鬼ぼんじゅーる編9
それはみんなが寝静まっている真夜中のことだった。
何やら部屋の外の廊下から小さな音が聞こえてきて、僕は目を覚ました。
僕はこっそりとりっちゃんの眠る布団から抜け出し静かに扉を開けて部屋から出ると、物音から推測した通り春門が寝間着から着替えたシャツとスラックス姿で上着を持ち外へと向かって廊下を歩いていたので僕は気配を消してその背を追いかけた。
「春門お兄さん」
「モフフくんか」
ここでなら寝ている家族に聞こえないと思い玄関で靴を履いている時に春門へ声をかけると、春門は僕に気がつき驚いたように振り返った。
昨日はピシッと来ていたシャツが今は胸元が開いている。急いでいるのだろうか。
「どこか出かけるの?」
「ああ、仕事が入ったからな。少し出てくる」
「仕事?こんな時間に」
「近くの山で人が行方不明になったらしい。夜だがそこは少し危険な場所だから救助隊が入る時間外のうちに見つけに行く必要がある」
こんな真夜中に仕事があるなんて悪霊払いの人は大変だね。しかも大抵夜中なんて異形も活発なのに。
僕は人間と同じ時間帯に動くけど、異形は夜行性?が多いから。
危険な場所ならまあ早めに見つけた方が良いんだろうけど。
「それ僕も行っても良い?」
「構わない」
春門お兄さんはあっさりと付いて行くことを了承してくれたので、僕はお言葉に甘えて付いて行くことにした。
「行方不明が出た場所は霧崎山で、今夜肝試しに行った高校生の若者男女4人が帰って来なかったため通報があったらしい」
「肝試しとか、それは危険だね」
僕は春門の運転する車の助手席に座りながら、仕事の内容を聞いた。
肝試しを発端にした行方不明らしい。
僕の住んでいた山にもそういうことのために迷い込む輩はいたけど、やっぱり遊びでテリトリーに入られると少し苛っとするものね。だから普通でも山なんて危険なのに肝試しは異形に嫌われやすい。
「しかも霧崎山って、鬼の縄張りじゃん」
「知っているのか」
「まあ少しくらいは。80年前と変わっていないなら鬼が治めているはずだけど、今は誰だろう」
「……鬼か。厄介だな」
「まだ元が人な分話が通じる可能性は高いけどね」
鬼とは強い感情を持って死んだ人間が成る者が多いから元は人間が多い。
だからこそ意志疎通ができる者が他の異形と比べて多いけど、強い感情を持って死んだということだから人に恨みを持っている者も少なくない。
感情のままに行方不明者を殺していないだろうか。
僕は車の外を見た。
車は山に挟まれた高速道路を走っており山へ向かう道なのでこの時間はほとんど車が通っていない。
僕でさえ怖くなるくらい外灯で照らされている高速道路の外側は闇が深い。
「よくこういう仕事はあるの?」
「私は人捜しは月に一度くらいだ。悪霊払いは人が少ない。だから危険な可能性が高い場所にしか派遣されないから全部の遭難に出動するわけではないんだ」
「それでも月に一度なんだね」
「まあ迷惑な話だな。せっかく実家に帰っていたのに仕事だなんて」
春門はそう言い息を吐いた。
悪霊払いって大変だ。




