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鬼ぼんじゅーる編4

 僕とりっちゃんは一緒に仲良く学校に登校した。

 僕にとったら1ヶ月ぶりの学校だ。相変わらず眼鏡が多い。それもそうか、帰ってきたらみんながいきなりコンタクトになったとかなんて有り得ないものね。


「りっちゃん、僕友達に会いたいから行ってきてもいい?」


 校門に入ってからりっちゃんの前に回って尋ねると、りっちゃんは少しだけ迷ったようにしてから黙って小さく頷いた。動作が小さいのは周りには人がいるから変に思われないようにだ。

 許可をもらったので僕はりっちゃんに「また後でね!」と言ってからまずは部室棟へと向かった。



 部室棟へ行くと、僕は懐かしい灰色の毛玉、チーと無事再会できた。

 部室棟へまず行ったのは勘ではなく前にチーがよくいる場所を聞いておいたのだ。一々探すの大変だしね。

 部室棟は決まった時間にしか人が来ないし、人がいない時は鍵がかけられているため比較的安心できる場所らしい。

 チーは部室棟の中でも運動部が筋肉トレーニングをする器具が揃った共用のジムのような部屋にいた。


 チーは僕が現れると、一度はクリクリの黒い目を見開き、首を傾げたものの。すぐに耳と尻尾をピンと立ててからチョロチョロと僕の方へ近寄ってきた。


「モフフ様!お久しぶりです」

「うん。チー、君。今僕のこと忘れていたでしょう」

「はいっ!でもチーはきちんと思い出しました」

「……そうだね、まったく思い出せないことも想定していたから思い出しただけマシだけど。うん。偉い偉い」


 僕がチーを褒めて前足で撫でてあげるとチーは嬉しそうに「えへへ、ありがとうございます、モフフ様」と言った。どちらかと言うと僕は撫でられる専門だけど、チーに対しては撫でる側になってしまうな。なかなかこの鼠やりおる。僕もこんな風に撫でてもらえるよう見習わなわないと。

 再会してからりっちゃんは僕に少し優しくなったけど、撫で撫でモフモフはなかなかしてくれないし。

 ……チーならりっちゃんに撫でさせることができるのかな。チーに撫で撫でするりっちゃんを想像してみたらジェラシーだった。そんなの普通に嫉妬しっとしてしまう。


 僕がチーに会いに来たのはチーの無事を確認することも大きいけど、それ以外にもチーに僕は聞きたいことがあったからだった。


「ねぇ、チー。チーは前に呼ばれて峰早神社に行こうとしていたよね。それについて覚えている限りで細かく教えて欲しいんだけど」

「峰早神社…ですか?」


 チーはまたしても首を傾げる。トボケているのではなく、僕のことのように本当に忘れているのだろう。

 少し間を開けて、チーはぽんっと手のひらを拳で打った。


「思い出しましたっ。はい、チーは神社に行こうとしていました」

「それはなんで?」

「近くに住む鼠は集まるよう召集がかけられたからです」


 そこまでは前にも聞いた話だ。


「それは誰から集まるように言われたの」

「誰から、ですか?」


 チーは記憶を探るように上空を見た。


「えっと、たくさんの鼠からです。みんなで鼠を呼ぶ“声”が聞こえました。ですので、チーは神社へ向かいました」

「“みんな”で?」


 妖怪は身の危険や何かを成そうとするとき同種の仲間を呼ぶことがある。

 神社への襲撃は複数の鼠、それが一斉に集合をかけて仕組んだものなのか?

 それとも、そう見せかけて単体を隠すためか。

 複数の鼠の集合体であった旧鼠は実は本物の旧鼠とかの強い力を持つ鼠が実は呼んでいて、そういうのを隠すための偽装であったという可能性もあるけど。


「なんで神社を襲うことになったか理由は知ってる?」

「いえ、チーはただの弱い鼠ですから。知りません。命令が来たので従っただけです」

「じゃあ、チーはなにか気になったこととか。それについて他に知っていることはある?」

「ええと。…いえ。ありません」

「そっか」


 結局チーから聞いて分かったのは命令は複数の鼠から来たということだけだった。

 ただ意味もなくりっちゃんの家が狙われたのならいいけど。そうじゃないのなら、また狙われる心配があるし。


「モフフ様」

「なに?」

「モフフ様はあの神社のことを気にしているみたいですけど。どうしてですか」


 チーはコテンと首を傾げた。ここまで聞けばさすがに気が付くか。

 チーに話していいのか少し迷ったけど、僕は話すことにした。話さない理由はないだろう、できれば信用したい。


「僕は今その峰早神社の人間の家にお世話になっているんだよ」

「……チーが襲いに行こうとしていた場所ですか」

「うん」

「そうでしたか」


 チーは複雑そうだ。


「ならチーは迷子になって良かったです。だってモフフ様は、チーがもしその人間を殺していたらチーのこと嫌いになりましたよね」

「それは…」


 りっちゃんが害されていたらチーを嫌いになるのだろうか。

 でも、もしりっちゃんが死んでいたらすごく悲しかったと思う。

 すぐに返事を返せなかった時点で、それが申し訳ない。


「きっとチーのことは怒ったと思うけど。チーは何も知らなかったわけだし、チーがそうしようと思ったからじゃないなら嫌いになりきれないかもな。僕はチーのこと好きだし」

「モフフ様。チーもモフフ様が大好きです。ですのでチーは次から峰早神社を襲うよう命令が来ても襲うお手伝いはしません」

「えっ。ありがとう、チー。でも大丈夫なの?命令を聞かなくて」


 かなりの範囲で自由に生きている妖怪だけど、上下関係を無視して何か悪いことにならないか心配してチーに尋ねると、チーは首を横に振った。


「大丈夫です。鼠の世界ではみんな何も考えずに従ってしまいますが、だからこそ応じるかは好きにしても平気です。そもそも前もチーみたいに場所が分からなくてたどり着けなかった鼠は少なくないですから」



 ……それは、鼠って大変だね。

 でもチーの言葉は有り難い。僕もできればチーと戦いたくはないからね。


「チーがそう言ってくれてすごく嬉しいよ。それにさ、今回はチーのおかげで大切な人を守ることができたんだ。君のおかげで間に合うことができた。ありがとう、チー」

「そう、でしたか。チーもモフフ様のお役に立てて嬉しいです」



 チーは言葉の通りに嬉しそうに小さい前足で頬を押さえて笑って言う。

 チーに会えて良かったと僕は本当に思った。

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