっちゃんはしっかりと否定した。


「えー、まあいいや。でも女と男、どっちに変化しようか迷った。女の子だとりっちゃんと噂になっちゃうかもだし迷惑かなって。でも薔薇園に男二人で来るのもそれはそれでどうかと思ったから僕女の子にしたよ」

「別に俺は性別はどっちでもいい。お前の好きなようにすればいいよ」

「うん、ありがとう。りっちゃん」


 お礼を言うとりっちゃんは少し照れた様子で視線を横に移した。


「薔薇すごいね。きれい」

「ああ、そうだな」


 僕たちはゆっくりと薔薇を見ながら歩く。


「あのピンクの“芸者”って薔薇かわいい。芸者って言うだけあって日本の薔薇なのかな。大人しい感じで山茶花に似ているね」

「ああ、日本のが見たいなら少し行ったところに日本の薔薇を集めたところがあるけどそこを目指すか」

「わあ、うん行く。りっちゃんは薔薇園詳しいの?」

「昔はよく母さんに連れられて来たからそれなりだよ。とはいってもうちは男兄弟だからほとんど噴水とか遊具で遊んでたけどな」


 確かに薔薇園の真ん中には噴水があって、そこから浅い水の通り道があるから今は子供たちが裸足になって水に入り遊んでいる。

 僕も狐の姿なら遊びたいけど、人の姿だから自重する。


「あのさ、モフフ。お前の名前を呼ぶの呼びづらいんだけど。モフフって呼んで良いのか?」

「へ?」

「なんていうか……ペットを呼ぶみたいで今は人の姿だから普通ではないだろ。どうしてもって言うなら俺は別にいいけど」


 確かに人間でモフフって名前は違和感ありすぎるか。だからさっき名前を呼ぶのを止めたんだね。

 可愛い名前なのにね。



「それならりっちゃんの好きに呼んでいいよ」

「好きに……」

「うん、りっちゃんが付けてくれるならなんでも良い」


 まあ変な名前なら困るけど、りっちゃんなら変な名前は付けないだろう。

 りっちゃんは困った顔をして、少し悩んでから「なら……」と口を開いた。


さくらで良いか」

さくら、良い名前だね!うん、好きにそう呼んで。僕ちゃんと返事するから。ふふっ、りっちゃんに名前を貰って僕嬉しいよ」

「人が周りにいる時だけそう呼ぶ」


 りっちゃんは顔を赤く染めながらも言った。

 りっちゃんは名前付けるの上手だね。可愛い名前だ。それに初めて人から名前を貰ったから嬉しいよ。

 僕は嬉しくてにやけながらりっちゃんと一緒に道を進んだ。



「あれ、りっちゃん?」

「あっ、遥香はるか!」


 りっちゃんと歩いているとりっちゃんの名前を前方から呼ばれた。

 見るとそれは私服姿の遥香はるかだった。

 だから僕は笑顔で遥香はるかに駆け寄りながらりっちゃんより先に名前を呼ぶと遥香はるかは驚いた様子で目を見開いた。



「えっ、もしかしてモフフ?」

「そうだよ遥香はるか。会えて嬉しい!遥香はるかは一人なの?」

「うん、ピアノの楽譜を買いにきたついでに薔薇を見にきたんだけど。モフフと会えると思わなかった。人の姿でも可愛いね」

「ありがとう、遥香はるかも可愛いよ!私服姿可愛い!けどピアノって遥香はるかってピアノ弾くの?」

「うん。少しだけ、ね」

「わあ、すごく聞きに行きたい」

「それは、恥ずかしいな」


 遥香はるかってピアノ弾けるんだ。ピアノ弾けるってすごいね。ピアノ弾く遥香はるかとか想像するとすごく似合ってる。

 遥香はるかと話すのは女の子同士で話が弾む。けど、りっちゃんもいるから後ろで静かなりっちゃんに振り返るとりっちゃんは目が合った僕に気まずそうな表情をしてから僕の隣に並んだ。


遥香はるかはもう薔薇を見てまわったのか?」

「うん。もう帰ろうかなと思って。これから楽器屋さんにも行かなくちゃだし」

「そうなの!?せっかくなら遥香はるかとも見てまわりたかったな」


 僕がそう残念で言うと、遥香はるかは小さく笑った。


「うん、ごめんね。でも私もモフフと一緒に出かけてみたいから、次は一緒にどこか行こうか?」

「え?良いの」

「うん。モフフが良ければ」

「わあ、もちろんだよ。遥香はるかと遊べるの嬉しい」


 もし今僕が狐の姿なら尻尾をぶんぶん振っていただろう。嬉しくてそう言えば、遥香はるかも照れたように笑ってくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ